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前節の徳島は柏相手に充実の戦い。途切れることのないハードワークを攻守両面に見せ、特に後半は完全に運動量で上回って逆転まであとほんの僅かのところまで迫った。欲を言えば終了間際の猛攻を実らせ勝利にまでもっていきたかったが、それでも柏を追い詰めたその戦いはお世辞抜きに高い評価が与えられるべきものだったと言えよう。
ただ当然のことながら、そうした「いい戦い」も単発で終わってしまっては意味が薄れてしまう。それは継続して初めてチームの自信や勢いとなるものなのだから。それだけに徳島としては今節が重要で、柏戦を真の大きなステップに出来るかどうかは今節の一戦次第と言えるのではないか。
しかしその今節、徳島はまたも強大な敵を迎えることとなる。柏と並びここまで抜群の強さと安定を発揮し続けている甲府。「個の力では柏よりもレベルが高いように感じている」と美濃部直彦監督も警戒を強めるが、望む内容や結果を手にするためには相当の気持ちの強さとプレーの厳しさが要求される相手だ。
甲府について言うと、前節こそ東京Vに完封負けを喫したものの、J2トップクラスの攻撃力を持ったチームであることに疑いの余地はない。前線にはハーフナー マイク、片桐淳至、パウリーニョら強烈なタレントが揃い、中盤に目を向ければ類い稀なるオフェンスセンスを持つ藤田健が控える。加えてアンカーを務めながら秋本倫孝が今季すでに6ゴールを挙げていることからも、彼らがいかに攻撃的な集団であるかが分かるであろう。また今季の甲府は攻めのバリエーションを増やしていると言って間違いない。昨季までは細かなパスにこだわるあまり手詰まり状態に陥ることも少なくなかったが、今季は効果的に中・長距離のフィードを織り交ぜることでそれをしっかり解消している。中でも早めに入れるクロスはハーフナーの存在によって新たな武器として確立。事実、前節もその形から幾度となく決定機を作っており、あと少しの決定力があれば結果を丸っきり逆の大勝にさえ出来ていたほどであった。
と、そのような甲府を迎えることから、徳島にはいつも以上に守備面の出来が問われると言えるだろう。三木隆司とペ スンジンのCBコンビはハーフナーに厳しく付きつつ入ってくるクロスをタフに跳ね返さなければならないし、ボランチ倉貫一毅や濱田武にはそのセカンドボールへの正確な対処が求められる。さらに平島崇をはじめとするサイドの選手たちは局面を簡単に破られない1対1の粘り強さと自由にクロスを上げさせない寄せが必要とされ、前線の津田知宏、ドゥグラスにおいても献身的なチェイシングが不可欠。要するに、徳島はピッチに立つ全員が集中と動きを切らさない守備を常にしなくてはならないということだ。
そしてもうひとつ付け加えるなら、リスクマネジメントは最高レベルの緻密さをもって抜かりなくしておかなくては。前記の美濃部監督の言葉にもあるように甲府は個々の能力が非常に高い。一瞬でもスキを見せればそれを見逃さない鋭い状況判断を発揮され、一発のパスやドリブルで致命傷を負わされることになってしまう。
このように徳島にとっては今節も大変な一戦。だが、そうした戦いだからこそ乗り越えた時に得られるものは図り知れず大きいはず。それだけにチームは挙げたようなポイントを確実に抑えた守備でゲームを安定させ、そこから引き寄せたリズムによって先制点を奪い（徳島は中断明け後3試合全てで先制されている）、ホームの後押しも受けて勝利に向かうゲームプランを進めたい。
「僕たちの目標を達成するためにも同じ相手に2度負けるわけにはいかない。ホームで戦えるこの試合は何が何でも勝ちにこだわりたいと思っています」と強い気持ちを聞かせてくれたのはペ スンジン。選手たちもこの一戦が大一番であることを意識し、それに対する闘争心を高めている。
以上
2010.08.07 Reported by 松下英樹
