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前節で福岡に敗れた北九州の与那城ジョージ監督が「アビスパは本当にいいチームだと思います」という試合後コメントを残していたが、その言葉は現在の博多の雄を最も素直に表したものと言っていいだろう。事実、福岡はキャプテン丹羽大輝を中心に組織としての強いまとまりを見せ、攻守両面で一体感ある戦いを実践。切れない集中とハードワークも武器に、充実した集団と評すべき姿を見せている。さらに福岡が素晴らしいのは、自らの成長をこのリーグ終盤になっても追求し続けていること。昇格圏内にいる状況から、ともすればその保守的なスタンスになってしまうところだが、選手たちはそれを意識に置きつつも変化を恐れない前進姿勢を貫いているのである。
冒頭の与那城監督の言葉をそのまま繰り返させてもらうが、今の福岡は本当にいいチームだ。
ではその福岡を今節ホームに迎える徳島はと言うと、残念ながらピリッとし切らない状態と言わざるを得ない。特に攻撃面は、前々節の熊本戦でこそ多彩さを見せ復調の気配を感じさせたものの、前節・大分戦では再び繋がりに欠ける内容に。その結果、チームは決定機と呼べるシーンをほぼ全く作れず、シュートは僅か5本に終わった…。となれば今節の一戦、冷静な見方としてやはり徳島は非常に難しいゲームを強いられることになろう。なかなか主導権を握らせてもらえず、少なくない時間で我慢が求めれるのではないだろうか。
しかし、その展開予想がそのまま現実になったとしても、勝機は十分あると言える。なぜなら徳島が最も得意とし、実際に多くの得点を決めている形はショートカウンター。ボールを奪った瞬間からの速い攻めなのだから。
徳島の攻撃が停滞する時は決まってマイボールになったところで時間をかけ過ぎている。横パスを多く続けることで相手にブロック形成を許し、それによって効果的な形にまでもっていけないと言えよう。そして柿谷曜一朗が「相手も引くのが早かったのでもっと早いパス回しでブロックを作る前に崩したかった」と反省の弁を述べたように、前節もその問題がハッキリと出てしまっていた。
だからこそ、今週の徳島は早いタイミングのくさびを繰り返しトレーニング。マイボールにした後ひとつふたつ繋いだところからスパッと入れる縦パスのリズムを取り戻そうと取り組んだのである。するとその成果は徐々に現れ、チームの攻めには前へのスピード感と鋭さが確かに感じられるようになってきた。もちろんまだ十分な解決とまではいかないが、それでも来る一戦に希望を見ていい回復は果たしたと言って間違いないだろう。
さらに徳島にはその狙う形を結実させるためのメンバー的好材料も。ケガによって7月から戦線離脱していたボランチ・青山隼の復帰が濃厚なのだ。激しい守備によって奪取したボールを早くシンプルにさばく彼のプレーはきっと徳島にとって大きなプラスとなるはずである。
言うまでもなくサッカーに優勢勝ちは存在しない。白黒を決めるのは唯一ゴールの数だけ。確かに福岡は強大な敵だが、自らのストロングポイントを活かし結果的に彼らより多くネットを揺らせば勝利という結果は徳島のものだ。
選手たちの勝負にこだわった戦いに期待し、開始のホイッスルを待ちたい。
以上
2010.10.30 Reported by 松下英樹
