11月7日(日) 2010 J1リーグ戦 第29節
広島 2 - 1 浦和 (13:05/広島ビ/21,725人)
得点者:31' エジミウソン(浦和)、51' 李忠成(広島)、90'+1 佐藤寿人(広島)
スカパー!再放送 Ch185 11/8(月)後11:00〜
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佐藤寿人は、やはりスーパー・スターだった。
激しく攻め合い、互いに合い譲らなかった後半アディショナルタイム、「寿人!」という広島サポーターの想いをその左足に凝縮させ、ここしかないというコースにボールを蹴り込んだ。「あれが、ヒサが生まれ持った才能」と同期・森崎和幸が称賛する輝きと共に、エースが広島ビッグアーチに帰ってきた。
あのヤマザキナビスコカップでの大熱戦、120分もの激闘での敗戦というショックから中3日という短い時間の中で、広島の選手たちは本当によく闘った。特に森崎和幸・青山敏弘のダブルボランチが圧巻のプレーを見せつけた。
例えば17分、細貝萌がボールを持って前を向いたシーン。細貝がチョンと蹴り出したその瞬間に一気のスピードで森崎和が詰め、ボールを奪い取った。さらに、高柳一誠との狭いスペースでのパス交換から正確に李忠成へのクサビを入れ、高柳の決定的なシュートを導き出した。森崎和の突出したボール奪取能力と正確無比の配球がギラリと輝いた場面だ。一方の青山は、持ち味の運動量を発揮し広範囲にわたってスペースを埋めながら、チャンスと見るやロングパスで裏を狙う。特に佐藤寿人とのホットラインは健在で、79分にはエースの飛び出しにピタリと合わせた精度抜群のパスを供給した。
互いにベストコンディションであれば、2人は日本でも有数のボランチコンビ。しかしJ1復帰以降、森崎和は慢性疲労症候群に苦しみ、青山は左ひざ内側半月板損傷のため半年に2度の手術を受けるという不運に泣き、コンディション調整も難しい情勢。彼ら不在の中、広島は他の選手がその穴を必死に埋め、ナビスコカップ決勝進出など結果も残してきた。だが、この日のプレーぶりを見ると、やはり広島の心臓を担うのはこの2人だと改めて認識させられた。
しかし31分、思わぬところから試合は動く。広島の最終ラインのパス回しにプレスをかけ、細貝が激しく槙野智章にアタック。ファウルと判断した広島の動きが止まった隙をついて、エジミウソンが強烈なシュートをたたき込んだ。
ショックを受けた広島ビッグアーチ。だが、後半開始早々に現れた背番号11の姿が、サポーターに大きな勇気を与える。9月8日、ナビスコカップ準々決勝、右肩鎖関節を脱臼しながら森崎浩司の決勝弾を演出したエースは、その後必死の治療とリハビリを続けた。10月31日の対横浜FM戦も、11月3日のナビスコカップ決勝も、試合展開とチーム状況の関係で途中出場のチャンスがなかった。「試合に飢えている」と語り、この試合でも失点直後からウオーミングアップを怠らなかった佐藤が、約2ヶ月ぶりにピッチに立つ。しかも、李忠成との2トップに前線の形を変えてまで。ペトロヴィッチ監督の勝利への執念も感じさせた。
51分、さっそくこのシステムが結果を出す。森脇良太のスルーパスに飛び出したミキッチ。この瞬間、佐藤の動きにつられ、浦和はラインを下げる。一方の李はあえて踏みとどまり、バックステップ。その結果としてフリーになった李は、利き足ではない右足のボレーで見事にネットを揺らした。「2人の関係が生んだゴール」と李は喜びを爆発させる。
ただ同点後、むしろペースは浦和。疲れから足が止まった広島の隙をつき、前へと圧力をかける。46分、エジミウソンとのワンツーで抜け出したサヌがシュートを放つも枠外。55分、エジミウソンの強烈なシュートが、槙野の顔面ブロックに防がれる。59分には高橋峻希とのワンツーから岡本拓也がシュート。62分、サヌが左サイドから突破し、西川周作と交錯したように見えたが、ここはノーファウル。いずれもペナルティエリア内でのチャンスで、ゴールまであと一歩と広島を追い込んだ。だが、この時間帯でゴールを奪えなかったことが、勝負を分けた。
浦和の攻勢をしのいだ広島は、途中出場の山崎雅人と森崎浩司が存在感を発揮し、ペースを取り戻す。アディショナルタイムのドラマは、山崎がパスを出し、森崎浩がDFを引きつけ、佐藤がゴールを決めた。3人の交代選手が決勝点を演出し、広島が全員の力で勝利を奪い取った。
広島はこれで勝点45となりJ1残留が決定、ACL出場権獲得にも希望を残した。一方、浦和は3連敗。条件付きACL出場権獲得となる4位とも勝点8差となってしまった。しかし「サポーターに感動を与えることが、僕らの仕事」と森崎和が語るように、サポーターのために最後の最後までプロらしく、激しい闘いを両チームとも見せてほしい。広島も、そして浦和もそれができる集団であることを、この日の熱闘は証明してくれた。
以上
2010.11.08 Reported by 中野和也
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