9月5日（日） 第90回天皇杯2回戦
熊本 2 - 1 愛媛　（17:00／熊本／2,727人）
得点者：23' 松橋 章太（熊本）、30' 松橋 章太（熊本）、71' 杉浦　恭平（愛媛）
チケット情報 ｜天皇杯特集
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第４の審判が掲示したロスタイムは３分。少なくともあと１点奪わなければ敗退となる愛媛は、前線に人数をかけて猛攻を仕掛ける。終盤には交代出場のジョジマールが立て続けにシュートを放つが、枠を捉えられなかったり熊本DF陣にブロックされたりでネットを揺らせない。
結果、リーグで好調を維持している熊本が３回戦に進出することになったが、高木琢也監督も「助けてもらったなという印象がある」と振り返った通り、90分間を通して見れば内容は拮抗していた。公式記録によれば、シュート数は勝った熊本が８本だったのに対し、敗れた愛媛は11本となっている。

立ち上がりこそお互いに長めのボールを入れて相手のラインを下げさせるような時間があったが、10分頃からは熊本が押し込む展開に。熊本はこれまで、前が動いてもなかなかボールが出て来ないケースが目立っていたが、この試合では２トップのファビオと松橋章太の動き出しに合わせ、出し手がタイミング良くボールを供給。それだけにとどまらず、２人が動いて作るスペースに宇留野純と平木良樹の両サイドMFが流動的に顔を出して、愛媛の守備網を崩しにかかった。後方からのフィードや大きなサイドチェンジ、３人以上が絡んでの崩しなど、状況に応じたボールの動かし方を実践。守備でも大きくバランスを崩すことなく、また球際でもタイトに身体を寄せるなど、攻守に渡ってアグレッシブな戦いぶりで主導権を握る。

一方の愛媛は、守備の対応が立ち上がりからルーズで、ボールを奪われてからのアプローチも緩く、DFラインとボランチの間のスペースで熊本の選手をフリーにすることが少なくなかった。バルバリッチ監督は試合後の会見（ /jsgoal_archive/jsgoal/detail.php?press_code=00106419 ）でポジショニングの悪さについて触れているが、ラインを作って中央を固めてはいても、人に対するマークが甘く、前半に関しては熊本に自由にやらせ過ぎた。加えてDF陣の連係、GK山本浩正との連係面でミスを頻発。23分、30分の松橋のゴールはいずれもミスを発端にしたものだが、それ以外にも危ない場面はあり、前半に限っては熊本の一方的なゲームだったと言える。

しかしながら後半に入ると流れは一転、完全に愛媛ペースとなる。前半は横に動かすパスが多く、バイタルエリアに入ってからのテンポが上がらなかった愛媛だが、30分過ぎからは石井謙伍がフリーでボールに絡む場面を何度か作っていた。後半の立ち上がりから、そうした石井の裏を狙う動きに対して、シンプルな縦パスが入る場面が増え始める。バルバリッチ監督が59分に内田健太に代えてジョジマール、さらに64分に東浩史に替えて持留新作を投入すると、前線に流動性が生まれて愛媛の攻撃がさらに活性化。果たして71分、ジョジマールから右に開くと、これを受けた関根永悟が前に運んでファーサイドへクロス。ニアに入って来た石井が熊本DFを引っ張り、フリーで飛び込んだ杉浦恭平が奇麗なダイビングヘッドを突き刺した。

反撃はこの１点に留まったが、終盤には福田健二を入れて４−３−３にした愛媛がその後も圧倒。南雄太からの長いキックをファビオが頭ですらし、松橋が回り込んだ82分の場面を除き、熊本にシュートを打つことすら許さなかった。
それだけに、愛媛は前半の２失点が悔やまれる。このゲームにあたっては、どれだけ普段通りの戦い方ができるかが焦点になるとプレビューで書いたが、早い時間帯にミスから失点したことでチーム全体が動揺し、「精神的にも落ち込んで、本来の姿に戻るのに時間がかかってしまった」（バルバリッチ監督）。

逆に熊本も、前半の戦い方が非常に安定していたからこそ、２点リードして以降の戦い方や後半の入り、さらには草津戦と同じような形での失点など、「修正点もたくさん出た」（福王忠世）一戦となった。対戦相手が鹿島に決まった３回戦まで１か月間あるが、それまでに５試合続くリーグ戦でしっかりと修正し、昇格戦線に生き残らなくてはならない。それが同時に、初めて迎えるJ１クラブとの真剣勝負への試金石となる。

以上


2010.09.06 Reported by 井芹貴志