11月14日(日)J2 第34節 水戸 vs 札幌(17:00KICK OFF/Ksスタ)
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「全員が同じ方向を向いてプレーできなかった」。前節横浜FC戦後、作田裕次は悔しさをかみ殺しながら、こう語った。「最低の試合だった」と本間幸司が振り返る横浜FC戦。その要因となったのが、守備の意識の欠如だ。「あまりにも守備がゆるかった。後半はある程度持ち直したけど、90分通してしっかり守備をするというスタンスを出さないとサッカーができない」と木山隆之監督が語るように、チームとしてやるべきことができなかったゆえの当然の敗戦。勝機はまったくと言っていいほどなかった。
なぜそのようなことが起きたのか。原因は、大きく2つ考えられる。
1つは「自分たちから攻めるという意識が強く、守備意識が弱くなってしまった」(木山監督)こと。10月以降、水戸は、それまでのDFラインを下げて“ゴールを守る”ことを主眼に置いた守備から、DFラインを上げ、積極的にプレスをかけて“ボールを奪う”攻撃的な守備をするサッカーに移行。それにより、チーム全体に攻撃的な姿勢が芽生え、前々節柏戦では1対4で敗れながらも首位チーム相手に先制点を奪う健闘を見せたのであった。
しかし、それを続けられないことがチームの若さであり、弱さであると言えるだろう。DFラインを上げて守備をするということは、当然リスクがつきまとう。そのためにも前線からの守備意識が以前よりも重要になってくるのだ。しかし、横浜FC戦では、前線と中盤の選手の守備意識は皆無に等しく、まるで横浜FCの攻撃練習の相手をしているかのように、いいように相手に攻撃を組み立てられてしまったのだ。センターバックとGKの奮闘によって1失点で抑えたものの、大量失点を喫していてもおかしくない内容であった。今節に向け、「守備はDFとGKだけでやるものではない」(作田)という意識をもう一度取り戻すことが必要だ。そのために今週の練習ではボランチに守備を得意とする下田光平を起用する形をテスト。「前節は守備ができていなかった。まずは守備から入るということを見つめなおしたい」と語る下田のプレーに期待がかかる。攻撃サッカーを繰り広げるためにも、守備の意識が強く求められる。前線から厳しくプレスをかけることができるか。そこがすべてと言えるだろう。
そして、もう1点は木山監督の退任が決まったことである。退任決定後最初の試合となった横浜FC戦前、選手たちは「結果を出して監督に恩返しをしたい」と強い気持ちを示していたが、実際は「精神的な面で大きな影響があった」(本間)ことは否めない。絶大な信頼を置く指揮官の退任だけに選手たちは気落ちしていたという。「若い選手が多いので、こういうことに慣れていなかった」(本間)。試合前のロッカールームでもいつもと違った雰囲気が漂っていたらしい。そうした精神的なダメージが「ゆるい守備」につながってしまったのだろう。しかし、それはプロとして許されざる行為であることは言うまでもない。今節、ホームのサポーターの前でそんな弱い態度をとることは絶対に許されない。そのために今週最初の練習前の選手たち同士でのミーティングにおいて、本間は「プロとしてしっかりやろう!」と選手たちに投げかけたという。シーズン終盤、監督の問題だけでなく、自らの契約の問題など複雑なことが入り混じる時期ではあるが、それを表に見せずに戦うことこそプロ。いや、むしろそれをバネにさらに強い気持ちを見せることこそプロである。さらに高い評価をされるために、新監督にアピールするために、そして何より木山監督のため、サポーターのため、自分のすべてを発揮することがプロの仕事。今季、ホームゲームは残すところ3試合。試合終了後に立ち上がれなくなるほど熱く強く戦う姿をサポーターは期待している。前節のようなことは絶対にあってはならない。
一方、札幌は前節千葉を破り、勢いに乗っている。前半は相手の勢いに押されっぱなしであったが、粘り強い守備で対応して無失点で切り抜け、そして87分に途中出場の宮沢裕樹がゴールを決めて勝利をおさめた。ただ、前節だけでなく、ここ数試合札幌は着実に調子を上げている。「前回の対戦のときと印象が変わった」と木山監督は分析するように、前線にスピードのある内村圭宏が入ったことで、流動的な攻撃を繰り出すことができている。4−1−4−1システムの前の5人が激しく動き回ることで相手の守備を錯乱しながら攻撃を仕掛けてくる。攻撃の中心は高木純平。トップ下で彼が起点となることで幅の広い攻撃を繰り出すことができている。水戸としては、彼をつぶすことが勝利への至上命題と言えそうだ。
ただ、懸念はけが人が多いこと。今週の練習では、フィールドプレーヤーわずか8人で行った日もあったという。石崎信弘監督は選手のやりくりに頭を悩ましていることだろう。だが、チーム状況は厳しいが、やるべきことは今までと変わらないはず。やっと形になってきた石崎サッカーを貫いて、勝点3を持って帰ることだけである。
以上
2010.11.13 Reported by 佐藤拓也
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