スカパー！生中継 Ch184 後07:20〜
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いつもと変わらぬトレーニングメニュー。いつもと変わらぬ表情。そして、いつもと変わらぬ空気。「どんな状況になっても自分たちがやることは変わらない。目の前の相手のことだけを考えて戦うだけ」。そう言い続けてきた篠田善之監督と選手たちの意思を伝えるかのように、雁の巣球技場の光景に全く変化はない。
目標としてきたＪ１昇格の権利を手にするまで勝点９と迫った今、選手たちが「昇格」という言葉を具体的に口にし、トレーニング中の緊張感が高まっているのは当然のこと。しかし、それは自分たちのスタイルや、過ごし方に影響を与えるものではない。あくまでも平常心を保って準備を進めるチームの姿は頼もしくさえも見える。
その福岡にとって、残された５試合は特別な意味を持つ。篠田監督は話す。
「これからの戦いは自分たちのサッカー人生の中で最も重要な５試合。Ｊ１昇格は、いま自分たちの手の届くところにある。それを自分たちの手でしっかりと掴み取るために、今まで通り、自分たちのサッカーをしっかりとすることが必要」。
そして大久保哲哉は、ラスト５に向けて次のように意気込みを話した。
「ここからは相手云々じゃない。大事なことは、自分たちがどうやって勝点３を取るかということだけ。戦術や技術は大切だが、最後は気持ち。昇格したいと思う気持ちが一番強いチームがその権利を手に入れる。しかも、我々には２位になるチャンスもある。ホーム、アウェイに関係なく、勝点15を取ることを目標に戦う」
その初戦の相手は大分。福岡は大分銀行ドームに乗り込んで戦う。
リーグ戦では36試合すべてが等しく重要。目の前の勝利に一喜一憂していては、Ｊ１昇格を争うサバイバルレースに生き残ることはできない。しかし、それでもなお、勝たなければいけない試合がある。それが大分との試合だ。大久保は話す。「この時期に、この順位にいることは本当に素晴らしいこと。毎年、毎年、訪れるチャンスじゃない。それを掴み取るために、今週末の試合は絶対にものにしなければいけない」
しかし、大分は決して簡単な相手ではない。「大分は勝っていないし、順位も下にいるけど、そんなチームじゃない。本来ならば、昇格争いする位置にいなければいけないチームだし、個の能力は高い。本当に注意しないと、いつでもやられてしまうチーム」と篠田監督も警戒を強める。
その言葉を証明するように、大分は第30節の柏戦から布陣を３−４−３に変更して３連勝を飾っている。最大の特徴は、最終ラインも含めた10人のフィールドプレーヤーが、流動的にポジションを変えながらビルドアップする点。ロングボールをほとんど蹴らず、簡単にボールを失わない巧みさは14位のそれではない。前節の岡山戦には敗れたが、大分の特徴は随所に現れていた。
当然のように、ゲームを左右するのは先制点。ここまでいくつもの逆転勝利を記録している福岡だが、大分が持つ能力を考えれば、やはり試合をリードする形で進めたい。そのために譲れないのはセットプレーの攻防だ。栃木戦では２失点を喫したが、確実に大分のセットプレーを抑え込み、逆に積み重ねてきたサインプレーで得点を奪いたい。
そして攻撃では、セオリー通り、３バックの両側に広がるスペースをどう生かすかがポイントになる。しかし、単調に送り込むだけなら、却って自分たちのリズムを失う。バイタルエリアを上手く使いながら、福岡が持つ前へ出るパワーと、裏のスペースを突くスピードを活かしたいところだ。
それでも、勝ちたい気持ちが強ければ強いほど局面での当たりが激しくなり、試合は相手の特徴を潰し合う展開になりがちで、そうした展開では、きれいなサッカーをしようとすれば墓穴を掘ることになる。そして、昇格がかかっている福岡と、絶対に負けたくない大分が正面からぶつかり合えば、理屈抜きの激しい戦いになることは間違いない。チームとして戦うことは大前提だが、その前に、個々がいかに戦えるかが非常に重要になる。
そして、ピッチに立つ11人だけではなく、ベンチ入りした選手、ベンチ外の選手、そして、大分銀行ドームに駆け付けるサポーターを含めた力を結集して戦うことが何よりも重要。大事な試合であればあるほど、あらゆるものを含めた総合力で勝るチームが勝利を手にする。それがサッカーだ。
監督、スタッフ、27人の選手、サポーター、そして福岡に関わる全ての仲間で、この緊張感を楽しみながら、気負わず、平常心で、しかし絶対に勝つという強い気持ちを表現したい。その先に願う勝利が待っている。
以上
2010.11.13 Reported by 中倉一志
