6月5日(土) 2010 ヤマザキナビスコカップ
大宮 2 - 1 C大阪 (14:00/NACK/7,081人)
得点者:21' 村上和弘(大宮)、70' 丸橋祐介(C大阪)、90'+4 石原直樹(大宮)
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試合の流れからいえば、これまでであれば勝利を自ら手放してしまう典型的なパターンだった。前半に主導権を握りつつ先制。ここまでは良い。しかし、後半相手が立て直し、追いつかれるとそのままペースを取り戻せずまたも失点。そして、「ああ主導権は握っていたのに、決定機を決めきれなくって…」などというのが大宮のパターンだ。だが、この日は違った。同点にこそされたが、勝利を諦めることはなかった。チャンスの度に得点を確信した声援がスタンドからは送られたのは印象的だった。そうして生まれたのが90分を過ぎての決勝点。「キモチで押し込んだ」と振り返る石原直樹のプレーに象徴されるように、勝利を信じ走りきった。
これで、2005年以来のヤマザキナビスコカップ決勝トーナメント進出に望みをつないだ。もちろん、自力ではなしえない。ライバルF東京が2連勝してしまえば、次戦大宮が仙台に勝利してもそれはかなわない。それでも、まだ途切れていないのだ。今季初の連勝さえすれば念願を成し遂げる、そのチャンスを残したのだ。
試合に臨んだ11人は、これまでのナビスコカップと同じく若手主体のもの。センターバックに福田俊介、右サイドバックに渡部大輔、ボランチには青木拓矢が入った。その青木が開始2分に、いきなり見せ場を作った。ラファエルが起点となり、右サイドを走る橋本早十がダイレクトでクロスを入れると、青木がそこに飛び込む。角度のないゴールは惜しくも枠を外れたが、前線で起点を作りサイドからラストパスを供給し中で勝負という形が見えたシーンであった。3バックで臨んできたC大阪が中盤を作りきれず苦戦するのを尻目に、このまま大宮は主導権を握った。
先制点が生まれたのは21分。中盤を支配しつつ相手ゴールを脅かす。青木が中盤からドリブル、前線に当てて左サイドに開くと、ドゥドゥからのラストパスを村上和弘の左足が炸裂。豪快なゴールが生まれた。
1点リードして折り返した後半、C大阪はシステムを変える。守備を4バックに、前線を2トップに変更し、中盤を厚くしサイドバックの絡んだ攻撃をしかけてくる。家長昭博、乾貴士といった、タレントが生き生きとプレーし始めたのも後半になってから。「前半はあんまり動きがなかったのに後半になったら、動きがでてきた。だから、仕掛けてくるだろうなと思っていた」と福田はその時間帯を振り返る。
同点は70分、ロングボールを入れられると「ツーバウンドしているのに寄せ切れなかった」(福田)大宮守備の乱れを家長に突かれると、そのままドリブル突破を許す。それを、途中出場の丸橋祐介がゴール前で押し込み、プロ入り初ゴールが生まれた。
しつこいようだが、このまま引き分けの予感がただようのがこれまでの大宮。だが、この日は違った。選手交代の後、石原直樹、ラファエル、藤田祥史、市川雅彦となんと4枚ものフォワードがピッチに立つことに。「勝ちに行くという監督からの意思表示だと思う」と石原が振り返るように、指揮官の意図は明確にピッチ内の選手たちに伝わった。この4人だけでなく、中盤も絡んでの攻撃が繰り出される。それでも、攻めても攻めてもゴールにつながらない。このまま決勝トーナメント進出を諦めるのか、そう思われたロスタイム。藤田のシュートから得た左CKを中央で石原が1トラップして右足を振り抜いた。ネットが揺れ、スタンドが沸きたったこの瞬間、90分をなんと4分も過ぎていた。
敗れたC大阪も「最悪の結果。でも経験を積ませることができた」とレヴィークルピ監督。得点者の丸橋だけでなく、山口蛍、黒木聖仁といった若手に経験を積ませることも出来た。「フレッシュにやってくれたので、こっちもやりやすかった」と先輩も認める働きを見せられた。香川真司の抜けた穴を埋める選手たちが続々と名乗りを挙げており、楽しみな後半戦を予感させてくれる。
大宮にとって、この勝利はやはり大きい。若手主体の中で、苦しい戦いの中最後まで諦めずもぎ取った勝利。チームとしての成長を感じさせるものでもある。次戦に向け望みがつながったことも大きい。「次も今日みたいに粘り強く、最後まで戦いたい」と決勝点を挙げた石原。その言葉を信じよう、そう思わせてくれる一勝でもあった。
以上
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