9月5日（日） 第90回天皇杯2回戦
柏 6 - 0 順大　（18:00／柏／2,969人）
得点者：25' 近藤 直也（柏）、28' 工藤 壮人（柏）、34' レアンドロ・ドミンゲス（柏）、39' 林 陵平（柏）、51' レアンドロ・ドミンゲス（柏）、90' 田中 順也（柏）
チケット情報 ｜天皇杯特集
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順天堂大の攻守の切り替えはとにかく素早かった。自陣深い位置でボールを奪った後は、リスクを冒すことを厭わずに数人が一気に柏陣内まで攻め上がる。「僕らは失うものは何もない。絶対に勝ってやろうと思った」（順天堂大・天野純）という臨界点に達したモチベーションがピッチ上にみなぎり、ほとばしった。

アマチュアチームや学生が対戦相手となる天皇杯の序盤戦は、Ｊクラブにとってメンタルコントロールやモチベーション高揚が非常に難しいとされるが、試合前に「リーグ戦と変わらなく挑む」と選手たちに告げたネルシーニョ監督はベストの布陣を組み、「天皇杯のタイトルを取りに行く」と鼓舞。柏はジャイアントキリングを敢行しようとする順天堂大のメンタリティに圧倒されることなく、ボールを奪い合う球際の激しさ、あるいは１対１の仕掛けなど、全力を挙げて対峙し、右の小林祐三、左の橋本和、両サイドバックの積極果敢なオーバーラップとレアンドロ ドミンゲス、大谷秀和、栗澤僚一の中盤が織りなすパスワークが、覆いかぶさるように順天堂大のアグレッシブな姿勢を凌駕し始めていった。

25分、右コーナーキックから近藤直也のヘッドが炸裂した。
「こういう試合は早い時間帯の得点が大事なので、ドゥーさん（近藤）が先制点を決めてくれたのが大きかった」（林陵平）。先制点で勢いづいた柏は、28分に橋本のクロスを受けた工藤壮人が鮮やかな反転ボレーを決めて２−０。さらに34分、レアンドロ ドミンゲスがＰＫを決め、39分にも林が左サイドを突破した橋本のクロスを受け、巧みにゴールへ流し込んだ。柏がリードを４点に広げ、前半を終えた。

順天堂大は９分と34分に日下部諒が２度の警告を受け、10人になってしまったことは痛かったが、それでも「うちの求めているところを追求しよう、より良いポジションを考えて、より速く攻撃していこうと指示しました」と青葉幸洋監督代行が語ったように、４点差で数的不利な状況でも挫けずに、自分たちが目指すものを貫いた姿勢は見事というべきである。「前半はレアンドロに中盤のゾーンをうまく使われてしまった」（天野）という部分に関しても、１人少ないながら囲んで奪うことを徹底し、柏の中盤に自由を与えまいと応戦した。後半スタートからピッチに上がった岡庭和輝もまた、「ボールを奪った後は裏を狙った」と、あくまでもゴールを奪いに行く強い意識を表現した。
この順天堂大の姿勢は奏功したと言っていいだろう。前半はまったくと言っていいほど見せ場のなかった柏ＧＫ菅野孝憲に、天野が得意とする左足のセットプレーやミドルシュートがフィスティングの場面を呼び、70分には４対４のカウンターから、岡庭、天野とつないで好機も生み出した。天野の左足シュートは惜しくも右へ逸れ、得点にこそ至らなかったが、順天堂大の求めるサッカーは随所に見られており、９月10日から開幕する関東大学リーグの後期に向けて、「良い材料が見つかった」と青葉監督代行は試合を評した。

また、柏は51分に栗澤を経由した右から左へのサイドチェンジから、橋本のクロスを林が落とし、レアンドロ ドミンゲスが決めた完璧な崩しによる５点目以降は、上記した順天堂大の粘りと、大きくリードを広げたことでペースダウンさせたため、ゲームの動き自体は前半よりも落ち着き、90分に昨年まで順天堂大に在籍していた田中順也の母校への“恩返しゴール”だけに留まった。ただ、８月の柏には今ひとつ波に乗りきれない停滞感があっただけに、リーグ戦を含めた林の４戦連続弾や、工藤の７試合ぶりのゴールなど、６発の快勝で９月の公式戦を良い形で入れたのは大きい。
そして次の天皇杯３回戦は、柏が待ち望んでいたＪ１チームとの対戦を迎えた（10/11＠ホームズ）。しかも１年前の天皇杯３回戦で敗れた神戸が相手とあって、柏の選手たちのモチベーションはすこぶる高い。

以上


2010.09.06 Reported by 鈴木潤