9月18日(土) 2010 J1リーグ戦 第23節
名古屋 1 - 1 横浜FM (14:01/瑞穂陸/17,882人)
得点者:23' 天野貴史(横浜FM)、48' 金崎夢生(名古屋)
スカパー!再放送 Ch181 9/21(火)後10:00〜
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名古屋が首位の意地と底力を見せた。スコアからすれば両チーム譲らぬ1−1のドロー。しかし内容としては名古屋が勝点1を獲得し、横浜FMが勝点2を失ったという方が正しい。狙い通りの展開で先制したのが横浜FMで、そこから強力な追い上げで敗北を免れたのが名古屋だったからだ。
名古屋が劣勢を強いられた要因は、スタメンの構成にあったといえるだろう。出場停止の中村直志、ダニルソンという中盤のファーストチョイスの代役は、ブルザノビッチと三都主アレサンドロという攻撃的な選手が選ばれた。守備的な役割のアンカーを任せられる選手が不在の中、ゲームメイカーとしての三都主のアンカー起用が有力視されていたため、インサイドハーフには万能型の小川佳純の起用が濃厚と言われていた。そのため、元々がFWに近いブルザノビッチの選択は一種のサプライズ。ストイコビッチ監督の思いを察するならば、中村とダニルソンを欠く以上、中盤に守備での貢献度を期待しても仕方がない。ならばポゼッション率を高め、攻撃の時間を増やせばいい、といったところか。その意味では、運動量豊富にバランス取りができる小川よりもボールの持てるブルザノビッチの方が適任ではある。しかしこれが、大きく裏目に出てしまった。
キックオフ直後こそ名古屋が攻め入ったが、「名古屋とやる時はいつもウチの方がボールを持つ時間は長い」という兵藤慎剛の言葉通り、横浜FMが徐々に支配力を高めていく。その中心はやはり、稀代のゲームメイカー中村俊輔だった。サイドハーフに留まらず、中央やDFラインの前と自由にピッチ内を動き回り、攻撃のリズムを刻んでいく。名古屋の中盤は守備時のポジショニングが曖昧で、なおかつ攻撃から守備への切り替えが遅く、DFラインとの守備ブロックが形成できずにいた。それでも3トップを軸に反撃には出たが、中盤のバランスを崩したままのビルドアップは体をなしておらず、単発の攻撃を繰り返すばかり。攻め込む回数は名古屋が多かったが、効果率という観点で見れば、横浜FMの方が怖かった。
そして前半も中盤に差し掛かる頃には横浜FMの一方的な展開に。23分には「練習どおりのファーサイド」(木村監督)から先制。中村俊輔の左サイドからのクロスはDF阿部翔平の裏にピンポイントで届き、飛び込んだ天野貴史がジャンピングボレーで叩き込んだ。「阿部もいたのでクリアできると思ったんだけど」と増川は悔やんだが、中盤のフィルターがかからない状態での守備で、最も負担を強いられていたのがサイドバックだった。個人のクリアミスといえばそれまでだが、それは起こるべくして起きたミスでもあったのだ。また、得点者がサイドバックということからも、いかに横浜FMに押し込まれていたかは容易に想像できる。
前半はそのまま1−0で終了。ハーフタイムのロッカールームでは、“妖精”の怒号が響いたという。前半でミスを連発し、運動量も上がらなかった愛弟子・ブルザノビッチは交代。小川佳純を投入し、よりバランスの良い布陣で名古屋は巻き返しに挑んだ。
指揮官のカミナリが功を奏したか、後半開始早々に試合は動いた。風上に立った名古屋は前半鳴りを潜めていたケネディへのロングボールを“解禁”。得意の力技で布陣を前がかりに修正すると、48分にまずは小川がヘディングシュートで先制パンチを繰り出す。その直後、今度は左SBの阿部翔平が送ったロングフィードをDF松田直樹が痛恨のクリアミス。真上から落ちてくるボールをワントラップして、素早いボレーでゴールに突き刺したのは金崎夢生だった。困った時のストロングポイント。ケネディを警戒することで戻りながらの対応となった松田のミスもまた、名古屋の攻撃によって引き起こされたものだ。
これで一気に流れは名古屋へ傾いた。7分、8分と決定機を迎え、19分にもコーナーキックから田中マルクス闘莉王が強烈なヘディングシュートを放つなど横浜FMを圧倒。横浜FMも20分の狩野健太の投入を機に、渡邉千真、坂田大輔と前線の選手を次々とピッチに送り込んだが、効果が出たのは試合終了間際だった。41分の山瀬功治のミドルシュートから流れをつかむと、ファーからの展開を狙ったコーナーキック、そして相手陣深くに侵入してのマイナスのパスという狙い通りの形でチャンスを作った。しかし「置きに行った。決めきるシュートが欲しかった」と木村監督が語るように精度と気迫を欠き、名古屋の守護神・楢崎正剛の牙城は崩せず。互いに試合を決定付けるチャンスを逃した結末は、勝点1を分け合うものとなった。
試合後の両指揮官は不機嫌な表情で試合を振り返った。木村監督はシュートの精度について言及し、ストイコビッチ監督は試合の入り方について苦言を呈した。それがこの試合をドローに終わらせた原因であることは、試合後の選手たちの言葉からも明白だ。しかし、より問題の根が深いのは名古屋の方である。これまで絶対不可欠の存在はケネディと闘莉王だと思われてきたが、中村直、ダニルソンもまた、それに準ずる存在であることが証明されたのだ。残るシーズンで同じ状況にならないとは限らない。首位を維持し続けるためにもチームの再整備は必要だろう。また新たな不安要素が生じたチームは、今季発揮してきた高い修正能力を発揮できるか。まずはベストメンバーで臨める次節の清水戦に集中しつつ、この日の反省を元にさらなるチーム力の充実を図っていってほしいものだ。
以上
2010.09.19 Reported by 今井雄一朗
J’s GOALニュース
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