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【J2:第38節 札幌 vs 熊本】レポート:この試合で赤黒のユニフォームを脱ぐ砂川と、来季のトップ昇格が内定している三上の活躍で札幌が快勝。ベテランから若者へ、バトンはしっかりと受け継がれた(10.12.05)

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12月4日(土) 2010 J2リーグ戦 第38節
札幌 4 - 0 熊本 (12:34/札幌ド/14,299人)
得点者:31' 三上陽輔(札幌)、64' 砂川誠(札幌)、75' 西嶋弘之(札幌)、86' 三上陽輔(札幌)
スカパー!再放送 Ch183 12/6(月)深02:00〜
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「前半立ち上がりはちょっと押し込まれた」と札幌の石崎信弘監督が振り返ったように、開始からしばらくはアウェイの熊本が勢いを見せた。原田拓、渡辺匠の守備的MFが左右にパスを動かし、時には大きく逆サイドへと振る。そうして札幌の守備陣に揺さぶりをかけ、その守備ラインにギャップが生まれたところを見計らって前線のカレン・ロバートが抜群のタイミングで裏へと飛び出す。5分にはその飛び出しと、中盤からのフィードを絡めてさっそくチャンスを作り出した。そうしてカレンの動き出しを相手に意識させると、今度はそれをおとりにして松橋章太が持ち込んだり、西弘則が縦に入り込んだりした。

そうした展開にはなっていたが、この日の札幌は地元の大きな声援も後押しとなり、自分たちの力でリズムを奪い返す。1トップには2種登録の三上陽輔が起用されていたのだが、この三上が前線で体を張ってターゲット役で奮闘。左右に幅広く動いてボールを受け、そこで生まれた前線のスペースを使って高木から砂川へ斜めのパスが入り、その直後にも再び高木がフェイクを入れて相手のタイミングをズラした縦へのスルーパスを三上に通してという形でチャンスを演出してみせた。ここからは札幌のゲームとして推移していく。

全体を見ていくと、プレースタイルとしてはどちらも高い位置からプレスを仕掛けて、奪ったボールをシンプルに動かしていくというもの。ただし、この日のボールの動かし方を見ると、札幌が縦にパスを当てるのに対し、熊本のそれは左右に回す形。札幌は仮にその縦パスがミスになってしまったとしても、出し手はボールよりも後ろにいるわけだからすぐに守備のアプローチができる。だが、横パスはインターセプトされてしまうと出し手と受け手の2人が置き去りにされてしまう。「ハーフカウンター気味のなかで、ボールホルダーを抑えることができなかった」と熊本の高木琢也監督も振り返る。

さて、肝心のスコアの動きだが、31分に石崎監督が「素晴らしいコンビネーションからのゴール」と称賛した三上のゴールで札幌が先制すると、64分には今季でクラブを離れる砂川誠が直接FKを決めて加点。この時点でほぼ勝負が決したと言っていい。

熊本は後半から「彼の攻撃の部分に期待した」(高木監督)と右サイドバックの位置に市村篤司を投入していたが、札幌の左MF砂川が高い位置に居残る場面が多かったため、なかなか高い位置に出ていくことができないでいた。しかし、2点差とされてからは前に出ていくしかなく、積極的に高いポジションを取ろうとしたのだが、そのことが逆に居残った砂川を自由にしてしまった感は否めない。西嶋弘之が蹴りこんだ豪快な3点目も、最初は砂川が左サイドで起点になったものだ。
そして86分、右サイドから作られたチャンスを最後は再び三上が蹴りこんで4−0。最終戦での快勝に、札幌ドームは大いに沸いた。

この試合、印象的だったのはやはり砂川のプレーだ。持ち前の安定した技術を生かしてのチャンスメイクは見事だったし、自ら沈めた直接FKも素晴らしかった。それ以外でも相手の嫌がるスペースに素早くパスを蹴りこんだりと、気持ちが入っていたことも影響したのだろうが、抜群のパフォーマンスでサポーターに歓喜を呼び込んでみせたのである。そして、8年に渡って札幌を支えてきたベテラン選手とのラストゲームで、その選手のアシストなどから高校3年生の三上が2得点を挙げたこともまた印象的だ。チームリーダーのラストゲームで、若き本格派ストライカーがその存在感を一気に強める。バトンがガッチリと手渡された。そんな試合に感じてしまった。

敗れた熊本だが、4失点を喫したものの、その理由はビハインドを追って前がかりになったから。立ち上がりの時間帯に得たチャンスを生かすことができていれば、展開もまったく違っていたはずだ。そして内容に目を向けても、高い位置からプレスを仕掛けて横幅を広く使ってボールを動かすモダンなスタイルがある程度の形となっていた。2トップとの関係も良く、よく鍛えられたチームと評していいだろう。つなぎの段階でのミスを減らすことができれば、さらに上位も目指せるのではないだろうか。

最終節を終えての順位は札幌が13位で熊本が7位。順位こそ離れているものの、この日の内容を見る限りでは両チームの力には大きな差はない。やはり、それだけ戦力の拮抗したリーグだということなのだろう。そしてどちらも3位以内に入ることができなかったため、当然、来季もJ2で激突することになる。果たして、次回の対戦ではどういった攻防が見られるのか。様々な楽しみを胸に、シーズンは幕を閉じていく。

以上


2010.12.05 Reported by 斉藤宏則
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