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【J1:第34節 名古屋 vs 広島】レポート:内容では互角の戦いで結果を分けたのは、王者・名古屋の“試合の決定力”。今季の戦いを象徴する戦いぶりで広島を破り、栄えあるシーズンを勝利で締めくくった。(10.12.05)

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12月4日(土) 2010 J1リーグ戦 第34節
名古屋 2 - 1 広島 (15:34/豊田ス/31,941人)
得点者:22' ケネディ(名古屋)、32' マギヌン(名古屋)、45'+2 李忠成(広島)
スカパー!再放送 Ch183 12/5(日)後06:30〜
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優勝チームは決まってしまっても、無駄な戦い、いわゆる消化試合などひとつもない。2010年のJ1リーグ戦最終節、名古屋と広島の対戦は、そういったことを感じさせるゲームとなった。3試合を残して優勝を決めた前者に対し、目標のAFCチャンピオンズリーグの出場権を逃した後者。ともに今季における大きなテーマは達成、あるいは逸してしまったにもかかわらず、試合は実に魅力あふれるものになったからだ。

名古屋のモチベーションを支えていたのは、やはり有終の美を飾りたいという気持ちだった。特に、優勝を決めて帰ってきたホームでの32節で負けてしまったことで、本拠地のサポーターに勝者としての姿を見せられる機会はここしかない。すでにチームを去ることが決まっている選手も出てきており、彼らを勝利で送り出すためにも負けられない。さらにはケネディが得点王争いをしていることもあり、この日の名古屋の狙いはケネディに得点をさせた上での勝利。この一点に意識は統一されていた。

一方で、広島の意欲の源は、自分たちの力を証明したいという純粋な思いだった。ペトロヴィッチ監督が足の治療のために前節終了後に帰国。最終戦を指揮官不在の中で戦わなければいけなくなったことで、逆に広島のモチベーションは高揚した。監督代行を務める横内昭展コーチも「この1週間、スタッフ全員で監督の代わりをしてきました。今季のチャンピオンチームに自分たちのやってきたことを出そうと」と高い意識を持って名古屋に乗り込んできたことを試合後に明かしている。広島もまた、この一戦へかける思いは非常に強かったのだ。

もともと攻撃的な両チームの対戦だけに、成績への影響を度外視できる今回は、攻撃に重きを置いたオープンな展開となった。0−1のロースコアで終えた広島ビッグアーチでの前回対戦とは対照的に、序盤から激しいせめぎ合いがピッチ上で展開されていく。まず先手を取ったのはホームの名古屋。開始2分、クロスで競り合ったケネディがこぼれ球を粘って拾い、ゴール前に折り返すと玉田圭司が詰めたが一歩届かず。いきなり際どい場面をつくると、12分には今季限りでチームを離れることが決まっているマギヌンの強烈なシュートがポストを叩く。広島も李忠成や高萩洋次郎のミドルシュートで反撃を試みたが、決定機とはならなかった。

試合が動いたのは22分のこと。玉田をトップ下に置く4−2−3−1でスタートしていた名古屋だったが、バイタルエリアの守備に思うような効果が挙げられなかったのか、慣れ親しんだ4−3−3へと布陣を変更。その直後のプレーで先制点が生まれた。田中マルクス闘莉王がハーフラインからペナルティエリア右横まで届く素晴らしいフィードを送ると、小川佳純もまた正確なトラップで足元に収める。ワンフェイントでDFの裏を取ると、左足で絶妙のクロスをゴール前に送った。待っていたのはケネディ。DFの頭を越えて届いたボールにフリーで頭を振り抜き、得点王の座を引き寄せる今季17点目を叩きこんだ。3人のプレー精度の高さが生んだシンプルな攻撃は、広島のエース佐藤寿人をして「何もないところから点が取れるのが名古屋の強さ」と言わしめた。

その後広島は、29分、30分と続けて高萩が決定機を迎えたが、ミドルシュートは枠を捉えず、フリーで裏に抜け出した場面は名古屋の守護神・楢崎正剛に抑えられた。すると、またも名古屋が広島の隙を突いて追加点を決める。敵陣右サイドで小川がボールの取り合いを制すると、中央の玉田へ素早くつなぐ。ポジションのバランスが崩れていた広島DFの対応が遅れるのを尻目に、玉田が左へスルーパス。走り込み、フリーのシュートを豪快に突き刺したのはマギヌンだった。チームとサポーターへ捧げる惜別のゴールを、名古屋はGK楢崎も含めた全員で祝福。背番号8のブラジル人が、いかに愛されるプレーヤーであったかを物語る、素晴らしい場面だった。

名古屋らしいシンプルな攻撃から2失点を喰らった広島だが、好調を維持するストライカーが一矢を報いた。前半アディショナルタイム、バイタルエリアでパスを受けた李がドリブル突破を開始。チェックに来た闘莉王をかわし、立ちはだかる増川隆洋をシザースで揺さぶると、利き足ではない右足をコンパクトに振り抜き右隅に流し込んでみせた。本人が努力の成果と振り返ったドリブルシュートはスタメン定着後の12試合で11得点目という爆発ぶり。覚醒した感のある北京オリンピック世代の点取り屋の活躍で、試合の行方はわからなくなった。

しかし後半は、おおむね名古屋がコントロールする展開となった。ストイコビッチ監督に「ボールをキープしてサイドを使おう」と指示されたチームは、作戦を忠実に遂行。高いポゼッション能力で広島のプレッシングをいなし、セーフティーに次なる決定機をうかがった。20分には直前に決定機を外した玉田に代えて杉本恵太を投入。彼もまた今季限りでチームを離れる人気選手のひとりで、優勝を決めるアシストを決めた男だ。続く28分には阿部翔平と金崎夢生を同時にピッチへ。金崎は27節の神戸戦以来、1か月半ぶりの復帰戦となった。今季の功労者たちを次々とサポーターにお披露目していくような指揮官の起用法には選手も奮起。特に杉本はサポーターの大声援を背に何度も鋭い突破とクロスを見せ、ケネディの決定機を数度つくり出してみせた。

前半以上の打ち合いとなった後半だったが、どちらのチームにも追加点は生まれず、そのまま試合は終了。名古屋が王者としてのホーム1勝目を挙げ、栄えあるシーズンを勝利で締めくくった。名古屋はこれで1シーズン制における年間最多となる23勝目、勝点でも最多タイの72をマーク。ケネディも磐田の前田遼一に並ばれたが得点王に輝き、3試合残しての最速優勝記録とともに、記録づくめでシーズンを終えることになった。この数字だけを見ても、今季の名古屋がどれだけ強いチームであったかが伺い知れるというもの。その強さを生み出していたのは、この日にも見せた決定力の高さだった。チャンスをものにする力、そして試合をものにするという意味での“決定力”は、今季の名古屋は図抜けていた。「差は感じなかった。でもああいう試合でも結果を出しちゃうのがチャンピオン」という、広島の高萩の言葉はまさしくそのことを表すものである。

名古屋は天皇杯準々決勝を残しているものの、これでシーズンは一区切り。初の優勝を果たしたシーズンを勝利で終え、得点王を生み出し、チームを去る選手が大活躍を見せた。試合後のセレモニーも大盛況のうちに終えたチャンピオンの終幕は、実に美しいものとなった。

以上

2010.12.05 Reported by 今井雄一朗
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