9月5日（日） 第90回天皇杯2回戦
町田 1 - 0 東京Ｖ　（19:00／西が丘／3,231人）
得点者：73' 山腰泰博（町田）
チケット情報 ｜天皇杯特集
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今年も天皇杯初戦突破はならなかった。
東京Vは、反省と課題、そして何より悔しさの強く残る敗戦となった。

JFL町田の攻勢が、J２東京Vにまさった。
試合前、東京V最大のストロングポイントである『堅守』を支えるDFのうち、柱である土屋征夫、富澤清太郎の両センターバックを欠くこと。そして、町田が「ものすごく縦に速く、中盤をあまり作らないで早く２トップに入れてくるので、押されたような感が特に前半の45分ぐらいはあるかもしれない」（川勝良一監督）などから、東京V指揮官は、「この先のリーグ戦を考えても、カードやケガで誰かが抜けた時など、必ずしも自分たちが主導権を握るいつも通りのサッカーができないこともある。そういう試合でどうやって勝ちをもってくるか」をテーマとして掲げていた。展開は予想通りだったが、残念ながら勝ちゲームにもっていく力は、今の東京Vにはまだついていなかったようだ。

「90分、今日は120分の可能性もあるという話をしたにもかかわらず、ちょっとハイペースだなと、正直思っておりました」（相馬直樹監督）、「『おいおい、90分間あるんだぞ。配分考えろ』とみんなに言った」（藤田泰成）など、自分たちでもオーバーペースを感じるほど、立ち上がりから町田が勢いよく攻めた。ボールを持ったら素早く２トップに入れ、全員がとにかく走ってこぼれ球に絡んでゴールを狙う、というスタイルは確立されていた。また、町田はプレスも早く厳しく、東京Vは中盤でなかなかボールを保持できない。思うようにボールが回らず、持ち前のパスワークからの攻撃ができずにいた。

さまざまな苛立ちから、前半のうちに退場者を出した東京Vは、それでも劣勢に耐え、前半を0-0で凌ぐ。後半、川勝監督は頭から高木俊幸、高木善朗の2人を一度に投入し、急造の3バック、3-4-2の布陣を指示。リスクを背負ってゴールを奪いに出た。「カウンターで、ドリブルを入れながら、とにかく仕掛けていこうと思った」という高木善の言葉通り、高木俊、高木善、平本一樹がそれぞれ得意のドリブルを混ぜながら、少しずつリズムを掴んでいった。だが、ゴール前まではボールが運べるようになっても、1人少ない中ではどうしてもゴール前に厚みがかけられず、単発な攻撃が目立ってしまう。結局、シュートも前後半合わせて６本に止まった。「前が機能しないとサッカーにならない」と平本は、責任を感じながら力無く語っていた。

試合が決したのは後半28分だった。何度もの決定的場面に、東京Vは懸命にボールを弾き返していたが、防いでも防いでも、クリアボールは全て町田選手の元へ渡る。苦しい展開の連続の末、ついに途中出場の山腰泰博に決められた。

リードを許すも、「追いつける雰囲気はあった」と、高橋祥平は反撃ムードを感じていたというが、町田の体力・集中力も最後まで衰えることはなく、東京Vの追撃はならなかった。

どんなに相手との力の差がなく、いかなる試合状況であっても、JFLとJ２というカテゴリーの違いにプライドをもたなければいけない。「プロとして、絶対に負けてはいけない試合だった」と高木善は、J２クラブの選手として深く反省し、「昇格のかかるリーグ戦では、もう絶対に負けてはいけない」と厳しい表情で話した。

勝者の町田だが、「いつもと同じような、非常に嫌な展開」と相馬監督が語るように、自分たちが主導権を握っている時間帯で点を取りきれないフィニッシュの甘さには課題が残ったようだ。

ただ、3日前、町田には『Jリーグ入会予備審査』の結果、クラブの最大の目標である来季のJリーグ入りが不許可であるという通達を受けたと、公式発表があった。この現実を受け、相馬監督は「選手たちが表現できるのは、ピッチだけです。天皇杯は、たくさんの人たちに見てもらえる機会。自分たちの持っているものを全て出して、ゼルビアという姿、ゼルビアの誇りを見てもらおうと言って送り出しました」と語った。その町田ゼルビアの思いは、少なくとも西が丘でこの試合を観た人には、十分伝わったはずである。「町田は、J１とやっても互角の戦いをするチームだと思います」という平本と同じ思いを抱いた人は、多いのではないだろうか。

町田は次戦でJ１新潟と対戦する。ぜひ東京Vの分も、J１チーム相手に思い切りチャレンジし、町田ゼルビアのサッカーを披露して欲しいと願う。

以上

2010.09.06 Reported by 上岡真里江