11月6日(土) 2010 J1リーグ戦 第29節
湘南 1 - 4 横浜FM (14:03/平塚/12,181人)
得点者:19' 中村俊輔(横浜FM)、27' 山瀬功治(横浜FM)、30' 清水範久(横浜FM)、67' エメルソン(湘南)、80' 端戸仁(横浜FM)
スカパー!再放送 Ch308 11/7(日)後00:00〜
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栗原勇蔵が負傷交代した直後に生まれたゴールが勝負を決定づけた。80分、途中出場の端戸仁が、攻撃的に出ていた湘南の裏を鮮やかに盗み、プロ初ゴールとなるループシュートを冷静に沈めてみせたのだ。これまで1試合平均1得点、最多でも3得点の湘南にとって、4失点はあまりに重い。
反面、点差こそあったものの、端戸がゴールネットを揺らすまでは、ビハインドを背負う湘南も少なからず盛り返していた。後半を迎えるまえに、反町康治監督は選手たちに言葉を託している。「最終ラインを整理し」「焦らずパスワークで崩していこう」。実際、小野裕二や山瀬功治、清水範久ら横浜FMの攻撃陣が立て続けにゴールを脅かした後半の序盤をしぶとく凌ぐと、およそ1ヶ月ぶりに復帰した鈴木伸貴が田原豊との連係で積極的に上がり、60分過ぎあたりから風向きが変わっていく。続いて坂本紘司が敵陣内でパスカットし、ペナルティエリアに持ち込んだ田原がファウルを誘ってPK獲得、エメルソンがきっちりとねじ込んだ。これが67分のことだ。また75分には田村雄三が素早いリスタートを試み、入ったばかりの中村祐也がサイドへ展開してエメルソンがシュートまで持ち込んだ。2点差に詰め寄ったことで、湘南は追撃の勢いを駆ったのだった。だから逆に、4点目が効いたともいえる。
一方の木村和司監督はハーフタイム、選手たちにこう伝えている。「緩めないこと。貪欲にちゃぶろう」。果たして後半立ち上がりの横浜FMは、キックオフ直後の小野のシュートを皮切りに湘南を圧倒した。と同時に指揮官の言葉は、前半に手繰り寄せた流れにも通じていた。
湘南のフリーキックのクリアボールが宙に浮くと、横浜FMが競り合いで勝る。こぼれ球を拾ったのは小野だ。相手DFをかわし、スピードに乗っていく。なかに切れ込んで放ったシュートはGK都築龍太に弾かれるも、「もしかしたらこぼれてくるかもしれない」と走った清水がいち早く反応し、3点目を詰めた。小野はそのわずか3分前の27分にも右サイドで仕掛け、こぼれ球をフォローした山瀬が巧みにコースを突いて、2点目を挙げていた。
27分と30分という短時間のうちに追加点を許した湘南も、むろん反撃を試みている。しかし、たとえば今季リーグ戦初先発の三平和司がパスを読んでカットしても、あるいは坂本が長い距離を戻って奪っても、その先のパスが繋がらずにふたたび相手に渡ってしまう。エメルソンの前向きな仕掛けもことごとく摘み取られた。守備に追われるうちにラインが下がり、両サイドバックもなかなか上がれず、チームとしてシュートまで至らない。
かたや横浜FMは威勢よくシュートを浴びせ、前半のうちに3点のリードを奪った。漂う余裕の源は、幸先のよい先制点に見出せよう。山瀬は言う。「早い時間に点を取れたことがいい流れに繋がったと思う」。他方、この日キャプテンマークを巻いた湘南DF山口貴弘は、「マリノスに勢いを与えてしまった。もっとうまく対応したかったが後手を踏み、ラインも下がって相手に主導権を握られた」と、先制点がもたらした影響について語っている。
この日の勝負の行方を大きく左右することになった横浜FMの1点目は、中村俊輔のPKによって19分に刻まれた。コーナーキックの際のポジション争いで警告を受けた山口は、「悔しいです」と噛みしめたひと言に忸怩たる思いを込めた。
横浜FMは次節、日産スタジアムにF東京を迎える。開幕戦では敵地で敗れているだけに、ホームで借りを返したいところだ。一方の湘南は、台風の影響によって延期された大宮戦が10日(水)に控えている。0−3で敗れた前回対戦の苦い記憶を拭うべく意地を見せたい。
「サッカーは判断のスポーツだ。それがうまくいこうがいくまいが、ゲームなんだから判断を楽しまないと」あるとき、反町監督がこんなふうに語ったことがある。もちろん、個々が判断に責任を持つという前提の話だが、選手たちが生き生きとプレーすることを第一に考える指揮官の思いにも通じている。現在チームが置かれている状況は厳しい。だがそれでも、選手たちが判断を楽しみ、生き生きと「プレー」することによってピッチに自然と笑顔がこぼれるなら、だれも咎めはしまい。怪我により長期離脱を余儀なくされている猪狩佑貴がぽろっと口にしたものだ。「やりたいです、サッカー」と。厳しいいまだからこそ、プレーの原点を見つめたい。
以上
2010.11.07 Reported by 隈元大吾
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