今日の試合速報

ACLE MD2
ACLE MD2

J’s GOALニュース

一覧へ

【J1:第17節 広島 vs G大阪】レポート:サイドを制するものは、試合も制す。広島の右サイドを制圧したG大阪が、歓喜の雄叫びをあげる。(10.08.08)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
8月7日(土) 2010 J1リーグ戦 第17節
広島 0 - 2 G大阪 (19:03/広島ビ/18,069人)
得点者:22' 橋本英郎(G大阪)、26' オウンゴ−ル(G大阪)
スカパー!再放送 Ch181 8/10(火)深00:00〜
☆ついに1等的中サポ登場!クラブ対抗totoリーグ投票受付中
----------
ペトロヴィッチ監督は、清水航平というリーグ戦初先発の若者に、勝負を懸けた。
オーストリアキャンプで主に左サイドとトップ下で起用されていた清水は、4試合で1得点3アシストを記録するなど強烈なインパクトを残した。スピードにあふれたドリブルと両足からの強烈なシュートを持つこのアタッカーを指揮官は右サイドで起用、そこから崩して得点を取ろうとプランしたのである。

G大阪を分析した指揮官は「彼らの左サイドにスペースができる」と見た。本来ならば、山岸智やミキッチという経験のある選手に攻略を任せたいところだが、二人ともケガのため不在。練習では森脇良太を右サイドに入れ、その後ろに横竹翔を使ってみたが、攻撃面での厚みに手応えを感じなかった。それも、清水抜擢の要因である。
右サイドが清水にとって不慣れなポジションであることは、指揮官もわかっている。精神的な重圧ものしかかるし、彼の守備も不安材料だ。しかしそんなリスクを承知で、指揮官は清水の抜擢を決意する。

試合前、彼は清水にこんな言葉をかけて送り出す。
「私が後ろ盾になって、君を支える。何も心配することはないんだ」
その言葉に勇気づけられた清水は、ドリブルで縦に切り込み、対面の安田理大に敢然と勝負を挑んだ。2分、5分、6分。清水の積極的な仕掛けは続く。「清水選手のスタイルは、情報になかった。開始直後は彼の持ち味を出せさてしまった」とG大阪・西野朗監督が語る。確かにG大阪は明らかに清水のプレーに戸惑っていた。

8分、森崎浩司からの絶妙なパスを清水はトラップミス。このたった一つの何気ないミスから、リズムはゆっくりと清水から安田へと移り始める。

13分、安田のドリブル。クロスはシュートにつながらなかったが、彼の意識は「受け」から「仕掛け」に変わった。15分、18分。安田は縦に仕掛ける。清水も対応するが、深い位置までボールを運ばれてしまう。
ここが勝負どころだった。G大阪は清水の守備の甘さを見切り、そこを徹底してついてきた。ただそれは、広島の狙いである「左サイドのスペース」が広がったことにもつながる。勢いで突き破るか、それとも我慢して逆をとるか。両チームの運命はこの攻防が握っていた。

結果からすれば、サイド勝負に勝ったのはG大阪だ。22分、そこまで縦方向のプレーを選択していた安田がアーリークロスを狙う。その判断が広島の虚をつき、広島の守備陣は思わずボールウォッチ。そのスキをついた橋本英郎がフリーで押し込んだ。「(清水)航平は、身体を張ってよく対応していた。失点した要因は、ハシさんをフリーにしてしまったこと」と佐藤寿人は指摘する。
その4分後、安田がシンプルに縦パスを入れ、対応してきた清水を置き去りにした。できたスペースに飛び出した平井将生が鋭いドリブルを仕掛け、森脇との1対1を制し、中に切れ込んだ。「あそこで我慢強く対応できていれば」と森脇が悔やむように、ここは仕掛けた平井の勝ち。結果は槙野智章のオウンゴールだが、「マキ(槙野)が触らなければ、ファーにいた選手(イ・グノ)に決められていた」(佐藤)。広島にとって、必然の失点だった。

後半、広島は右サイドに張り出した森脇に森崎浩やストヤノフがタイミングのいいパスを供給、安田の裏のスペースを使って森脇や桑田慎一朗が決定的なチャンスをつかんだ。前半とはうってかわり、広島がサイドの主導権を握った。だが中澤聡太と高木和道、二人のセンターバックの集中は切れない。シュートをブロックし、身体を寄せてシュートミスを誘った。「この試合はサイドの攻防が鍵だった。突けたのも、突かれたのも、ポイントはサイド」と西野監督は語る。名将の言葉どおり、サイドの攻防で主導権を握った時に得点を奪ったG大阪と奪えなかった広島との差が、勝敗を分けた。

「敗戦の責任は、私にある」
ペトロヴィッチ監督は、素直に認めた。だが、清水の起用について記者が質問した時、彼は言葉を激しく重ねた。
「清水のサイドから失点したが、それは彼だけの責任ではない。清水は自分のできることをやってくれた。一度くらい上手くいかなくても、すぐに切り捨てることなんてできない。私はこれからも、彼と共に戦っていく」
この「後ろ盾」は4年前のG大阪戦で、失点に直結するミスを犯した青山敏弘をその後も我慢して使い続け、チームの大黒柱に育てた実績がある。清水航平がこの日の屈辱を糧として前に向かえば、ペトロヴィッチ監督のサポートを受けて成長し、再び安田との対決を迎える日が来るだろう。その時、清水がリベンジを果たすか、それとも安田が挑戦を跳ね返すか。さらにレベルアップしたぶつかり合いが、Jのピッチで再現される日を楽しみに待ちたい。

以上

2010.08.08 Reported by 中野和也
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2024/10/10(木) 12:00 Jリーグ審判レポート(シンレポ!)ホイッスル #7「VARは見逃さなかった!退場になるファウルとは?」