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順位は７位に後退したが、前節は首位の柏と引き分けて勝点１を加えた熊本。この一戦にあたって高木琢也監督が採った３バックは、両ワイドMFも押し込まれて実質５バックになってしまう時間帯も長かったとは言え、選手達がその意図を理解することで結果につながり、そして結果を得たことで自信になった。
しかしながら、「次の試合も守るかというと、そういうことではない」と監督自身も試合後に話している通り、前節の戦い方はあくまで変則的なもの。上位陣との勝点差が徐々に開く一方、８位以下との勝点差はジワジワと詰まりつつあり、33節に試合がないという状況を考えれば今節はどうしても３ポイント加えておかなければならない。
対する鳥栖は前節、PKから１点を失って東京Vに敗れたものの、全体をコンパクトに保って有効なスペースを与えず、奪ってからの切り替えでペースを掴んだ。ゲームを通しては連動した守備で相手にボールを回させておらず、そうした部分については松本育夫監督も手応えを掴んでいる。前節は先発に入っていた衛藤裕が試合直前に出場を回避し、代わりにボランチに回った藤田直之も退場を受けて今節は出場停止となるため、衛藤が復帰するかどうかも含め鳥栖のメンバーも前節からは変わりそうだが、アグレッシブに来るというチームとしての基本的なカラーは普遍。「気持ちも全面に出してくるチーム」（宇留野純）とあって、熊本としては前節の柏戦同様にまずは守備から入りつつも、鳥栖の早いプレッシャーをいかにはがしていくかがひとつのポイントになる。
特にボールホルダーに対しては２枚、３枚と寄せて囲んでくるため、「ひとつひとつの判断を早くすることが大事」（筑城和人）。どこかで数的不利になれば必然的に数的優位の状況が生まれるが、その判断を共有し、DFラインの裏、あるいは逆サイドのスペースへとテンポよくボールを動かしたい。そのためには２人目、３人目の動きやサポートの距離とタイミングも重要。速攻という面ではここまで７ゴールを挙げている松橋章太の出場停止は痛いが、前節もいい飛び出しを見せてチャンスに絡んだカレン・ロバートに期待がかかる。
ただし、鳥栖のDFも中央は高さがあるため、サイドにばかり固執して単純なクロスを送るだけでははね返される可能性も否定できない。「遠目から狙うことで中を締めてくれば、外が開いてくる」と吉井孝輔が言うように、第一にゴールを意識する姿勢も欠かせない。特にここ数試合、FWがバイタルエリアでボールを受けターンできるようなクサビのパスが入る場面が少ないことを踏まえれば、状況に応じて積極的にチャレンジし、相手のDFラインにギャップを生む工夫も必要だろう。
守備においては、前線のターゲットとなる豊田陽平へのロングボールから左右に展開する鳥栖に対し、どれだけセカンドボールを拾えるかが焦点のひとつ。「第１クールでもそういうイメージだったので、必ず１人が競りに行って起点を作らせずに、セカンドボールの争いで戦えれば優位に立てると思う」と福王忠世も話しており、鳥栖が前にかかった時にできるスペースを衝くには中盤のボールの奪い合いで相手を凌駕しなければならない。気をつけたいのは早坂良太と山瀬幸宏の両サイドだが、その後ろで広く捌く丹羽竜平との関係を絶つ上でも、ボランチの働きが鍵を握る。
いずれにしても、「我慢比べになる」（宇留野）一戦。球際の強さや運動量、そして気持ちも影響するが、仮にそれらが互角だとしたら、わずかな所で勝敗を左右するのは何かと言えば、鳥栖の松本監督も前節の試合後に言及していたように、「必要な時に必要なプレーができるか」という状況判断だろう。シュートか、パスか。ドリブルか、キープか。中か、外か。転がすか、浮かすか…。
そうした１つひとつの判断を高い精度で積み重ね、手にしたいのは勝利。ロスタイムに１点を失って勝点２をこぼした第１クールの悔しさを、ホームできっちり晴らす時だ。
以上
2010.10.30 Reported by 井芹貴志
