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【J1:第33節 広島 vs 仙台】レポート:ルーキーの劇的弾で下田崇の広島ラストゲームを勝利した広島。仙台は、最終節に残留を賭ける。(10.11.28)

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11月27日(土) 2010 J1リーグ戦 第33節
広島 1 - 0 仙台 (17:34/広島ビ/16,448人)
得点者:90'+1 大崎淳矢(広島)
スカパー!再放送 Ch185 11/29(月)前04:00〜
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広島サポーターは、下田崇のことを「神」と呼んでいた。驚異的な反射神経と正確なポジショニングでゴール前に君臨し、魅せたスーパーセーブの数は限りない。その活躍を目の当たりにしたサポーターは、自然と下田を崇拝の対象に祭り上げた。
例えば2001年。勝てばJ1残留が決定的になるG大阪戦で下田が見せたプレーは、まさに伝説。G大阪が放った6度にわたる決定的シュートをことごとく、信じ難い反応で外に弾き出す。特に新井場徹(現鹿島)が後半アディショナルタイムに放った完璧なヘディングシュートを右手1本で外に弾き出したシーンほど、凄みのあるセービングは記憶にない。試合後、下田は広島弁で「大事な試合じゃったけえ、どうしても勝ちたかったんよ」と興奮気味にまくしたてた。いつも冷静沈着に標準語で話す下田が広島弁でコメントしたのは、後にも先にもこの時だけだ。
同世代の川口能活(磐田)や楢崎正剛(名古屋)という名GKたちと並び称される実力を持っていた下田だったが、度重なる膝のケガもあり、ここ3年間は試合に出場できず、ついに今季限りで広島のユニフォームを脱ぐことになった。ペトロヴィッチ監督はその下田の実績とクラブへの貢献をリスペクト。今季初めて彼をベンチに入れ、さらに出場の可能性も示唆した。そのことが、広島の選手たちの闘志に火をつける。
「シモさんのために」「シモさんを試合に出させよう」
前半から、広島の選手たちは猛然と攻撃にかかる。李忠成が、佐藤寿人が、決定的なシーンを迎える。ミキッチのシュートはポストに当り、こぼれを拾った高萩洋次郎のシュートも決定的だった。だが、どうしてもゴールできない。
一方のJ1残留のためには引き分けでいい仙台は、しっかりと守備を固め、リスクを負わないサッカーを展開。広島のミスをついて決定機も迎えた。特に前半3分、中島浩司のパスをカットし、梁勇基がGKとの1対1を迎えたシーンは、仙台残留の決定打となるかと思われた。だが、西川周作の落ち着きの前にエースのシュートは弾かれる。
後半も仙台の守備優先となるコンセプトは変わらない。一方の広島は、強烈な切れ味を見せる右サイドのミキッチにボールを集めて、ブロックをこじ開けにかかる。必然的に、仙台の守備陣もミキッチのケアに神経を配った。その瞬間、中央にできたわずかなスキを高萩洋次郎が完璧なスルーパスでつく。飛び出した李忠成がGKをかわし、シュート。だが、ゴールをカバーした鎌田次郎が、スーパークリアを見せる。さらに68分、李はミキッチの完璧なクロスをフリーでヘッドを放つも、ボールは枠の外。79分、ペトロヴィッチ監督は悩みながらも3人目の交代カードに森崎浩司を選び、得点をとりにいった。この瞬間、下田崇の出場チャンスは潰えた。
ピンチをしのぎながらも仙台はカウンターを狙い、84分の太田のヘッドがバーに当たるなど、ゴールチャンスも迎えた。一方で攻撃にかかる枚数を減らし、しっかりとブロックを固める。残留決定に向け、万全の策を講じたはずだった。
アディショナルタイム、森脇良太のサイドチェンジを山岸智がキープする。菅井直樹が対応するも、山岸は一歩ボールを中に持ち出し、右足でクロスを入れた。放物線を描いたボールにルーキー・大崎淳矢がヘッドで合わせた。ボールは肩に当たってコースが変わり、ゴールネットの中におさまった。その瞬間、仙台の選手はガックリと腰を落とし、倒れ込む選手もいた。全力を出し切っていた彼らに、残り数分で試合を振り出しに戻す気力は残っていなかった。
下田がサポーターへの惜別をプレーで見せることはできなかった。だが最後のセレモニーで挨拶をした背番号1を胴上げした選手たちは、17シーズンを広島一筋で過ごした守護神を先頭に、ベンチ外の選手を含めた全員でEXILEの「CHU-CHU TRAIN」のパフォーマンスを披露。笑顔と歓声がビッグアーチを包んだ。その輪の中に、ストヤノフや桑田慎一朗、篠原聖といった広島を離れる選手たちがいたことも、印象的だった。
あと数分でJ1残留をその手にすることができたはずの仙台だったが、広島のミスにつけ込んだいくつかの決定機を決められなかったことが、最後まで響いた。だが、鎌田のスーパークリアに象徴されるように、選手たちは必死で、全力を尽くして闘った。その踏ん張りが印象的だっただけに、失点後のガックリとした姿が切ない。
現実は決してネガティブではない。ホーム最終戦で引き分け以上の結果を残せば、自力でJ1残留を決められる。2試合連続のアディショナル弾による精神的ショックは計り知れないが、サポーターを含めた仙台の全てをかけて、強敵・川崎Fに立ち向かい、全員で残留を勝ち取りたい。

以上

2010.11.28 Reported by 中野和也
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