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今年の横浜FCと富山の対戦は公式戦で3度目。最初は4/4に富山で行われたリーグ戦の第5節で、この時は、守りを固めてカウンターを狙う富山に対して横浜FCはシュート12本（富山は9本）と攻撃的に仕掛けるものの、カウンターの前に2失点を喫し敗戦。この後の長いトンネルへと続いていった。2回目の対戦は、9月5日に行われた天皇杯第2回戦。一発勝負となる天皇杯を考慮し、富山は同じようにカウンターを主体とした戦い方を選択したが、この試合では前半のうちにカイオ、難波宏明がゴールを挙げ、富山のゲームプランを打ち破る形で横浜FCが勝利した。そして今回の対戦も、富山の戦い方への対応が勝負のポイントとなる。
というのも、最近の富山はボールポゼッションを狙い、攻守に渡って連動した動きを随所に織り交ぜはじめるなど、結果は出ていないものの、第5節で見た姿とは異なる戦い方をピッチの上に表現している。J2昇格2年目でのステップアップの過程にあると言ってよい。現在4連敗中で7試合勝利がなく、苦しい状況であるのは間違いないが、これも90分間の中で作ってしまう隙を突かれている状況によるところが大きい。逆に、イニシアチブを取るスタイルを保ちながらも、集中力を高めて勝利を得ることができればチームに大きな自信となる。特に、第5節の横浜FC戦の勝利は、その前節の福岡戦の大敗（0-5）後の今季チーム初勝利であり、その後の北九州戦での連勝達成に繋がっている。身に付けたボールポゼッションと第5節の成功体験を上手くミックスさせながら、浮上のきっかけを狙ってくるだろう。そのミックスの配分が、富山のゲームプランでは大きなポイントとなる。
そこで、横浜FCに大事になってくるのは、富山に自信をつけさせるような試合運びに持ち込まれないこと。「先制して追加点を取って、ダメを押す」（岸野靖之監督）という勝ちパターンに持ち込むことが重要。特に、今季1回も逆転勝ちがない状況では、先制点を取ることが不可欠だ。前節・熊本戦後の記者会見で岸野監督が「“横浜FCはプレッシャーかけてくるけど後半に足が止まる”みたいな話はよう聞くんで、絶対点を取って、集中切らさんと失点をしないようにしたら90分もつ」と語ったように、リードを保ち精神的優位に立ち続けることが重要だ。期待が掛かるのは、難波とカイオの2トップ。「この2人が点を取ったら、100%勝てる」と岸野監督が断言するように、天皇杯の富山戦を含めてこの2人がゴールを取った試合は4試合負けていない。それも直近の公式戦6試合中4試合で、この「アベックゴール」を披露している。熊本戦後に「周りが僕の動きを理解してくれているので、要らないことを考えないでプレーできている」と難波が語ったが、エンジンが掛かった2トップに掛かる期待は大きい。
さらに横浜FCにとっては、上位進出のチャンスとなる試合。前回のホームゲームの福岡戦は勝負を仕掛けて敗れた試合だったが、今度こそ上位進出にふさわしいチームであることを証明する試合となる。前節・熊本戦の一番の勝因は、アベックゴールよりも、守備のバランスの劇的な向上。常に数的優位を作り、セカンドボールで負けないという基本的な部分で集中を切らさなかっただけでなく、相手のカウンターの芽を未然に防ぐファーストディフェンスの早さが目立った。カウンターを主体とする熊本対策の面はあったと思われるが、その戦い方は今節の富山、そして今後の対戦相手に勝利するために必要なもの。ホームのサポーターを前に向上した守備を続けて見せられるかが、上位にふさわしいチームへの成長という意味で重要になる。
秋の3連戦の最後の試合ということで、選手のコンディションが気になる試合であるが、一方で過ごしやすい気温になることが予報されている。日本サッカーの聖地・国立競技場で、最後まで全力を出し合う好ゲームを期待したい。
以上
2010.09.25 Reported by 松尾真一郎
