9月23日(木) 2010 J2リーグ戦 第27節
鳥栖 0 - 1 福岡 (13:04/ベアスタ/11,077人)
得点者:51' 永里源気(福岡)
スカパー!再放送 Ch186 9/24(金)後07:00〜
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人は、何かを成すべきときに、その行動に明確な目標を持っているものである。裏を解せば、目的なき行動は事を成せないのである。事を成すときには、あらゆる困難や障害があるものであり、そこでその人の真価が問われるのである。目的が高ければ高いほど、成し遂げたときの達成感は何物にも変えがたく、得る経験は後の実力となって現れる。試合における目的は“勝つこと”。“勝つため”にプレーをしないアスリートは、競技者としての資格は無い。
サッカーにおける“目的”はいたってシンプルなものである。
『勝つために試合を行い、点を取るためにプレーをする』のである。
点を取るためにシュートを放ち、シュートを放つためにパスやドリブルでボールを運ぶ。DFのクリアやシュートブロック、GKのセーブは、“失点を防ぐ”だけでなく、“攻撃への切り替え”の合図でもある。チームプレーであるサッカーは、決して一人でプレーできるわけではなく、ベンチを含めた全員で1個のボールをゴールまで運ぶスポーツである。また、ボールを運ぶ技術だけでなく、チームワークや目的の共有などといった“チームプレー特有のスキル”が存在する。
前置きが長くなってしまったが、今節の鳥栖対福岡は、前述した“チームプレー特有のスキル”の差が結果となって出た試合であった。
どちらも4−2−3−1のシステムを用いて“目的を達成”しようとした。
鳥栖はワントップに豊田陽平を、福岡は大久保哲哉を配した。高さも足元も持った選手で、彼らにどれだけボールが入るかが、この試合の大きな鍵を握っていた。
その観点から見ると、豊田はシュートを放てず、大久保は1本しか打てず、互いによく押さえていたといえる。彼らに入るボールの芽を摘めば、ゴールの確率は格段に減るからである。
強力なFWが抑えられた場合は、そこに入るボールを拾う選手の役割の重要性が増す。鳥栖は、FW以外に11本のシュートを放ち、福岡は9本を放った。数から言えば、鳥栖の健闘と言えるかもしれないが、そこに至るまでの内容に差が出ていた。それが、この試合の結果だったといえる。
試合開始直後こそ、鳥栖は豊田にボールを合わせ、MF藤田直之や早坂良太が果敢にゴール前に詰めた。サイドからクロスを用い、時には自ら仕掛けて福岡DFを慌てさせた。この流れを90分間繰り返すことで、福岡の守備に穴を開けたに違いない。しかし、それが続かないのが鳥栖の現状で、今の順位にもつながっている。
続かない理由は、前述した“チームプレー特有のスキル”に個人差が見受けられるからである。どの選手も、福岡のゴールに向かってボールを運ぶ意志はあるのだが、その手段(方法)に個人差があった。
典型的なシーンは、11分に起きたプレーである。
藤田が福岡ゴール前に仕掛け、福岡DFをひきつけた。そこで豊田の前に大きなスペースが生まれ、確実にボールを渡せば、GKと1対1の場面であった。これは先制の好機であり、この試合における先制点はその後の展開に大きな意味を持っていただけに、藤田が選択した自らのシュートは悔やまれるものだった。
そのほかにも。鳥栖が得たCKは9本だったが、味方にあったものは手元の集計で、59分の木谷公亮のヘディングシュートだけである。(注)公式記録には記されていないので、他の選手かもしれません。
選手たちだけではない。
途中交代したMF山瀬幸宏、衛藤裕、藤田はゲームメイクできる選手だったが、ピッチに立ったのは、MF長谷川博一、柳澤隼、FW萬代宏樹といずれもタイプの異なる選手だった。
1点ビハインドの状態なので個人で状況を打開する作戦だったのだろうが、最初の交代から徐々にボールが前線に入らなくなり、FW豊田と萬代は孤立してしまった。
ゴール前にボールを運ぶ手段に選手とベンチの考え方に違いが生まれてしまっては、逆転するどころか、1点を返すことさえできない。68分の最初の交代以降、放ったシュートは皆無であった。
対する福岡は、徹底的に「自分たちのサッカー」(篠田善之監督/福岡)をやり抜いた。それが51分のMF永里源気のシュートにつながった。中盤でつないだボールをシンプルに前線に預け、鳥栖DFを翻弄してあげたものだった。
今の福岡には、この1点で鳥栖に勝つことができる強さがある。これが、昇格圏内にいるチームの実力なのだろう。
やるべきことのベクトルが同じ方を向いているチームは強い。
結果がすべてのスポーツの世界。特にダービーマッチにはそこが求められる。
その試合におけるドラマやその過程の美談など、結果によっては忘れ去られてしまうものである。
それがダービーマッチであり、だからこそ“勝たないといけない”試合なのである。
勝利したチームは、その歓喜を以降の戦いの弾みとすればいい。敗れたチームは、その悔しさを次回の対戦までのモチベーションにすれば良い。
そうやってダービーマッチの歴史は作られ、応援する我々はさらにサッカーの魅力に惹きこまれる。
ダービーマッチには、サッカーの面白さ以外に熱狂させる魔物が潜んでいる。
サッカーは、面白くかつ怖いものである。
以上
2010.09.24 Reported by サカクラゲン
J’s GOALニュース
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