9月29日(水) 2010 ヤマザキナビスコカップ
磐田 0 - 1 川崎F (19:00/ヤマハ/10,353人)
得点者:50' 黒津勝(川崎F)
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前半を見る限り、川崎Fにアウェイチームが見せることの多い遠慮というものはなかった。試合前に高畠勉監督が口にしていた「2試合目をホームでできるのは心強いですね。それだけにアウェイゴールを狙っていきたい」という言葉通りに攻撃的な試合運びを見せるのである。前半に磐田が放ったシュートは2本。それに対し、川崎Fは10本ものシュートを放っていた。
そんな川崎Fの攻撃を牽引していたのは中村憲剛だった。コンディションを崩し、後半途中にベンチへと下がらざるを得なかった中村は、それでも川崎Fの攻撃にスイッチを入れ続け、磐田の急所を突いて行った。その中村とポジションを入れ替えつつプレーを続けた田坂祐介は、体調不良で交代せざるを得なかった中村について「体調が悪くてもあそこまでやるのはすごい」と話し、それに続けて「精神的なところで支柱になってくれました」と語っていた。
攻撃機会の多さの割に、得点を奪えなかった前半について「前半0−0で多少いやでした」と語るのは決勝ゴールを決めた黒津勝。チャンスを作り続けながらも1点が遠い展開に、一抹の不安を持っていた黒津は、その不安を自らのゴールで払拭する。
0−0で前半を折り返した後半5分のこと。磐田が徐々に押し返す展開の中、菊地光将のクリアボールをきっかけに試合は動き始める。「カバーの選手よりも先に触ろうと思った」と、快足を飛ばして間合いを詰めたことでボールは前方のスペースの、それも絶妙な位置に転がる。「GKが出てきたんですが、先に触れればと思ったら、うまく前にこぼれてくれた」とその場面を振り返る黒津は「きれいなゴールではないが、大きなアウェイゴールだったと思います」と話していた。「いやな展開」を自らのゴールで払拭した黒津は、しかしここからがキツかったのだと振り返っている。
「内転筋に不安があった」(高畠監督)という稲本を後半16分に下げ、横山知伸をピッチに入れたあたりから形勢は完全に磐田のものとなる。ホームでは負けられないのだとばかりに前への圧力を強め、川崎Fを押し込み続けた。リスクを取って攻める、という表現がまさに適切な磐田の攻撃によって川崎Fは完全に守勢に回ることとなる。
前半2本に終わっていた磐田のシュート数は、後半に入ると12本へと6倍増。一方の川崎Fは、わずかに3本と前半の10本から大幅にそのシュート数を減らすこととなった。磐田の攻撃の時間が長く続く展開の中、何度か決定的なピンチに直面していた川崎Fではあるのだが、守備的なポジションについていた選手たちは見た目の印象ほどにはキツクなかったのだと後半を振り返っている。例えば中村に代わり33分にピッチに入った谷口博之は「ジュビロはサイドからの崩しがうまいし、それは気をつけてました。ただ、やられそうな感じではありませんでした。攻められたけど、落ち着いてましたよ」と猛攻を仕掛けられていた試合終盤を振り返っている。「そんなこと言ってたんですか?」と目を白黒させた黒津は、とにかく「後ろに負担が掛かっていたと思う」という考えもあり「前から守備」をしていたのだという。そして守備に走り回ったことで、非常にキツく感じた終盤だったという。守りきったという結果もあってか、谷口と同意見だったのがGKの相澤貴志だった。「そこまで崩し切られていないので、自分が対応できる範囲では余裕があった。最後のところでフリーでやらせていなかった」とチームメイトの体を張った守備について評している。
守備に専念していた谷口、相澤がある程度の心の余裕を持ちながら守りきれたということの裏側には、すなわち前線の選手の献身的な守備があったということなのだろう。ロスタイムに、モモに膝が入ってしまい、のたうちまわって痛がったヴィトール ジュニオールは、その痛い足を引きずりながら「今日は守備しかしてない」と口にしていた。本当にきつそうに、後半の守備を振り返った黒津を含め、彼らのそうした裏方的な守備があったからこそ、後半の磐田の猛攻は実を結ぶことがなかったのだろう。
押し込んだ前半に点を奪えず、苦しんだ後半のファーストシュートがゴールネットを揺らした川崎Fがアウェイゴールを奪い先勝。雪辱の舞台となるヤマザキナビスコカップ決勝に向け、着実に一歩を踏み出した準決勝第1戦となった。
以上
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2010.09.30 Reported by 江藤高志
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