6月9日(水) 2010 ヤマザキナビスコカップ
大宮 0 - 4 仙台 (19:00/NACK/7,190人)
得点者:6' 中島裕希(仙台)、23' フェルナンジーニョ(仙台)、66' 朴柱成(仙台)、90'+1 田村直也(仙台)
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Aグループの大宮vs仙台、Bグループの磐田vs山形。決勝トーナメント進出可能性を残したクラブ同士の直接対決は、共に「敗れればその時点で予選敗退決定」というシチュエーション下での戦いにもなっていた。
奇しくもこの両カードは共に、早い時間に先制点が決まり、そこからワンサイドゲームになっていったという意味で共通点があるのだが、この結果には上記のシチュエーションが影響したところも大きかったのではないか。
大宮にとっては、気をつけていたはずのセットプレーで立ち上がり6分にやられてしまったことが、その後、最悪の形で尾を引くことになった。逆に仙台は、先制点を皮切りに最高のゲームを送ったといえる。
仙台の先制点はCKから。フェルナンジーニョが蹴った左からのCKに、ニアで中島裕希が競る。上手く頭でそらしたボールは、GK北野貴之の手をかすめ、マウスに吸い込まれた。
だがこのCKの与え方が、大宮としてはまずかった。仙台はこの試合、大宮の両サイドバックとセンターバックの間に広がるスペースを突くための準備を、先発の人選、さらには崩し方に至るまで行ってきたのだが、それに大宮の守備は抵抗できず、特に立ち上がりでは、右サイドバック渡部大輔の裏を狙われ続けた。このCKも渡部サイドを浸食され、最後は攻め上がってきた朴柱成が得たものだった。
とはいえまだこの時間帯ならば、大宮にも同点のチャンスはあった。19分には青木拓矢の鋭いミドルがゴールの左を捉えた。だがここはGK林卓人が素晴らしい反応で凌ぎCKへ。このCKでも石原直樹がドンピシャのヘディングを放つも、ボールは林の正面に飛びゴールは割れない。
ここで追いつけていればゲームは全くわからなかったのだが、23分、スコアの面でも気持ちの面でも、試合が決まってしまうゴールが仙台にもたらされた。中島がエリア外からシュート。このボールをマトがカットしたのだが、背後から忍び寄っていたフェルナンジーニョには気付くのが遅れ、ボールを奪ったフェルナンジーニョは反転からすかさずミドルを放つ。北野も見送るだけだった強烈なシュートがゴール左に決まり、前半のまだ早い段階で点差は2点に。
引き分けでも決勝トーナメント進出を逃す大宮にとって、現実的にはこの時点で状況はかなり厳しく、さらにボランチの金澤慎が負傷でピッチを退くなど、状況はより辛さを増していくことに。それでも仙台の立ち上がりからのプレスが一段落しだすと、大宮は攻勢に出る時間帯も作り始めた。それまでは裏を突かれるばかりだった両サイドバックも、開き直りが功を奏したのか攻撃で脅威を発揮し始め、後半の立ち上がりには波状攻撃も見せる。
しかしそれでも、すでに大きく傾いていた試合の「流れ」、もしくは「空気」を変えるのは難しかった。一時的に攻守が替わろうと、この日の仙台の戦いぶりに見られた落ち着きは消えず、それは逆襲に出た際も同じだった。66分、空いた左サイドを朴が駆け上がった後、ペナルティーアークの関口訓充へボールを戻す。関口はそこから、DFライン裏へランニングを続けていた朴へ見事な浮き球のスルーパス。DFと競り合いながらも裏を取った朴は球の落ち際を冷静に合わせて、飛び出しかけた北野の脇からシュートを流し込んだ。大宮の戦意を完全に折る3点目である。
終了間際の91分。仙台はゴール正面至近から放ったフェルナンジーニョのFKがポストに跳ね返ったところを、朴の負傷によってピッチに入っていた田村直也が詰めてヘッド。田村もまた一度バーに直撃させたのだが、返ってきたボールを再び頭で押し込み4点目。思わぬ大勝劇を締めくくるゴールの後に、仙台はクラブ史上初となるヤマザキナビスコカップの決勝トーナメント進出を決めた。
最終戦を思わぬ大敗で終えた大宮。試合後にはサポーターから「戦え大宮」コールも出るなど、この試合だけに限ればチーム全体が、見ている者を納得させる出来にはほど遠かった。今季のJ1第2節で対戦した時も、両サイドバックの裏を狙われたことでリズムを仙台に渡していたのだが、今回の一戦も同じような展開を作ってしまったことは反省点である。
ただ渡部、青木、そして福田俊介など、若手が実戦の中で多くのプレー機会を手にし、成長の兆しを見せたことは、鈴木淳監督も語っていた通り、収穫と捉えて良いだろう。現在ケガでチームを離れている選手が戻り、ヤマザキナビスコカップで経験を積んだ彼ら若手などとの激しいポジション争いがなれば、リーグ再開後に浮上する上でのチーム力は手に出来そうだ。
チーム力の底上げという意味では仙台にも、ここまでの予選リーグは収穫の多いものとなっているが、仙台はそれとは別に、決勝トーナメント進出という成果も手にした。特にリーグ中断以降に行われたヤマザキナビスコカップの戦いでは、梁勇基不在の中でどう戦うかという課題を、チーム全体でスピードと動き出しを高めたサッカーで克服し、今回の最終戦でその集大成といえる大勝(ちなみにヤマザキナビスコカップも含めるのであれば、仙台にとって4点差勝利は、2002年のJ1 1stステージ第3節の柏戦(仙台5-2柏)の3点差を超え、J1所属年での最多得点差勝利である)を成し遂げるなど、得られた自信はとてつもなく大きい。
とはいえ両クラブ、ここからしばらくのお休みである。選手、スタッフには、まずここまでの戦いに対する、労いの言葉を贈りたい。
以上
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