10月17日(日) 2010 J2リーグ戦 第30節
鳥栖 4 - 4 横浜FC (16:05/佐賀/6,051人)
得点者:34' 木谷公亮(鳥栖)、41' 豊田陽平(鳥栖)、43' 藤田直之(鳥栖)、66' 渡邉将基(横浜FC)、68' 早川知伸(横浜FC)、78' カイオ(横浜FC)、86' カイオ(横浜FC)、90' 豊田陽平(鳥栖)
スカパー!再放送 Ch183 10/18(月)後10:30〜
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こんなにも違うものなのだろうか?
終わってしまえば4−4の引き分け試合だったが、それぞれのチームやサポーターが心に残した“想い”には、相当な開きがある。片方は、前半のうちに3点差をつけたが終了間際に追いついたチーム。もう片方は、後半に3点差をひっくり返してあと数分で勝利をつかむことができたチーム。どちらも4得点、そして4失点とスコアは同じでも、それぞれの指揮官には同じとは映っていなかったようだ。
終了間際に追いついた松本育夫監督(鳥栖)は、「勝てる試合を失ってしまって非常に悔しい」と振り返った。
終了間際に追いつかれた岸野靖之監督(横浜FC)は、「横浜FCが何をしないといけないのかがよく見えた試合だった」とこちらも無念さを表した。しかし、このあとに続く言葉の中に、それぞれのチームの現況が表されていた。
松本監督(鳥栖)は、「GKを含めたゴール前の守備がすべて」と課題を露呈したが、岸野監督(横浜FC)は、「一つのプレーで流れが変わる、試合が動くことを選手たちはよくやってくれた」と選手の健闘を口にした。
続く言葉だけではない。コメントの冒頭には、「3点のリードを守れずに引き分けてしまい悔しい」(松本監督/鳥栖)と「横浜FCは進化している」(岸野監督/横浜FC)との“想い”の差があった。この“差”こそが、選手のプレーやベンチワークに出ていたのではないだろうか?
前半から、鳥栖は積極的にボールを奪いにプレスをかけた。横浜FCゴールライン近くにも関わらず、FW豊田陽平はスライディングでボールを奪いに行った。中盤もDFも横浜FCのパスコースを消して、相手のミスを誘っては攻守を逆転させていた。
その激しいプレスから得たFKで34分にはDF木谷公亮がヘディングで叩き込み先制した。41分には、豊田陽平が自ら仕掛けて得たPKを決めて突き放した。究極は、43分にFW藤田直之が相手DFにプレスをかけて奪ったボールをそのまま持ち込んで3点差とした。守備が機能し、良い形で相手を崩し、隙を突いて得点し優位に進めた。3点差をつけただけではない。この間、横浜FCにシュートを1本しか打たせず、サッカーをさせていなかったのである。鳥栖のサポーターは、第14節(横浜FCが4得点で快勝)のリベンジを果たしてくれるものと思っていたに違いない。
しかし、「後半は横浜FCに根性があった」(岸野監督/横浜FC)サッカーを見せてくれた。岸野監督は、“根性”と表現したが、これには緻密な計算がなされていた。この“根性”を出させるために積極的な選手起用を行ったのである。前半が終了した時点で、ベンチ前で作戦ボードを使い、後半の巻き返しの作戦を立てていたのである。それをフィジカルコーチが確認し、一人の選手だけを急ピッチで仕上げていた。サッカーにおける重要な要素である“ベンチワーク”の連携を見せた。後半開始から、その“根性”をもったMF野崎陽介が左サイドで大暴れし、逆転となる4得点目のアシストを記録した。
「あれくらい激しくやらないと試合に出られない」と野崎陽介は試合後に教えてくれた。
野崎陽介だけではない。CKからの2得点をアシストした高地系治は、「練習でやっているとおりに狙っただけ」とこの“根性”が当たり前のことと語ってくれた。66分に1点目を決めたDF渡邉将基も「咄嗟に出たプレー」とこぼれ球をジャンピングボレーで蹴りこんだ。
「3失点から4点取ることなんてなかなかできない」(岸野監督/横浜FC)ことを横浜FCの選手たちはやってのけたのである。「大きなミスが2つあって、これで勝とうなんていうのは甘い」と岸野監督は反省も忘れてはいなかった。
横浜FCの“根性”だけで4点も取れるほどサッカーは甘くない。この“根性”を出させてしまった鳥栖のベンチワークもレポートしておく必要がある。
66分の横浜FCの1点目の前に、鳥栖は選手交代(63分山瀬幸宏→金浩男)を行った。同様に78分の3点目の前にも選手交代(72分衛藤裕→池田圭)を行っているし、86分の4点目の前(84分磯崎敬太→長谷川博一)も行っている。横浜FCの2点目は68分なので、横浜FCの全得点は選手交代直後に生まれていることになる。
交代して入った選手の問題ではない。この交代意図やポジショニング、マークの受け渡しなどが確実に全選手に伝わっていたのかどうか・・・。セットプレーからの3失点だけに、見ている側は悔やんでも悔やみ切れないことだろう。ワールドカップ中断直前に、セットプレー対策としてゾーンディフェンスに切り替えたが、その効果が66分からの20分間で打ち砕かれてしまった。
奪った3得点は、相手の出鼻をくじく先制パンチとして十分な効果を発揮したが、あまりにもガードが緩すぎて4失点を続けざまに受けてしまったことは、“選手のプレー”だけでなく、“ベンチワーク”も反省の必要がありそうだ。
天皇杯(対川崎フロンターレ)を13日水曜日に戦った横浜FC。中3日でのアウェイ戦は、相当に堪えたことだろう。「それを言い訳にも慰めにも言ったら、選手もチームも成長しません」とスタジアムからの去り際に岸野監督(横浜FC)が語ってくれた。
同じ4得点、同じ4失点、同じ勝点1だが、残り8試合を戦う中で得たものは、大きな違いがあった試合のように感じた。
サッカーは、1点ずつしか積み上げることが出来ない。それを90分間の中で繰り返し行っていくスポーツである。
しかし、積み上げた1得点は減ることが無い。だからこそ、この1点の重みがあり、得るためにいくつもの過程が必要である。「失点に偶然はない」と野村克也氏(元楽天イーグルス監督)は言っていたが、サッカーにも当てはまることだと思う。
サッカーは、日頃の練習から培わされた努力が試合で出るスポーツである。
以上
2010.10.18 Reported by サカクラゲン
J’s GOALニュース
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