9月5日(日) 第90回天皇杯2回戦
鳥栖 10 - 0 熊学高 (18:00/ベアスタ/1,809人)
得点者:16' 池田 圭(鳥栖)、26' 衛藤 裕(鳥栖)、28' 藤田 直之(鳥栖)、33' 萬代 宏樹(鳥栖)、45' 池田 圭(鳥栖)、66' 山瀬 幸宏(鳥栖)、67' 豊田 陽平(鳥栖)、75' 豊田 陽平(鳥栖)、89' 山瀬 幸宏(鳥栖)、90'+2 豊田 陽平(鳥栖)
チケット情報 |天皇杯特集
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日本国中、猛暑に襲われてサッカーをするのも観るのも大変つらいはずだ。8月28日の13時から大学生相手に90分間を戦い、2−1と勝利を収めた。翌29日13時から、高校生を相手に延長戦とPK戦までもつれたが、熊本県代表の座を勝ち取った。それから、5日後の9月3日18時から、佐賀県代表のチームを破って2回戦にコマを進め、中一日でプロを相手に天皇杯の2回戦を戦うことになった。
実に、9日日間の間に第90回天皇杯全日本サッカー選手権大会の試合を4試合もこなすことになった。いくら若く元気の良い高校生とはいえ、酷な日程であることは誰でもわかることである。しかし、天皇杯2回戦を戦い終えた彼ら高校生には、清々しい笑みが浮かんでいた。彼らとは、熊本県代表の熊本学園大学付属高校サッカー部のことである。まずは、90分間を走り抜いた体力と最後までゴールを狙い続けた気力に最大の賛辞を贈りたい。
中でも、FW溝口祐真君は果敢に攻める姿勢を見せ続けた。DFに身体を入れられて倒されてもすぐに起き上がりボールを追いかけた。68m.のピッチ幅を有効に使おうとサイドに流れては、ボールを引き出した。彼から放たれたシュートはわずかに2本(手元の集計では3本だが)。しかし、そのいずれもが中盤でドリブルを仕掛けて相手選手を寄せた中でのパス交換から生まれたものだった。溝口祐真君だけではない。DF仲道康平君は、好機とみると前線まで攻め上がりシュートを放った。終了間際に放ったシュートは惜しくもバーに跳ね返されたが、ゴールを狙う積極的なプレースタイルが招いたシュートである。MF橋本隆治君も上田太一君も流動的に動きながらボールを相手ゴールに近づけてチャンスメイクの機会をうかがい続けていた。
これが、試合開始直後のことなら、若さゆえの勢いと済まされたかもしれないが、この過酷な日程のなかでの試合終了20分くらい前からの猛攻である。このゴールに向かう姿勢に、ただただ感服した次第である。試合終了と同時に湧き上がった大きな拍手と健闘を称える歓声は、間違いなく彼らのサッカーにかける姿勢に贈られたものである。
こんな高校生の挑戦を受けるチームは、いくらプロとて手を抜いては失礼に当たるし、真剣勝負の世界では、何が起きるかわからない。第90回天皇杯の初戦となったサガン鳥栖も、試合開始のホイッスルから、熊本学園大学付属高校のゴールに攻め込んだ。終わってみれば、10−0との圧勝だった。FW池田圭とMF山瀬幸宏が2ゴールずつ。しかも、山瀬幸宏にいたっては、自身初の公式戦ヘディングゴールのおまけもついている。MF衛藤裕と藤田直之は、相手GKの位置を冷静に見て取ってのループシュートで決めた。途中出場のFW豊田陽平は、27分間のプレーでシュート3本をすべてゴールに叩き込んだ。いずれも、一切の手を抜かないプロらしいゴールであった。
松本監督は試合前に「プロの面子にかけて、相手にサッカーをさせるな」と指示を出していた。監督はじめスタッフも選手たちも、受身ではなく攻める姿勢を持って試合に臨んだ結果なのである。
そこまで、鳥栖を真剣にさせた伏線は、1回戦の佐賀大学対熊本学園大学付属高校の一戦にあった。この試合で溝口祐真君(熊本学園大学付属高校)は、9本のシュートを放っている。チーム全体で放ったシュートの半数を彼一人で放っている。彼以外にもMFとFWで8本、実に前線の選手がどこからでも積極的にゴールを狙うサッカーを行っていたからである。この試合を見た鳥栖のスタッフは、昨年度の天皇杯初戦の苦い思い出を繰り返すまいと、試合開始から熊本学園大学付属高校に「サッカーをさせまい」と臨んだことが理解できる。
試合後にGK室拓哉が語ってくれた。「俺らだって、どんな強いチームに当たっても2回や3回のチャンスは必ずある。それが、バルセロナ相手でも絶対に2・3回のチャンスを作ることができる。それがサッカー。今日の高校生たちも、その思いがあったはず。それが、終了間際のバーを叩いたシュートにつながり、最後まで足が止まらなかった要因」。室拓哉が高校生時代(初芝橋本高)にFC東京と試合を行い、0−6で敗れた経験があるかあらこそ、彼らの気持ちを代弁できるのだろう。試合後に、熊本学園大学付属高校の応援団に挨拶に行ったのは、相手へのリスペクト以外に何も無い。もちろん、熊本学園大学付属高校の選手たちも、メインスタンドやゴール裏の鳥栖のサポーターに挨拶に来ていた。互いに指示されるわけでもなく、自然の流れでサポーターと相手チームにリスペクトできる試合は、天皇杯ならではの光景かもしれない。ベストアメニティスタジアムで行われた第90回天皇杯全日本サッカー選手権大会2回戦は、結果以上にサッカーの面白さと素晴らしさを伝えてくれた試合であった。
試合終了のホイッスルがなると、一番最初に行うことは、その試合の結果を受け入れることである。嬉しい結果でも悲しい結果でも、素直に受け入れることで試合は成立する。そして、新たな課題を見つけ、次の目標到達のために気持ちを切り替えることになる。違うカテゴリーでも戦うことが出来るサッカーは、どんな結果でも受け入れることで選手とサポーターが一体になれるし、次の目標を共有できる。
熊本学園大学付属高校のサッカー部の選手たちは、この結果と経験を後輩や子供たちに伝えてサッカーファミリーを増やして欲しい。そして、サッカーを愛する私たちも、この一戦の素晴らしさを語り継いでいこう。
サッカーは、すべての人へのリスペクトを持って試合終了となるスポーツである。
以上
2010.09.06 Reported by サカクラゲン
J’s GOALニュース
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