9月5日（日） 第90回天皇杯2回戦
水戸 4 - 2 佐川滋　（16:01／笠松／1,355人）
得点者：1' 御給匠（佐川滋）、56' 岡村 政幸（佐川滋）、65' 大和田 真史（水戸）、80' 島田 祐輝（水戸）、83' 片山 真人（水戸）、90'+1 保崎 淳（水戸）
チケット情報 ｜天皇杯特集
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木山隆之監督の絶妙な采配が水戸に勝利を呼び込んだ。1対2とビハインドを背負った71分、前線に中山悟志を投入すると、システムを4−1−3−2に変更。1ボランチに大橋正博を置き、それまで右サイドバックだった保崎淳を右MFに上げ、右MFだった小池純輝を右サイドバックに下げる。そして片山真人と中山の長身2トップの下に常盤聡を入れたのである。「2トップにロングボールを徹底的に入れた」（森賢一）。そのボールのこぼれ球を常盤と保崎がことごとく拾い、攻撃に厚みをつけることとなった。それまでもロングボールを徹底して蹴り込んでいた水戸だが、大橋の位置を下げたことにより、大橋がサイドに展開してサイドから2トップに放り込む展開が増えることとなった。それが相手の脅威となった。80分に右サイド保崎からのクロスを走り込んだ島田祐輝のヘディングシュートがゴールに突き刺さり、同点に追いつくと、勢いに乗った水戸はさらに83分には左サイド島田のロングスローがゴール前の混戦を生み、そして保崎のシュートのこぼれ球を片山が押し込んで逆転に成功。そして90＋１分には大橋のスルーパスから獲得したPKを保崎が蹴り込み、試合を決定づける4点目を入れたのであった。木山監督の采配が試合のすう勢を劇的に変えることとなったのだ。

水戸にとって前半から苦しい展開が続いた。守備陣の集中力の欠如からわずか40秒で失点すると、その後もSAGAWA SHIGAの流麗なパスワークに翻弄される展開。どちらがJのチームだか分からなくなるぐらい水戸は防戦一方の展開が続いた。後半に水戸は4−3−3から4−4−2に変え、中盤の守備を立て直そうとするものの、SAGAWA SHIGA FCのパスサッカーを食い止めることができず、65分に左サイドを簡単に破られて追加点を許してしまう。「正直焦っていた」と大和田真史が振り返るように、絶体絶命のピンチに陥った。

だが、そこから水戸は意地を見せることとなった。65分に左サイドからの折り返しを大和田真史が押し込み、1点差にすると、6分後に木山監督の勝利の采配が下されることとなったのだ。「2点取られると思っていなかったけど、そこから立て直せたことはよかった。一歩踏み出して勢いに乗ることができた」と森が語るように、崖っぷちに立たされながらもチーム全体が最後までファイティングスピリットを持ち続けたことが勝利につながったのだ。それこそ大分戦で証明した水戸の原点である。「システムが変わって、ロングボールを蹴るというようにやることが明確になっている。それは監督が決めたことなので、チームとしてやり続けるだけ」と森は言う。第24節鳥栖戦以降、中盤を省略して前へボールを送るシンプルなサッカーで勝負にこだわることを決めた水戸。それがチーム全体に浸透しており、泥臭く戦うことができている。とにかく今できることを100％やって、勝利をつかむために戦う。その結果、下のカテゴリーのチームに2連敗を喫している悪しき流れを断ってみせたのである。水戸は満を持して3回戦へ挑む。

敗れたものの、SAGAWA SHIGAも存分に力を発揮した。中盤でのパスワークはJ2のチームと遜色なく、水戸と比べるとはるかに上であった。1つのボールに対して関わっている人数が多く、ボールを持った時に選択肢が豊富で水戸守備陣はターゲットを絞ることができなかった。特に前半は水戸の1ボランチの横で起点を作り、そこからサイドに展開して次々にチャンスを作り出していた。惜しむらくは終盤に運動量が落ちたことと水戸のパワープレーを跳ね返すパワーが足りなかったこと。「水戸のパワープレーに対応できなかった」とこの試合の先制点を挙げた御給匠が悔やむように、内容では勝っておきながら、水戸のパワーに押される形で失点を重ねることとなってしまった。「2点取って4点取られるゲームをやってしまって残念に思います」。中口雅史監督は唇を噛みしめた。この悔しさを来週から再開するリーグ戦にぶつけたい。

以上

2010.09.06 Reported by 佐藤拓也