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【J2:第21節 鳥栖 vs 千葉】レポート:“個”の力で打破しようと試みた鳥栖。チーム力で攻め続けた千葉。白熱した試合も、終わってみれば勝点差は縮まらず、互いに悔しさのみが残った一戦。(10.08.09)

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8月8日(日) 2010 J2リーグ戦 第21節
鳥栖 1 - 1 千葉 (19:04/ベアスタ/7,606人)
得点者:43' オウンゴ−ル(千葉)、70' 藤田直之(鳥栖)
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この試合の持つ意味を、両チームとも選手のプレーで示してくれた。
5位・鳥栖は、勝てば昇格圏内に勝点差が“2”となり、残りの試合において自力で“夢をつかむ”可能性を残していた。しかし、敗れてしまえばその差は“8”となり、上位チームの結果如何では“夢が遠のいてしまう”ところだった。
3位・千葉とて順位こそ違え、似た状況であることには変わりは無い。勝てば2位への勝点差が“2”となる可能性もあり、敗れれば猛追してきている4位以降のチームと混戦となるところだった。
選手だけでなく、チームスタッフもサポーターも一丸となって90分間を戦った。
そして、互いに得たのは最低限の結果ともいえる“勝点1”だった。

『内容は良かったが、結果が伴わない試合』では、誰も納得しない試合だった。
『内容はともあれ、結果がすべて』の試合だった。
そして、互いに得たのは最低限の結果ともいえる“勝点1”だった。
“勝点1ずつを分け合う”結果を導き出したのは、この試合においては、両チームのセンターバックの健闘によるところが大きい。
鳥栖の木谷公亮は、200試合以上の出場経験を持つ頼れる存在である。彼の豊富な経験は、若い鳥栖にあってはDFラインを安定させる貴重なものであり、畳み掛ける攻撃を仕掛ける千葉に対しては、“ヨミ”で危険の目を摘むことができる。結果、14本のシュートを浴びながらも、“千葉には得点を許さなかった”。深井正樹のシュートには体を投げ出しブロックした。ネットの高い打点には身体を寄せて自由を奪った。J2最多得点を誇る千葉の強力攻撃陣に最後まで得点を許すことは無かった。
しかし、千葉には得点1が記録されている。この得点は、43分に彼自身が献上したオウンゴールであるが、このシーンを除けば、この日の木谷を誰も攻めることはできないだろう。

前半をリードして終えたときの千葉は、前節までは6勝2分と圧倒的な強さを見せていた。前節の大分戦(第20節フクアリ)でも、開始2分に谷澤達也のゴールで先制すると、5得点無失点とその強力な攻撃力を見せつけている。
そして、その攻撃力を後方から支えているのがセンターバック、この試合であればマーク ミリガンと茶野隆行であった。鳥栖のFW豊田陽平へのロングボールを、自由にコントロールさせず“攻撃の芽を摘み続けた”。前線からの早いプレスに連動して、DFラインを高く上げ続けボールの出し所を窮屈にし、足元に入るボールには早いアプローチでゴールへ向かうコントロールを奪い続けた。
しかし、鳥栖には得点1が記録されている。この得点は、鳥栖の右サイドからの展開されたロングボールをMF金民友が頭で折り返し、藤田直之が左足でゴール隅に決めたものである。追いつかれはしたものの、このシーンを除けば一時期の千葉の不安定な守備を忘れさせてしまう堅さと強さを見せてくれた。
84分に2枚目の警告を受けてマーク ミリガンが退場となったが、残った選手が力と気力を振り絞り数的不利な状況を感じさせず攻め続けた“チーム力”は、これからの昇格争いを面白くしてくれるに違いない。

サッカーには、“勝利のためのセオリーは存在しない”。
クラブの存在意義や運営方法、取り巻く環境などの違いや監督・スタッフのサッカー観でチーム作りは大きく左右される。
応援する側から見ると、“誇らしくもあり、悔しくもある”事だろう。しかし、私たちの街のサッカークラブに対する思いは普遍であり、目指すものは常に高いところにある。これは、選手の入れ替わりが激しいサッカーではあるが、サポーターの根底には“地域愛”があり、サッカーの持つ魅力のひとつでもある。
今節の鳥栖の先発メンバーは、GK赤星拓以外、昨季は鳥栖に名前が無かった選手たちである。交代で入った3名の選手も同様である。MF朴庭秀(パク ジョンス)は6月に追加登録されて4試合目の出場であり、黒木晃平は3試合目の出場で、スタメンは自身初の経験となった。MF金浩男とFW野田隆之介はチーム合流直後の試合出場だった。連携やコミュニケーションを不安視する声もあるだろう。しかし、個々の選手の特徴を見ると、今節の千葉に対する鳥栖の戦術が見えてくる。
朴庭秀は、縦横無尽に動いて回る千葉の攻撃陣に対して、その運動量とフィジカルは有効だった。黒木晃平も、中盤での展開やドリブルで、千葉の中盤を翻弄するところを見せた。金浩男と野田隆之介も、高さと強さを誇る千葉DFに果敢に勝負を挑んだ。シュートもCKも数字の上では千葉が上回ったが、鳥栖の選手たちは、個の力を存分に出すことで、千葉が自ら得点をあげることを最後まで許さなかった。
「流れの中で得点をあげていれば、(試合結果は)変わっていたかもしれない」と試合を振り返った江尻篤彦監督(千葉)の言葉は、本心に違いない。

今節は、『内容は良かったが、結果が伴わない試合』だったかもしれない。
『内容はともあれ、結果がすべて』のはずだったが、引き分けに終わってしまった。
お互いに悔しさは残っただろうが、2010年残りのシーズンの戦い方を明確に見せた試合でもあり、可能性を感じさせてくれた試合でもあった。

サッカーでは、時折『内容を問わずに結果に満足する』試合を見ることがある。
いや、『結果だけを見て、敢えて内容を見ないことにする』試合なのかもしれない。
それでも、『結果がすべてのプロスポーツ』の世界であるから、『勝たないといけない』のである。
でも、その結果に至るまでの過程とその結果が残した可能性を誰も批判はできない。
そこは、選手たちの隠れた努力と精進によるところであり、試合以上に苦しい(はずの)鍛錬を積んでいるからである。
サッカーは、試合で見る現象に隠されたドラマにも、魅力が詰まっている。

以上


2010.08.09 Reported by サカクラゲン
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