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熊本は前節、２位の甲府に2度のリードを許しながら、粘り強く追いついて勝点１を加えた。水戸戦に引き分けて後退した順位も再び５位に戻し、４位千葉との勝点差もわずかながら詰めたが、６位以下との勝点差も大きくは開いていない。特に29節以降、福岡、徳島、柏、鳥栖と、順位の近いライバルとの直接対決が控えており、それまでに少しでも勝点を伸ばしておきたい状況。まずは横浜FCを迎える今節、３試合ぶりの勝利を手にしたい。
勝つためには得点が必要だが、攻撃に関しては６月の中断期間に行なったキャンプから取り組んできたことが徐々に形になってきたと言っていい。前節の得点場面を振り返ると、筑城和人のＪリーグ初ゴールとなった先制点はタテのスピードに乗ったカウンターからだったが、松橋章太が左サイドを駆け上がった筑城へ開くまでの右サイドでのつなぎでは、複数が絡んだコンビネーションでボールを動かして甲府のマーカーを置き去りにした。宇留野純の２点目はクロスに対してゴール前に枚数をかけた詰め、そして３点目は、スペースに転がったルーズボールを追って残した宇留野の諦めない姿勢とファビオの積極的なゴールへの意識と、様々なパターンから得点に結びつけている。
もちろん、チャンスを作りながらも無得点に終わった水戸戦のように、精度も含めてまだムラがあることは否定できない。それでも、「今まではバイタルに入っても止めて考えるシーンも多かったが、つなぐことの先には常にゴールがあることを意識して、ターンからのシュートやパスという仕掛けからチャンスが広がっている」と、高木琢也監督も小さくない手応えを掴んでいる。
だが、ここへ来て新たに課題として浮かび上がってきたのが守備だ。もともと、昨シーズンの失点の多さを改善することから今季がスタートしたこともあり、チームとしての守備意識は高まって実際に失点は減った。その成果としてシーズンのラスト1/3に入ってもこの順位をキープできているわけだが、一方では前節の甲府戦のように、イージーなミスを発端にした失点も目につくようになっている。今節はCBの福王忠世と中盤の原田拓が出場停止となり前節から一部メンバーが入れ替わるが、いずれにしても「同じミスを繰り返さないこと」（DF矢野大輔）が求められる。
対する横浜FCは、連敗などで出遅れた序盤の停滞期を脱し、第２クールに入ってじわじわと浮上しつつある。高木監督が「やりたい形が出始めている」と捉えている通り、今年から指揮を執る岸野靖之監督のスピリットがチームに浸透。新戦力も加わり、大黒将志を柱にしていた第１クールとは趣が異なる。今節はホベルトが出場停止だが、両サイドの高地系治と寺田紳一、さらに前線のカイオ、難波宏明と警戒すべき選手が揃い、その攻撃力は依然強力。前節は福岡に逆転負けを喫したものの、先制することで優位に進める展開も多く、アウェイとは言え、この試合でも序盤から積極的に点を狙いにくることが予想できる。
そうした点を踏まえ、高木監督は「前に出てくる立ち上りの10〜15分は注意が必要」と話す。21日の練習でも守備の対応を確認していたが、前への圧力をかけてくる相手に対して冷静に凌ぎ、熊本の流れに持ち込んで精神的に焦らすことができれば、前節のようなカウンターを狙えるチャンスも高まるはず。ただ、集中した守備でペースをつかんだとしても、気をつけたいのは甲府戦でも失点につながったセットプレー。横浜FCには過去にもセットプレーから得点を許したことが少なくないため、しっかりとケアする必要がある。
さて、今節は「くまもとサッカーフェスタ」と題して試合前に様々なイベントが企画されており、初めてスタンドで観戦する人も含め、多くの来場者が見込まれる。「そういう人たちにリピーターになってもらえるよう、勝つゲームを見せないといけない」と高木監督。燃え上がっていると言うにはまだ早い、昇格への後押しをいっそう高める上でも、とにかく必要なのは勝点3だ。
以上
2010.09.22 Reported by 井芹貴志
