9月18日(土)J1 第23節 広島 vs 神戸(13:00KICK OFF/広島ビ)
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灼熱の5連戦全試合フル出場を果たした33歳の中島浩司は、ペトロヴィッチ監督から「ゴールドマン」という称号を与えられた。ところが、その「ゴールドマン」が練習中に右足を負傷。「重くはないと報告を受けている」(ペトロヴィッチ監督)ものの、神戸戦のメンバーからは外れざるを得なくなった。
実は今週、森崎和幸と山岸智という二人の長期離脱組がチーム練習に合流。トップチームに混じって質の高いプレーを見せていた。だが、二人とも「復帰即再離脱」を経験しているだけに、ペトロヴィッチ監督は慎重。「山岸はメンバーには入れるが、先発は難しい。森崎和は約4ヶ月もの長期離脱した後だけに、慎重を期して今節のメンバー入りは見送った」と語った。
ただ、来週の鹿島戦に向けては「練習の状況次第で」という但し書き付きながら、指揮官は二人の本格復帰の可能性を示唆。代表のため離脱していたストヤノフは「パーフェクトな状態だ」と胸を張ってチームに合流し、明日の神戸との決戦に闘志を燃やす。?萩洋次郎や青山敏弘、森崎浩司らの状態も悪くない。佐藤寿人やミキッチ、中島の負傷が続いた広島だが、明るい光が存在することも事実だ。
常時5人以上の主力が離脱している今季の広島が、勝点33を積み重ねて9位を維持し、ヤマザキナビスコカップでは準決勝進出も果たすほどの健闘を見せている。ペトロヴィッチ監督が「奇跡」と呼ぶこの状況の原動力は、なんといっても若手の台頭だ。
今季、ボランチやストッパーとして19試合1325分の出場を果たしている21歳の横竹翔は、天皇杯・ヤマザキナビスコカップを含め9試合連続フル出場中。ヤマザキナビスコカップ・G大阪戦では正確なロングパスを供給して攻撃の起点となり、勝利に貢献。C大阪戦のロスタイム、決定的な飛び出しを見せた乾貴士に対して完璧なショルダータックルを敢行してボールを奪い、日本代表アタッカーにシュートすら打たせない。強い身体をベースにした冷静なプレーに「横竹はレギュラーと言っていい」とペトロヴィッチ監督も絶賛する。
もう一人、今季大きく飛躍した選手が、横竹の同期の3年目=丸谷拓也だ。昨年まで公式戦わずか2試合59分間しか出場していなかった丸谷だが、今年9月1日のG大阪戦で通算出場時間が450分を超えてプロA契約を締結。いかにこの1年で彼が急速に信頼を勝ち得たか、この数字が証明している。
昨年の浦和戦、リーグ戦初出場を果たした試合で何もできず、わずか14分間で途中交代。今季の磐田戦では敗戦に直結するミスも犯した。しかし丸谷は、その失敗を自分のプレーを高めるための燃料として使用。例えばC大阪戦の後半、途中出場した丸谷は落ち着いたプレーと運動量を見せつけ、リーグ最強を誇る破壊的な攻撃陣の封じ込めに貢献。一方で攻撃のスイッチを入れるクサビのパスの質も高く、指揮官も「レギュラーに近い」と信頼の言葉を口にする。
なぜ、経験のない彼らが、主力不在の穴を埋めているのか。それは、「僕たちは、自分たちのサッカーができれば勝てる」という西川周作の言葉に集約される。つまり彼らは、全員の身体にしみ込ませた「広島のサッカー」を拠り所にして、戦っている。苦しい時に戻る場所が明確にある。それが、若者から迷いを消しているのだ。
今の神戸にとって「J1残留」という大命題を達成するために必要なことも、「神戸のサッカー」という拠り所を探す作業だ。三浦俊也前監督は組織的な守備をベースに「神戸のサッカー」をつくろうと模索したが、道半ばに終わった。「守備は継続しつつ攻撃にもウェイトを置き、バランスのいいサッカーを」と和田昌裕新監督は語ったが、その構築には時間がかかるのは自明だろう。
ただ、「新監督の初戦は、選手たちの誰もがモチベーション高く戦ってくるもの」とペトロヴィッチ監督は警戒する。明日は中盤での起用が予想されるボッティをはじめ、ポポや朴康造、元広島のストライカー=茂木弘人も健在。エース・大久保嘉人がケガで不在とはいえ、16位という現状も信じがたいほどタレントはそろっている。
「相手のやりたいことにはまらないことが重要」とペトロヴィッチ監督は言う。しかし、その「やりたいこと」が何なのかを読み切ることが難しい。「自分たちのサッカー」模索中の神戸の選手たち同様、広島も「さぐりさぐり」の状況が続く。その状況を打破するものは何か。それは明日、答えが出る。
共に厳しい状況にある両チームだが、そういう時こそ選手たちは燃えるもの。「13時キックオフという暑さを熱さに変えた試合をお見せしたい」というペトロヴィッチ監督の言葉どおりの熱戦、必至である。
以上
2010.09.17 Reported by 中野和也
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