9月5日（日） 第90回天皇杯2回戦
清水 2 - 0 Honda　（19:00／アウスタ／3,739人）
得点者：74' 原 一樹（清水）、90'+2 長沢 駿（清水）
チケット情報 ｜天皇杯特集
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「ホンダが中1日というスケジュールじゃなかったら、実際どんな結果になったのかわからないゲームだった」。長谷川監督の試合後の言葉がリップサービスでないことは、試合を観ていた人なら実感として理解できただろう。それほど清水にとっては、ハラハラとさせられる試合内容だった。

清水のスタメンは、水曜日のナビスコカップ・FC東京戦から、右サイドバック・辻尾真二以外の10人を入れ替えた形。一方、ホンダFCのほうは、金曜日の1回戦からGKも含めて6人を変更。逆に言えば、フィールドプレイヤーの半分は、中1日で連続して先発という状況だった。
それでも前半を支配したのは、フレッシュな選手が多い清水ではなかった。立ち上がりこそ、好調な大前元紀が切り込み隊長役となって清水が積極的に仕掛け、ホンダにプレッシャーを与えようとしたが、ホンダも前線からハードにプレスをかけて、清水に落ち着いてゲームを作る余裕を与えない。そのうちに清水がホンダのコレクティブな守りを攻めあぐねるシーンが目立ち始め、逆にホンダのほうは徐々にボールを回せるようになってくる。そしてホンダは遠めからでも積極的なシュートを放ち、14分にエースの新田純也がミドルシュートをバーに当てたあたりから、手応えとペースをはっきりとつかんでいった。
そうなってくると、不慣れなメンバーによる清水の連携ミスも目立ち始め、DFラインでボールを回しても、なかなか前にパスを出せないシーンが多くなってきた。この状況を見て長谷川監督は、20分過ぎあたりでスタートの4-3-3から4-4-2へとシステムの変更を決断（その狙いは監督コメント参照）。永井雄一郎と長沢駿の2トップ、杉山浩太と山本真希の2ボランチで、リズムの改善を図った。
しかし、それでもホンダのハードワークとタイトな守りの前では、思うように前線でタメを作ることができず、流れを奪い返すことができない。前半は決定機の質でも回数でもホンダが上回ったが、それを決めきることができず0-0で折り返したことは、清水にとっては幸いだった。

後半も、初めは清水がホンダの守備ブロックをなかなか攻略できない状況が続いていたが、中1日ながら前半から飛ばしてきた影響が、徐々にホンダの選手たちの動きに表われ始めた。後半の15分前後という早い時間帯からカウンターの応酬が目立ち始めたのも、その表われと言えるだろう。清水のカウンター攻撃に対して、明らかについていくのが苦しそうな選手が多くなってきた。
そこで畳みかけるように長谷川監督は、18分にホンダにとってもっともイヤなカードを切っていった。スピードと突破力のあるFW・原一樹の投入だ。これでホンダはさらにDFラインの押し上げが難しくなり、選手間の距離が前後に間延びして苦しくなっていく。
しかし、それでも21分に新田がゴール前への鋭い飛び込みで惜しいシュートを放つなど、ホンダは単発ながらチャンスも作っていた。だが、ついに29分、長沢の裏への飛び出しからクロスを原に押し込まれ、清水に先制点を奪われてしまう。原のゴール前への鋭い飛び出しについていける選手は、この時点では残っていなかった。
逆に清水にとっては、狙いが見事にはまった先制ゴール。これでモヤモヤとした雰囲気もかなり解消され、流れは一気に清水に傾いた。しかし、それでもホンダは粘った。チャンスの数では清水が上回ったものの、最後の力を振り絞って攻撃を仕掛け、40分には交代出場の吉村和紘が左から素晴らしいミドルシュートを放つが、これもバーに当たってゴールならず。ホンダの良いシュートが2本バーに当たったことも、勝負の行方を大きく左右した。

それでも、最後は清水がJ1の意地を見せる。ホンダの反撃をきっちりと抑えながら、アディショナルタイムの47分に大前のパスから長沢が裏に抜け出して強烈な左足シュートを決め、最後の最後で追加点。そこから2分後にタイムアップとなり、清水が2-0で3回戦進出を決めた。
ただし、後半にホンダの足が止まっていなかったら、あるいは前半のうちにホンダが先制点を奪っていたら、本当にどうなっていたかわからないようなゲームでもあった。

以上

2010.09.06 Reported by 前島芳雄