9月12日(日) 2010 J2リーグ戦 第25節
横浜FC 3 - 2 東京V (19:04/ニッパ球/4,948人)
得点者:13' カイオ(横浜FC)、20' 難波宏明(横浜FC)、55' 寺田紳一(横浜FC)、76' 高木善朗(東京V)、90' 高木俊幸(東京V)
スカパー!再放送 Ch185 9/13(月)後09:30〜
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横浜FC、東京Vともに好調同士の対決。前回対戦した5月30日(第15節)以降では、ともにリーグ戦では1敗しかしていない。しかし、東京Vは、出場停止で平本一樹、河野広貴、飯尾一慶という攻撃の核となる3人を欠いてこの試合に臨むこととなった。攻撃力への影響を考えれば、試合前に「東京Vは2点を取るのは難しい、2点取れれば100%勝てる。先制点が大事」と横浜FCの岸野靖之監督が考えるのも自然な考えである。確かに得点経過だけを追えば、「先制点を取り、その先制点をテコに追加点を挙げた横浜FCがしっかりと逃げ切った試合」と記すこともできる。しかし、試合内容に踏み込むと、東京Vの「地力の強さ」を思い知らされると同時に、横浜FCが「勝ち切るしたたかさ」という進化を見せた密度の濃い試合であった。
試合は、「ゲーム全体はうちがコントロールした」(東京V・川勝良一監督)というように、立ち上がりから東京Vが持ち前のパスワークで横浜FCを自陣に釘付けにする。横浜FCからすれば、ホームにも関わらず耐える時間帯を強いられるが、13分に訪れた最初のチャンスをモノにする。高地系治が蹴った右CKにカイオが中央で頭で合わせて先制点を挙げる。そして、「1点目が入ってしまって、少しおかしい空気が流れた」と富澤清太郎が振り返るように、この後の時間だけ、東京Vの攻撃の手が緩んでしまう。1点目が入った7分後、ゴールキックが東京VのDFラインとGKの間に入ったところに難波宏明が走り込むと、そのままキーパーを冷静に見ながらループシュートを決める。あっという間の2点目。「36試合のうち何回か躊躇することはある」と川勝監督は振り返るが、東京Vからすれば悔やみきれないミス、逆に横浜FCからすれば、してやったりの展開だった。ただし、横浜FCの選手が「特に前半は自分たちのペースでなかった」と口を揃えるように、それ以外の時間帯は東京Vがボールを支配。26分の柴崎晃誠のミドルシュート、40分の高木善朗のシュートはともにバーを叩き、前半のシュート自体も横浜FCが3本に対し、東京Vは8本。井上平の特徴を生かしたロングボールによる攻撃と細かなパスワークによる攻撃を織り交ぜ、横浜FCを翻弄した。
後半に入っても、東京Vペースは変わらず。53分には、ゴールはならなかったが右サイドを崩して井上平がシュートするシーンを演出し、反撃の狼煙を上げる。しかし、追加点は再び横浜FCに。55分、スローインをカイオがスルーすると、そのボールの処理を土屋征夫がクリアできず後ろにそらす。難波がそのボールに反応。中央の寺田紳一にクロスを送ると、寺田が完璧なトラップからのシュートを決める。これで、3-0と普通なら勝負があったという状態。しかし、ここから東京Vの地力が発揮される。57分の高木俊幸、70分に南秀仁を投入し圧力を強めると、76分に高木善がFKを見事に決め1点を返し、90分には高木俊が左サイドから切れ込んでから冷静なフェイントを入れながらシュートを突き刺す。後半のシュート数も、横浜FCは3本に対して東京Vは7本と、東京Vが攻撃する展開が続いた。しかし東京Vの反撃もここまで。「リードを頭に入れてサッカーした」(岸野監督)が3点目までは許さずにゲームを終え、3-2で横浜FCが勝利を飾った。
「ヴェルディの技術は高いと思った」(岸野監督)と敵将が褒めたように、サッカーのうまさという点で、この日の主役は東京Vの方だった。主力の3人が不在ながら、ボールを完全に支配。そして、残り15分での高木兄弟の2ゴール。勝点にこそつながらなかったが、「次につなげられるような意地」(川勝監督)は十分に見せつけた。川勝監督の先のコメントの通り、ミスについては切り替えが大事になるだろう。
横浜FCにとっては、ただ単にボールを支配された試合を抜け目なく勝ち抜いた、という以上の意味がある。横浜FCにとって忘れられない5月2日の甲府戦。3-0のリードから、後半ロスタイムに逆転負けを喫したゲーム。あの試合で横浜FC全体を覆っていたナイーブさは、この試合では見られなかった。東京Vにボールを支配され、攻め続けられながらも、守備陣は落ち着きを失うことはなかった。少なくとも、自ら崩れて得点を献上してしまうような雰囲気は微塵も見せなかった。「今何をするべきか。冷静に良いポジションを取ること」というハーフタイムの指示をしっかり守ることができるチームの成長と進化を感じられた。
東京Vの失点はミスがらみであったが、ゲーム自体の緊張感は好調同士の対決に見合うものだった。今節の他の試合の結果を見る限り、残り13節の3位争いは熾烈になることが予感される。まだまだ3位との勝点差はあるが、この2チームにはその争いに参加する資格があることが感じられた試合だった。
以上
2010.09.13 Reported by 松尾真一郎
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