11月28日（日） 2010 J2リーグ戦 第37節
横浜FC 0 - 1 草津　（16:33／ニッパ球／6,677人）
得点者：88' 高田保則（草津）
スカパー！再放送 Ch185 11/29（月）深00:00〜
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統率の取れたディフェンスライン、中盤での執拗なプレッシング、そしてセカンドボールへのアプローチ。似たような守備の考え方を取る横浜FCと草津の対戦は、試合前に横浜FC・岸野靖之監督が「いかに草津の中盤の守備をいなすかがポイント」と語ったように、激しい中盤の攻防をどちらが制するかが大きな焦点だった。試合は、終盤になってもコンパクトな陣形が保たれるなど、お互いの守備のスタイルと運動量を見せつけ合う好ゲームとなったが、特に後半にセカンドボールへのアプローチで勝った草津が、今季でチームを去る高田保則の執念のゴールで横浜FCをねじ伏せた。

試合は立ち上がりから、草津が高い位置でのプレスを敢行。対する横浜FCもホベルト、八角剛史を中心に中盤で追い回す守備を見せ、緊迫感あふれる展開で始まる。お互いに糸口が見つからないまま、徐々に草津がセカンドボールを拾う割合が増えてくると、18分には廣山望のクロスに高田が飛び込むなど決定機を作る。一方、松下裕樹、熊林親吾のダブルボランチの壁の前に中央で起点が作れなかった横浜FCは、その両ボランチのサイドにボールを持ち出す工夫でプレスをいなすようになると、ようやく前を向いてボールを保持できるようになり、29分の高地系治のミドルシュート以降、シュートチャンスを何度も作り出す。しかし、前半放った7本のシュートは枠内を捕らえることができず。試合は0-0で折り返す。

後半に入って、草津は「中盤を助けるプレーをしていこう」という副島博志監督のハーフタイムコメントの通り、中盤の選手に加えて高田、アレックスをプレスバックに参加させるなど、サイドでのプレッシャーを強める。この対応が功を奏し、中盤でのセカンドボールは、再び草津の手に渡るようになる。「ゴールに近い位置でプレーをするように指示があったが、後半ボールがほとんど来なくなった」という寺田紳一のコメントに象徴されるように、横浜FCにとってやりたいサッカーをさせてもらえなかったと言ってよい。それでも、横浜FCは体を張りゴールを割らせない執念を見せ続けるが、勝利の女神は88分にハードワークを重ねた草津に微笑む。勝点3を求めて横浜FCが前掛かりになったところで、草津が奪ったボールが高田に入ると、左サイドバックの田中淳がオーバーラップを開始。その田中にパスが渡ると、そのままゴール前に運びシュート。そのシュートのこぼれ球が、両チームを通じて一番ストライカーらしい仕事をしていた高田の元へこぼれる。そして、高田のこの日5本目のシュートは、左ポストに当たりながらもゴールに吸い込まれる。「今はフォワードとして、若手のようにプレーできている」と語る高田に、チーム全体の思いが重なったゴールで、草津が勝ち越しに成功。4連勝を達成した。

横浜FCにとっては、前半に流れをつかんだ時間のチャンスを決められなかったことが勝点3を逃した大きな要因であるが、一方で後半に草津の守備の網を打ち破る術を発揮できなかったことも大きかった。岸野監督は「（前節の）柏戦とこの試合で個の能力の大事さを感じた。点を取る部分、こじ開ける部分で、個の力で相手を上回る部分がない。個の力をもう少し上げなければ」と記者会見で振り返った。この2試合で、横浜FCよりも強いプレッシングと完成度の高い守備を構築するチームに対して勝ちきるまでのレベルにはないことが明らかになった。クラブは、より上への脱皮を図るべく、選手の入れ替えを図る時期にある。今年昇格内定を決めた3チームには1勝もできず、好調草津に根負けしてしまうチームから、来季本当に昇格を狙うチームに飛躍するために必要なものの再整理。最終節の大分戦、そして来季に向けて、クラブには新たな「根性」が求められているのかも知れない。

勝利した草津は、副島監督が「守備から（強化に）入って、1つづつ押さえていった。1回の成功が2回の成功になり、15分の成功が30分になり、45分から60分。そういう試合を積み重ねたことで、本当に意思の統一が図られた攻守ができている」と自信を持って語ったように、選手が誰一人力を抜くことなく運動量を保ったまま90分間の守備を貫徹。横浜FCの戦い方の変化にも対応し、さらに横浜FCを終盤で突き放すなど、横浜FCを上回る「根性」を見せた。今季でチームを去ることが決まっている中で、この日のスターティングメンバーに入った高田、廣山、尾本敬がチームに加えた輝きがチームにプラスαを与えている。最高にまとまりを見せたチームが最後に目指すはチーム記録となる5連勝への挑戦。ホーム最終戦となる次節柏戦で有終の美を飾りたい。

試合を通じては、両チームの良さが発揮された試合であったことは間違いない。笑っても泣いても、今シーズンはあと1試合。後半戦に積み重ねた勝点がチームの成長の証拠であることを最終戦でも表現して、笑ってシーズンを終われることを期待したい。

以上

2010.11.29 Reported by 松尾真一郎