9月19日(日) 2010 J2リーグ戦 第26節
横浜FC 1 - 3 福岡 (13:03/ニッパ球/4,932人)
得点者:27' 高地系治(横浜FC)、40' 大久保哲哉(福岡)、69' 田中誠(福岡)、84' 永里源気(福岡)
スカパー!再放送 Ch185 9/21(火)前08:00〜
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この試合は、横浜FCと福岡の両チームにとって間違いなく勝負が掛かった試合であった。横浜FCにとっては、3位のチームを相手に昇格争いへの実質的参入を掛けた試合。福岡にとっては、昇格圏の3位を初めて防衛する試合。そんな大事な試合だからこそ、両チームが接戦を想定して後半勝負というシナリオを描き、そのシナリオに向けて全力を出した。その真剣勝負が浮き彫りしたのは、横浜FCと福岡のチーム力の現実だった。
もちろん、後半勝負のシナリオを用意していても、前半がおろそかな展開というわけではなかった。横浜FCは、最近の勝ちパターンである先制点を取るために前から積極的にプレシャーを掛け、福岡もラストパスまで流れるような完成度の高い攻撃を繰り出していく。全体的には福岡のペースで進んでいた27分、先制点は横浜FCに。スローインから、カイオ、難波宏明とつなぎ、最後は高地系治が落ち着いてゴールを決める。押されながらも先制点を挙げる展開に、横浜FCの好調さを感じる展開であったが、福岡も底力を見せる。40分、右CKのこぼれ球が大久保哲哉の足元に転がる、そのボールを大久保が冷静に決めて同点に。「前半に追いつけたことが大きかった」(大久保)というように、福岡が想定していた後半勝負へのおぜん立てを調えて前半を終了する。
「受けて立ったら調子に乗ってくるので、攻めて攻めて攻めまくって、自分達が押し込む形にしたかった」と横浜FC岸野靖之監督が振り返ったように、後半の最初の10分は、横浜FCが得点をもぎ取る執念を見せる、しかし、その執念がゴールには結びつかない。そして、58分、両チームが用意した後半勝負の一手が同時に打たれる。横浜FCは、難波宏明に代えて、一瞬のテクニックに長けたジョーカーのエデルを中央に配置。一方、福岡は「後半、横浜FCの足が止まると読んでいた」と篠田善之監督が振り返ったように、スピードに乗った突破が特長の田中佑昌を投入する。この「勝負」が実ったのは福岡の方だった。69分、田中佑の突破から得た右CKを田中誠がやすやすと決める。178cmの田中誠のマーク役が171cmでヘディングの強くないエデルだったことも含めて、交代のアヤが象徴的に表れたシーンだった。
エデルへの交代によって、難波というターゲットを失った横浜FCは、74分にボランチの八角剛史を落として西田剛を投入。中盤の形を変えてバランスを崩してでもゴールを狙いにいくが、この、なりふり構わない執念の交代も実らず、逆に84分、エデルがボールを失ったところのカウンターから、最後は永里源気が落ち着いてゴールを決める。これで、1-3と勝負を確実にした福岡が、3位のチームにふさわしい戦いぶりで勝点3を積み重ねることに成功した。
岸野監督が「(交代選手を含めた)14人で勝てている割合が高くない」と振り返るように控えを含めた戦い方の差、そして篠田監督が「90分間のハードワーク」を強調したように終盤に掛けた運動量の差。田中佑が投入された時の生かし方を完璧にチームが共有していた福岡と、エデルの生かし方が浸透していなかった横浜FC。そういった、総合的なチーム力の差の細かな集積が、勝負の采配の結果に繋がった試合となった。
横浜FCにとっては、これまでの好調さから比べると少し冷や水を浴びせられる格好のゲームとなったが、前節までの勝点は決して砂上の楼閣ということではない。昇格争いの緊迫したゲームの中でも、持てるポテンシャルを出すためのステップアップが必要であることを教えられたと言って良い。すぐにやってくる熊本戦、富山戦と、今後の試合においてこの福岡戦の厳しさを自らのハードルとしてプレーできるかどうかが、今後昇格を口にするチームになるために課せられた宿題となる。
一方の福岡は、先制されながら逆転できる強さだけでなく、3位という位置によるプレッシャーをあまり感じさせないプレーぶりを見せつけた。昇格に向かってチーム全体が自信を持ってプレーしている様は、ある種の雰囲気が出てきていると言って良い。しかし、残り12試合はまだまだ長い道のりであり、何も手にしていない状態。鳥栖とのダービー、首位柏との対決と今真価が問われる試合が続くなかで、好調を維持していきたい。
1-3とスコアも内容も離れた試合となったが、それは全力を出した上での勝負のアヤの部分もある。少なくとも、ガチンコで行った分、両チームに得るものは多いはず。残り12試合での躍進に繋がることを期待したい。
以上
2010.09.20 Reported by 松尾真一郎
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