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群馬県では高校サッカー選手権の県予選が佳境に入っている。数試合を取材したが、３年生にとっては高校生活の集大成となるだけに、勝負に懸ける執念は凄まじいものがある。ピッチの隅々から高校生たちの気迫がズキズキと伝わってくるのだ。もちろんＪリーグとはプレーレベルは違うが、「負けたら終わり」のトーナメントがドラマを生み、観客の心を捉えている。
「トーナメントのつもりで１戦1戦に挑む」。Ｊ２中断前の序盤戦を屈辱の最下位で終えた草津は、これを合言葉にリーグ戦再開後にリスタートを切った。絶好の再起動となった18節福岡戦、ケンカバトルで逆転勝利を収めた21節栃木戦、決死の守備で完封勝利を飾った29節東京Ｖ戦…草津は勝利への執念をみせて勝点を積み上げた。だが、最近の試合ではその執念がやや薄れている印象を受ける。草津らしさが消えていると言っていいだろう。
「執念」。これを数字化するのは難しい作業ではあるが、興味深いデータがある。草津の今季の引き分け数は６。最少は富山の２で、福岡の４、横浜、徳島、岐阜の５と続く。引き分け数はリーグ６番目の少なさだが、問題は内容だ。６試合中スコアレスドローが３試合、追いつかれたのが２試合、追いついたのは16節札幌戦１試合しかない。「負け試合をドローに持ち込めていない」（副島監督）。この数字がすべてではないが、底力の一端を示しているのは事実だろう。草津は前節愛媛戦で劣勢のまま流れを戻すことができず「完敗」（松下裕樹）を喫した。チーム力が拮抗するシーズン終盤は「執念」が問われている。
草津は現在15位で、シーズンも残すところあと５試合となっている。このままの順位では誰も納得しない。草津は今週から選手との契約交渉が本格化しているが、結果が出なければ次がないという状況は、高校サッカーのトーナメントと同じ。危機感という３文字を胸に刻んで戦わなければいけない。そしてスタジアムへ足を運んでくれるサポーターに、今季の仕上げとして魅力あるサッカーを届けなければならない。
今節の草津は主将松下が警告累積で出場停止（２試合）、闘将を欠いたゲームとなる。今週のトレーニングで気を吐いていたのはゲームメーカー熊林親吾だ。週始めのハーフコートゲームでは、激しい口調でチームに喝を入れていた。今季の草津において熊林の果たす役割は大きく、岡山戦でも「ピッチの監督」としてゲームをコントロールすることになる。「マツ（松下）がいい形でチームに戻ってこられるようにベストを尽くす。ラスト５試合は、今季作り上げてきた自分たちのサッカーで勝つ」（熊林）。松下の出場停止に加えてケガ人が重なる草津はまさに総力戦となる。
正田スタへ乗り込んでくる岡山は、前節ホームで大分を返り撃ちにして今季初の２連勝を決めた。東大生の特別指定選手・久木田紳吾が土壇場でアシストを決め、ＦＷ李東明が初ゴールを挙げるなどチームには新たな風が吹き始めている。最近５試合は、３勝１分１敗とシーズン終盤になって結果を導き出すことに成功。草津・櫻田和樹は「岡山は全員がしっかりと走ってくるし、本当に良いチームになっていると思う。順位が下とかは全く関係ない」と引き締める。15位草津と17位岡山の勝点差は５。この試合でこの差がどうなるのか注目だ。
今節はこの季節にしては稀な19時半からのナイトゲームで開催される。正田スタに隣接する群馬県サッカー場では午前11時から高校サッカー県予選準決勝２試合が予定されている。高校サッカーとＪリーグをハシゴするサポーターもいることだろう。選手たちはＪのピッチで何を表現するのか。副島監督は「ナイトゲームに来てくれるサポーターのためにも熱いゲームをしなければいけない。闘うという『原点』に戻ってサポーターの心を動かすサッカーを魅せる」と言葉に力を込めた。残り５試合、ここからはプロとしての執念が問われる。
以上
2010.11.13 Reported by 伊藤寿学
