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天皇杯第2回戦が行われ、2週間ぶりのJ2リーグ戦となる今節。横浜FC、東京Vともに5月から上昇気流に入って、チームの形がピッチに表現されはじめている。好調同士の対戦、そして昇格争いに可能性を残すチーム同士の対戦だけに、緊張感の高い試合となることは間違いない。
横浜FCは、リーグ戦の最近9試合で5勝3分1敗。天皇杯の富山戦でも勝利を挙げており、試合に勝つという自信が選手の中に芽生えて広がりつつある。一言で言えば、チームの完成度が上がっているということになるが、シーズン前からキーワードになっている「ゲーム中の声出し」という点で、2つの進化を果たしていることが、その状況を象徴している。柳沢将之は「声を出すことは、シーズン前から見て格段に増えた。勝つためにはどうしたら良いかが出ている」と、ピンチを未然に防ぐための声出しが勝点の原動力になっていると証言。一方で、寺田紳一は「声を出さなくても、コンビネーションが取れるようになっている」と、いわゆる「あうんの呼吸」ができはじめていることを述べている。声を掛けずとも自然と構築される連携とピンチの時にチームを助ける声出し、その2つがチームの中に定着してきている。
前回のリーグ戦（第23節）の愛媛戦は、守りを固める愛媛を打ち破ることができず残念なスコアレスドローに終わった。この試合で課題となったのは、カイオの生かし方。どうしてもボールを触るために低い位置まで下ってくるため、切り崩しやフィニッシュへの力が削がれてしまった。この2週間、チーム全体でこの問題点の改善に取り組み、一定の成果を挙げているようだ。「みんなでかなり言ったこともあり、下らなくなってきた。クサビが当たればボランチはサポートしやすい。富山戦のゴールもカイオに当ててホベルトが絡んだ結果」（八角剛史）と大きく改善しているようだ。この成果を、東京V戦でも見せられれば、チームに大きな弾みが付く。さらに、「難波とカイオが点を取れば100%勝てる。ただ、それは今まで2回しかない。もっと増やしたい」（岸野監督）と、指揮官の2トップに掛ける期待は大きい。
岸野監督がシーズン前から「ケツ（川勝良一監督）は、必ず良いチームを作ってくる」と述べていたように、東京Vもチームの完成度を上げている。リーグ戦の最近10試合で6勝3分1敗。激しい昇格争いを演じている甲府、柏から勝利を挙げており、特に柏には現時点で唯一の土を付けた大きな勝利だった。グループでボールを繋ぎながら相手を押し込み、攻撃の時間を増やす東京Vらしさが随所に見られるようになっている。さらに、守備でも穴が少ない。前節の岐阜戦でも、立ち上がりはペースを握れない時間もあり我慢を強いられたが、後半に地力を見せて途中出場の阿部拓馬の2ゴールで勝利を得た。
その東京Vにとって、この試合での心配は、平本一樹、河野広貴、飯尾一慶と主力の3人が出場停止となること。攻撃面を中心に試合に影響がないと言ったら嘘になるが、そこをカバーするのは代わりに出場する選手。岸野監督は「天皇杯で町田に敗れて、今のクラブの状況を考えると絶対に勝たないといけない試合。代わりに出る選手が『チームを救おう』と大きな力を出すことは十分にある」と、東京Vが持つ地力には警戒を緩めることはない。
岸野監督が予想する試合展開は「1点勝負」。出場停止で攻撃面にハンデを負う東京Vが勝利を陥れるためには、守備にも気を配りながら緻密に先制点を陥れることが重要になる。逆に、横浜FCが先制点を奪う展開となれば東京Vの勝点の可能性は遠のく。共に勝点3しか考えていない試合だけに、先制点をめぐる両監督の戦略・戦術も大きな見どころだ。東京V出身者ということで岸野監督と川勝監督の因縁も深い。岸野監督自身は「東京Vだから特別意識しない」と述べているが、「監督は絶対に負けたくない顔をしている」という選手の証言もあり、この対決にも注目したい。
日本は猛暑に悩まされ続けたが、今週に入り夜の風に少し秋の気配が混じりはじめてきている。19時から始まるナイトゲームは、これまでよりも観戦しやすいコンディションになるだろう。残り13、14試合となり、実りの秋に向けたスパートに入り始める。好調同士の熱戦を期待したい。
以上
2010.09.11 Reported by 松尾真一郎
