6月9日(水) 2010 ヤマザキナビスコカップ
磐田 5 - 0 山形 (19:00/ヤマハ/6,168人)
得点者:15' イグノ(磐田)、29' 金沢浄(磐田)、41' ジウシーニョ(磐田)、45'+3 ジウシーニョ(磐田)、89' イガンジン(磐田)
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3試合連続無失点の山形を5-0で破って、磐田が予選を首位通過。磐田サポーターも予想していなかった大勝だが、試合後の両陣営のコメントをじっくり聞くと、山形の新システムの未完成な部分を、磐田がうまく突いていたことがわかってくる。
といっても、立ち上がりの15分までは、主導権を握っていたのは山形のほうだった。引き分けでも予選通過が決まる山形だったが、引いて守ってカウンターという戦い方をする意識は毛頭なく、ここ3試合で成功した4-3-3の新システムで前線からプレスをかけていく戦い方を継続。相手の4バックには3トップがアプローチし、2ボランチにはセンターハーフの秋葉勝と増田誓志が見張るという形で前線から人数を合わせ、素早い寄せで磐田にビルドアップする余裕を与えないという戦い方に挑んだ。
そして、前線の田代有三に当てたところから出足良くセカンドボールに食いつき、相手ボールになっても前からのプレスで磐田に押し返すゆとりを与えない。そのため、序盤はアウェイの山形のほうが、相手陣内に押しこむ時間を多く作った。
だが、その中で磐田は、虎視眈々と山形の弱点を狙っていた。「(山形は)前線から人にはめてくるので、相手のセンターバックとこっちの2トップが2対2の状況になるだろうと。そこでサイドバックの背後のスペースを突こうと言っていた」(柳下正明監督)という狙いだ。そこで山形がロングボールを自由に蹴らせないことができれば良かったが、取り組み始めたばかりのプレッシングにそこまでの完成度はない。そのため磐田は、センターバックやサイドバックのところから、シンプルに2トップにボールを入れていくという形で反撃を開始した。
そうなると生きてくるのは、前田遼一とイ・グノの強さだ。とくに相手センターバックと2対2の状況になれば、自力でボールを収め、大きなスペースを生かして突破を仕掛ける力がある。また「相手のディフェンスは早めに下がると言われていた」(上田康太)というスカウティング通り、ロングボールに対して山形が早くラインを下げたため、DFラインと中盤の間の距離が広がり、大きなスペースが生まれた。
山形の側から言えば、「DFラインとしては裏をとられないことが第一なので、どうしても深く下がってしまった。その時に中盤が前にプレスをかけに行っていると(中盤に)スペースが空いてしまうことが多かった」(石井秀典)という状況だ。それにより1枚ボランチの佐藤健太郎が下がって3対2の状況を作るのも遅れてしまう。両サイドバックは、西紀寛とジウシーニョのマークに手一杯なので、「(DFラインで)4対4になる状況が多かった」(小林伸二監督)。果敢に前からのプレスを仕掛けた山形だが、磐田の戦略の前に「新システムがはまらなかった」(石川竜也)こともあり、まさに悪循環に陥ってしまった。
ただ、15分の先制点は、そうした流れが表面化する前のもの。磐田の右サイドバック・山本康裕がDFラインの裏を狙ったロングボールは、GK植草裕樹が容易にキャッチできるものだったが、水を含んだピッチが微妙にバウンドを滑らせたボールを、植草がキャッチミスして後ろにこぼしてしまう。これをイ・グノが易々と頭で押しこみ、磐田はラッキーな形で先制点を奪った。
そして、これで磐田は楽になり、山形は大いに動揺したことによって、前述の悪循環が一気に顕著になる。2点目と3点目は、どちらも磐田が前線での数的同数を生かして右サイドをえぐり、ゴール前のマークも同数あるいは数的優位にさせたところから生まれた。とくに29分に金沢浄が決めた2点目は、彼が磐田に復帰してから初のゴール。選手たちの信望が厚いベテランが決めたことで磐田のムードは非常に良くなり、逆に山形のほうは狙い通りにやられた失点で、落ち込みもより深くなった。この2点目で流れは完全に磐田のものになり、前半のアディショナルタイムにはリズムの良いサイド攻撃でPKを獲得。これをジウシーニョが決めて、前半だけでリードを4点に広げた。
後半に入ると、山形は長谷川悠を投入し、前線をツインタワーにする4-4-2にシステムを変更。だが、パスをつないで崩していくのか、どんどん前の2人に当ててセカンドボールを拾っていくのか、戦い方のメリハリがはっきりしない。そのため、リスクを冒さない戦い方に切り換えた磐田の守りを崩すことがなかなかできなかった。それでも最後は、パワープレーを徹底させてチャンスも作ったが、38分の長谷川の決定的なシュートはGK八田直樹のファインセーブに阻まれ、結局1点も返すことができずに終わった。
逆に磐田のほうは、44分に左クロスのこぼれ球をイ・ガンジンが押しこみ、リードを5点に広げてタイムアップ。昨年の開幕戦に2-6で敗れたリベンジを完全に果たすには1点足りなかったが、山形の攻略法が見事にはまった大勝は、選手たちに大きな自信を与え、気持ち良く中断期間に入ることにもつながった。
一方、大敗した山形は、勝負(予選突破)に徹して引き分け上等の戦い方をするという選択肢もあったが、あえてそれを選ぶことなく、チャレンジの姿勢を貫いた。その結果として、「このシステムで戦ったのはまだ何試合かしかないので、今日は相手がうちの予想と少し違う攻め方やポジショニングをしてきたときに、対応する力がまだ足りなかった」(石川竜也)ということが、最大の敗因となった。
それによって初のヤマザキナビスコカップ予選突破のチャンスを逃したことに、賛否両論はあるだろう。だが、より高いところを目指して新しいことにチャレンジしていく姿勢は、磐田担当の記者から見ても、とても清々しく感じられた。
以上
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