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【J2:第25節 福岡 vs 千葉】レポート:全ての人たちの力で勝ち取った「魂の勝利」。福岡が昇格争いを左右する大一番を制す。(10.09.13)

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9月12日(日) 2010 J2リーグ戦 第25節
福岡 2 - 1 千葉 (16:03/レベスタ/12,065人)
得点者:8' 青木良太(千葉)、81' 田中佑昌(福岡)、88' 城後寿(福岡)
スカパー!再放送 Ch181 9/14(火)前04:00〜
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バックスタンドに陣取るサポーターのチャントに合わせた手拍子が、スタンド全体に広がる。提示されたロスタイムは3分。しかし、時計は気にならない。雨のピッチの上を躍動する11人の雄姿をしっかりと目に焼き付けたい。彼らとともに残された時間を戦い抜く。誰もがそう思っていた。そして、そんな思いが大きな熱となってスタジアムを包む。
選手たちも気持ちは同じだったろう。逃げ切るなどと言う気持ちは微塵もない。ボールをコントロールし、隙あらばゴールを狙い、最後の瞬間まで全力で戦い抜いた。そして博多の森に鳴り響く長く大きなホイッスル。その瞬間、レベルファイブスタジアムは熱狂の渦に包まれた。昇格を左右する大一番を制した喜び。すべての力を出し尽くした達成感。そして何よりも、スタジアムにいるすべての人が一つになって戦い抜いた感動が広がる。それこそが、長い間、チームとサポーター、そして福岡に関わる全ての人たちが求めていたもの。長い低迷の時期を経て、この日福岡は、昇格を目標にするにふさわしいチームになった。

試合は千葉の先制点で始まった。時間は8分。ショートコーナーから展開したボールが、中央に上がってきていた青木良太のもとへ。この動きを福岡は見逃した。「誰が行くかが明確になっていなかった。ボールを見ていなかったことが一番の原因。ショートコーナーの時にボールの近くもマークすることが出来ていれば、あの失点はなかった」(末吉隼也)。完全フリーの状態から青木が狙い澄まして放ったシュートは、当然のように福岡のゴールネットに突き刺さった。
福岡も、25分、28分に末吉隼也、城後寿がそれぞれに決定的なシュートを放ったが、前半を支配していたのは千葉。高い位置から激しくプレッシャーをかけ、あるいは素早く帰陣して守備体型を整え、福岡にスペースを与えない。そして、攻めてはネットが落としたボールに2列目から飛び込む千葉らしい戦い方でチャンスを演出。福岡がやりたいサッカーを封じ込め、自分たちがやりたいサッカーを随所に見せて試合を進めた。前半のスコアは0−1。だが、両チームの力の差は得点以上のように感じられた。

後半に入ると福岡は前への姿勢を高めて反撃体制に入る。しかし、立ち上がりの時間帯を凌いだ千葉は、再びネットを中心にしてカウンター気味に反撃を繰り出して福岡に主導権を渡さない。守っておいてカウンターから2点目を狙うのは勝負の王道。福岡が前に出るシーンが増えたものの、やはりゲームをコントロールしていたのは千葉だった。
しかし、福岡には誰にも負けない力があった。それはスタジアムが一丸となって生み出す力。サポーターはただの一度も切らすことなく声援を送り、その気持ちがスタジアム全体に広がって大きな力を生む。その力を背に受けて、選手たちは前に出る姿勢を崩さない。この光景こそ、全員の力を合わせて目の前の1戦にすべてをかけて戦うという福岡の姿勢そのものだった。時間は刻々と過ぎていく。しかし焦りは生まれない。全員の力で絶対にゴールを奪う。そんな強い気持ちがレベルファイブスタジアムに生まれていた。

81分、その力がゴールを生む。CKのこぼれ球をファーサイドで拾ったのは田中佑昌。「トラップした瞬間、ゴールしか見ていなかった。ゴール前は人が多かったが気持ちで入れてやろうと思った」(田中佑昌)。その強い気持ちが千葉DFが伸ばした足を弾いてゴールネットを揺らした。
そして88分、感動の瞬間がやってくる。ボールをコントロールして前を向く中町公祐の視線がスペースへ向かって長い距離を走る城後の姿を捉えた。右足から送り出された柔らかなボールが城後の足元に届く。そのボールを右足でトラップした城後が冷静に左足を振りぬくと、スタジアムにいるすべての人の思いを乗せたボールが、鮮やかな弾道を描いてゴールネットへと吸い込まれた。目の前の相手に絶対に勝つという意思。全てのサポーターに感謝する気持ち。城後の復活を強く願うサポーターの想い。その瞬間に生まれた湧き上がるような歓声は、そうしたすべての気持ちを表すものだった。

さて、昇格争いの大一番と言われた試合は、激しい戦いの末、福岡が劇的な勝利を手に入れた。しかし、だからと言って福岡が何かを手に入れたわけでも、千葉が何かを失ったわけでもない。本当の昇格争いはここからがスタート。この日の結果が両チームに与える影響は少なくないが、それ以上に、これから続く試合を勝ち抜くことの重要性の方が高く、難しい。そして、城後は話す。
「本当に勝てて良かった。でも、次の試合で負けてしまったら今日の勝ちも意味がなくなってしまう。昇格を意識せずに、目の前の1試合、1試合を大事にしていきたい」
 まだまだ山場はいくつもある。それらの試合を変わらぬ姿勢で戦い抜くこと。その先に、福岡に関わる全ての人たちが望んでいるゴールが待っている。

以上

2010.09.13 Reported by 中倉一志
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