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同じ釜の飯を食ったライバルが、得点王争いをしているのをこの男が黙って見ている訳が無い。２００５年〜２００６年の２シーズンは、ともに名古屋グランパスエイト（当時）のＦＷとして、しのぎを削った仲だ。今節のベストアメニティスタジアムは、この２人の熱き戦いを見るのも一考である。
この２人の略歴を紹介しておこう。
豊田陽平：１９８５年４月１１日生まれの２５歳。現在は鳥栖に所属し、２８試合８得点。
津田知宏：１９８６年５月６日生まれの２４歳。現在は徳島に所属し、２６試合１５得点。
前述したように、ともに名古屋で初ゴールをあげたＦＷである。
豊田陽平は、２００５年２０試合出場４得点。２００６年は９試合出場１得点の結果を残している。
津田知宏は、２００５年１試合出場０得点。２００６年は１４試合出場３得点の結果を残している。
この２人が同じピッチに立つのである。注目せずして、この試合を語ることはできないだろう。ともに前所属から期限付き移籍でＪリーグディヴィジョン２を今季の主戦場とした。そして、両チームの攻撃の核として存在している。
鳥栖は、両サイドを使っての攻撃を標榜している。好機とみれば、両サイドＤＦまでもが攻撃参加してくる。これも、高さと強さを併せ持つ豊田陽平がいるから機能する。徳島は、中盤でボールを上手く捌くことができる選手が多い。前線でもボールを納めることができるので、津田知宏のスピードとドリブルが生きる。彼ら２人は、前回の闘いとなった第１８節では、ピッチ上で顔を合わせる事は無かった。だからこそ、今節は互いに意識していることだろう。
鳥栖は第１７節栃木戦以来、ベストアメニティスタジアムでは勝利が無い。実に４ヶ月間も地元ファンやサポーターに勝利をプレゼントしていないことになる。比例して、順位も下降気味で今節まで１０勝１０分１０敗と貯金を使い果たしている。なかなか結果が伴っていないが、鳥栖らしく試合を運べる時間帯も多くなってきたことも事実である。
第３０節横浜ＦＣ戦の前半や、第３１節東京Ｖ戦の失点前までの時間帯は、鳥栖の標榜した「コンパクトなサッカー」（松本監督／鳥栖）が実践できていた時間帯である。あとは、この良い時間帯を９０分間に延ばすだけである。ＣＢ飯尾和也は、「意識して守れるようになってきている。結果は出ていないが、今の守備には手ごたえを感じる」と自信を示してくれた。あとは、前節の失点で見せたような、単純なミスをしないことである。前節は、ケガで欠場したＭＦ丹羽竜平もボランチに帰ってくる。彼が、アンカー的な守備で入ることで、両サイドの攻撃参加回数が増える。そうなると、ＦＷ豊田陽平の出番となるはずだ。今節は、鳥栖の９番が大爆発してくれそうな予感がする。「プロの世界に消化試合は無い」と力強く宣言した豊田陽平に大きな期待を寄せておきたい。
対する徳島は、第３０節熊本戦で１−０と辛勝したが、ここ６試合では１勝５敗とやや失速気味である。その前の４試合では、１４得点（６失点）と攻撃が爆発していただけに、悔やまれる試合が多い。６試合とも最少得失点差とはいえ、無用な失点を喫していれば、自慢の攻撃力は生きては来ない。前節（福岡戦）の前半に見せた、前線の集中力とサイドＤＦの果敢な攻め上がりを見せれば、鳥栖の得点機会は減ることだろう。鳥栖同様に攻撃が機能すれば、自然と守備のリズムも良くなり主導権を握るものと思われる。
ともに前線に爆発力を持った選手を擁している。順位こそ９位（徳島）と１１位（鳥栖）と中位に位置してはいるが、攻撃力はＪ２の中では強力とも言える。今節の戦いは、ＦＷを有効に機能させるために両サイドの出来がターニングポイントとなりそうだ。
残り試合が少なくなるたびに、優勝や昇格の可能性が消えていくチームが増えてくる。しかし、選手たちは冒頭の豊田陽平の言葉どおりに「プロの世界に消化試合なんて無い」と思って戦っている。この思いは、ファンやサポーターには、心強く響くに違いない。この思いを我々も共有して声援を送ろう。スタジアムで一緒に戦う権利を持っているのは、チームを愛しているファンやサポーターだけなのだから。
サッカーの試合には、負けても良い試合などは存在しない。
以上
2010.11.06 Reported by サカクラゲン
