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【J2:第17節 甲府 vs 千葉】レポート:16431人の大観衆の前で行われた上位決戦。痛み分けで昇格戦線表向きは異状なし。(10.06.13)

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6月12日(土) 2010 J2リーグ戦 第17節
甲府 2 - 2 千葉 (16:03/小瀬/16,431人)
得点者:41' 片桐淳至(甲府)、65' 養父雄仁(甲府)、70' 倉田秋(千葉)、85' 青木良太(千葉)
スカパー!再放送 Ch183 6/13(日)深01:30〜
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去年も一昨年もJ1再昇格を目標に戦ってきたが、昇格圏外から3位以内を狙っている時間がほとんどだった。今年は第9節から昇格圏内入りを果たしているが第15節の愛媛戦あたりから漠然とした不安を感じていた。勝っていることで緊張感が欠けるのか、ボールがないときの準備が遅い場面が少なくない。今節は、甲府の約3倍の財布を持つ千葉が相手なので、主導権を取ることが出来る時間が短くなる中でより高い緊張感と集中力で戦えると期待していた。

満員で17000人の小瀬。今節は16431人の観客数でクラブ史上3番目の多さだった。千葉からも多くのサポーターが甲府に来てくれたし、甲府サポーターも中断前の大一番・千葉戦ということでデートや家族サービスを中止して小瀬にやってきた人も少なくないはず。観戦していたあるJ1クラブの強化担当者に「凄い」と言わせる盛り上がりだった。試合前、内田一夫監督はロッカールームで「多くのサポーターが来てくれている。それをパワーに変え、サポーターに恩返しをするために頑張ろう」と選手に話した。今年のJ2は3000〜5000人の集客になる試合が少なくないが、甲府はここまで10000人を切った試合がなく、平均でも13000人に迫る勢い。浦和、鹿島、新潟など別格のチームは別として、J1だとしても悪くない数字。県内や近隣にライバルチームがなく、全県で応援してもらえる地の利があるが、県の総人口(約86万人)が神戸市の半分より少し多いだけなのでやっぱり凄いこと。小瀬近辺で違法駐車が頻発して運営本部が試合どころでなくなることは困り事だが、人口が20万の甲府市にあるスタジアムに毎節10000人以上の人がサッカーを観戦に来るということは凄い。このサポーターの想いともにもう一度J1で挑戦しなければならない。

この大観衆の中、前半は風下だった甲府は千葉のロングボール攻勢を跳ね返したがセカンドボールをなかなか拾えずに主導権は取れなかった。しかし、これは予想できたことだったし、千葉がボールを繋いで主導権を取りに来なかったことで甲府は戦いやすかった。ただ、千葉のプレッシャーの速さに苦労して攻撃では思うような形を作ることが出来ず、お互いに「攻撃のストロングポイントを出せない合戦」となった。その展開の中で41分に片桐淳至が右足で決めたミドルシュートは小瀬にもチームにも活力を与えた。人差し指を立てた両手をメインスタンドに向かって突き上げるから、理由を聞くと「岐阜から親族や友人が来てくれているから」と言う。練習で足首を痛めて先発が危ぶまれていたが、「ピッチで結果を出す男・片桐淳至」らしいプレーぶりだった。注目されればされるほど結果を出すメンタリティが素晴らしい。ファーストタッチで相手のプレッシャーをかわすバリエーションが増えればもっとゴールが増えるだろう。

後半も65分に藤田健がドリブルでワーワーサッカー並みにディフェンスを引き寄せてから出したパスを養父雄仁が決めて甲府が2-0とリードし、多くの人が勝った気になった。しかし、昔からの言い伝えは伊達ではなかった。「サッカーは2-0が一番難しい」。その言葉通り、これまでは燃料電池だけで動いていたハイブリッド千葉の選手がガソリンエンジンに点火した。遠目から見ると林丈統に見えて仕方なかった倉田秋が火傷した猫みたいに速いドリブルをやり始めて70分に滑り込みのような体勢からゴール決める。ここから千葉タイムが本格的に始まる。甲府は千葉のスカウティング通りに足が止まり始めていたから、結果論としてボランチを2枚にするなどして守備的に戦えば逃げ切れたかもしれない。ワンボランチでよく耐えてはいたが、次の1点を狙うのか1点差を守るのかはっきりしたほうが良かったのではないだろうか。でも、一番の問題は危機感の不足とチームを鼓舞するリーダーシップの欠如。

そうでないと、ロングスロー1本で同点になんてされるはずがない。内田監督は「和田(拓三)のロングスローは分かっていた。でも、中の準備が遅くてやられた」と話した。84分まで耐えていた甲府は1分後にロングスローから青木良太のヘッドであっけなく同点に追いつかれてしまった。更に悪いことは続いて、直後にもペナルティエリアにドリブルで切り込まれてしまう。荻晃太が勇気のあるセービングで防いだが、このときの接触プレーで左手の人差し指を痛めて(骨折の疑い)プレーが出来なくなった。急遽ピッチに立った荒谷弘樹を中心に7分間の長いロスタイムを凌いだが、失った勝点2と荻を長期間失うかもしれない代償は大きい。千葉のように体力のあるクラブはGKが4人いるけれど、甲府を含む大抵のJ2クラブは経費節減でGKは3人だから、結構痛い。もし、もう一人ケガすれば紅白戦も出来ない。湘南のように4人のGKのうち3人がケガという事態よりはましだが、totoか宝くじでも当てなければ補強費が出ない甲府は、松下太輔GKコーチかユースの坂本武久GKコーチを現役復帰させるんだろうか。

対戦相手なので気楽に考えれば、千葉は高校サッカーのベテラン監督がやる手法のように、前半のキックオフから0-2のつもりで戦えばなんとかなるのかも知れないが、甲府はやりたい攻撃の形をなかなか発揮できないことが課題。繋げないときは裏を狙うなど、大雑把でも状況に応じた意思統一が出来るようにすることから始め、前線の選手と後ろの選手がお互いに思うことを曝け出して修正することも必要だ。中断期間を挟むのでこれが火種になることはないだろうが、「やるべきことをやれていない選手がピッチに立っている」と思う選手が一人もいない状況で後半戦に入る必要があるだろう。

以上

2010.06.13 Reported by 松尾潤
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