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屈辱的であり、そして恥辱的。
Ｃ大阪戦における0−5という大敗は、広島の選手やスタッフ、そして誰よりも大きな期待をもってJ再開を待っていたサポーターに、スコア以上のショックを与えた。
「サッカーだから、負けることもある。負けを受け入れないといけないことも、わかっている。ただ、Ｃ大阪戦の敗戦はあってはならない負けだ」。
広島・ペトロヴィッチ監督は語気を強めた。
「運動量もない。球際でも負けている。それが、あの試合における広島の現実だった」
自らのチームについて、そんな言葉をはかねばならない現実。「運動量」と「球際」については、指揮官がこの４年間、必死になって指導してきた基礎中の基礎。そこを見失ってしまっては、選手たちが目標として掲げる「スペインのようなパスサッカー」の実現など、夢のまた夢にすぎない。
ペトロヴィッチ監督は、昨日の練習前のミーティングで、選手たちに対し強い口調で反省を促したという。さらに刺激的なのは、メンバーを大幅に入れ替えて若い選手たちを主力組に抜擢したことだ。「まだどういう選手を起用するか、決めていない」と指揮官が語っていることもあり、ここで具体的な名前をあげるのは差し控える。ただ昨日、控えに回った選手たちの中には、誰が見ても「チームの中心」として、ここ数年の広島を支えてきたタレントも含まれている。
「横浜ＦＭは、日曜日が再開初戦であり、我々とはコンディションの部分で差がある。そのことも踏まえて、選手起用を考えないといけない。このメンバー（16日の練習時における主力組）を試合に起用するかどうかも含め、試合当日の朝まで考えたい」
ペトロヴィッチ監督は慎重な言葉に終始したが、内心はかなりの決意をもって練習のメンバーを入れ替えたはずだ。彼は一度信頼した選手については、どんなに厳しい状況でも復調を期待して使い続けるタイプの監督である。その彼が、メンバーの３分の1を試合２日前に入れ替えたのだ。そこに強い思いを感じないわけにはいかない。いずれにしても広島は、高萩洋次郎は出場停止、高柳一誠や山岸智を体調不良で欠いている。若い選手たちにとって、この状況は逆にチャンスである。
一方で指揮官は「横浜ＦＭと戦うのは、常に難しいと感じている。それは、我々がどんな状態であれ、だ」と語り、横浜ＦＭに対する警戒感も隠さない。昨年末には「Jリーグでもっともタレントを抱えているチームだ」とコメント、彼らを高く評価していた。
そのタレント軍団が、広島戦に向けて高いモチベーションで臨んでくることは間違いない。ワールドカップではわずか1試合の出場に終わった中村俊輔は、自らの存在意義をかけて向かってくるだろう。ナビスコカップ浦和戦で負傷した栗原勇蔵も広島戦で復帰予定。強さと高さを誇る彼がワールドカップで評価をさらに高めた中澤佑二と共に最終ラインにしっかりと鍵をかけ、昨年の２試合で７得点を許した広島攻撃陣へのリベンジを誓っているはずだ。さらに、広島戦ではカップ戦を含め３試合連続得点中の渡辺千真もいるし、何よりも木村和司監督は今も広島弁を駆使している広島出身者だ。故郷のスタジアムに敵将として凱旋する事に対し、特別な思いがあるに違いない。
ただ、今の広島には、相手のことを考える前にやるべきことがあるはず。広島のサッカーが見ている人を魅了したのは、巧みなパス回しとか、創造性とか、アイディアとか、そういう表面上のことではない。一生懸命に走り、球際で必死になって戦い、仲間を信じ仲間を助けるために、ひたむきにボールを追い続ける。その結果として生まれるサッカーの美しさに、サポーターは共感したのである。
明日はおそらく暑く湿気のある、サッカーをやる上では厳しい気候の中で試合となるだろう。ただ、そういう状況でも、広島は自分たちのサッカーをやり抜く以外、気持ちを強く保って臨んでくる横浜ＦＭのタレントたちと闘う術はない。広島ビッグアーチに大きな期待を持ってつめかけるサポーターは、何よりも選手たちのそういう強い意思を持った闘いを、望んでいるのである。
以上
2010.07.17 Reported by 中野和也
