6月5日(土) 2010 ヤマザキナビスコカップ
仙台 0 - 0 名古屋 (14:00/ユアスタ/9,862人)
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試合後の会見で、名古屋・ストイコビッチ監督は「私は選手に、前後半で別々のスタイルでいけとは言っていない」と、ハーフタイムでの特別な指示を否定したが、そうした「何か」があったのではないかとこちらも思ってしまうほどに、試合は前後半で様相を一変させた。ここまで流れがはっきりと入れ替わった試合もなかなか珍しい。
ただ結果は、双方勢いのあった時間帯にチャンスをものにできず、0-0のスコアレスドローに終わっている。
試合前から降りしきる雨により、ピッチの所々に見えない水たまりが潜むというコンディションとなった一戦。
前半の内容だけならば、判定勝ちとなったのは仙台だろう。名古屋はボールポゼッションこそは高められたものの、吉村圭司とダニルソンのダブルボランチに、トップ下として中村直志が入る構成の3MFは、ピッチ中央部で攻撃における構成力が足りず(あくまで、リーグ戦での対戦時との比較になるが、センターに入っていたブルザノビッチ(この試合は出場停止)がもたらす効果は大きかったか)、攻撃はどうしてもサイドに偏りがちに。
だが仙台もこの日は、ラインを極力下げずに名古屋の攻撃を受け止めた。自ずとサイドでも高い位置での守備となるが、これが名古屋のサイドから攻めのスピードを奪う形となり、名古屋はリズムをつかめない。
すると今度は、中盤での積極的なボール奪取が仙台は機能し始め、そこからのカウンターが名古屋ゴールを脅かすまでになってきた。このナビスコカップですっかり自信を取り戻した感のある富田晋伍が、持ち前の出足良いチェックでボールをインターセプトすると、呼応する形で動き出している前線が素早くボールを引き出し、カウンターにつなげる。一旦、人数が戻った名古屋の守備に一旦は攻め手を消されても、平瀬智行を筆頭に「2人目、3人目の動き」を相手ゴール前で丹念に繰り返した仙台の攻めは、着実に名古屋守備陣を揺さぶっていた。39分にはその勢いのまま、左サイド高い位置で相手ボールをインターセプトした朴柱成が、そのまま反転から左足で強烈なミドルシュート。バーを直撃してゴールはならなかったものの、流れが仙台に来ていることを示すかのようなプレーに、スタンドは大いに沸く。
だが後半、流れは一変した。驚くほどに、仙台は攻撃に出られなくなる。
直接の原因は、仙台の守備が押し下げられ、布陣全体が間延び。カウンターに出るには距離が長すぎるようになったことだが、そうした状況を仙台に強いたのは、名古屋のパスワークが息を吹き返してきたこと。
CKの跳ね返りを拾ったセカンドチャンスから、ダニルソンが放った鋭いシュートを林卓人が反応良くセーブした50分のシーンが、名古屋にとっては言わば猛攻の合図だった。前半では、高さのない前線(ケネディはオーストラリア代表のため不在、巻佑樹はベンチスタートで、この日は3トップの中央を、身長177センチの橋本晃司が務めていた)をどう活かすかに苦慮していた名古屋が、田中隼磨の言葉を借りればその編成に「慣れてきた」ということで反撃開始。前半のようにパスワークを捕まえきれなくなった仙台は、じりじりと下がる。
ということは守備がゴール前中央部に自ずと寄るわけで、サイドにスペースが空く。そこへ田中隼磨と、先日のリーグ戦での同対決でも大活躍を見せていた左の阿部翔平という両サイドバックが飛び込んでくる。危険なボールが左右サイドから仙台ゴール前へと放り込まれ、林の仕事がにわかに増え出す。
仙台・手倉森誠監督はこの状況を、中盤でボールを奪う力を増強することで打開しようと、71分、守備に追われ本来の持ち味を発揮できなくなっていた太田吉彰に代えて、ボランチや両サイドバックを務められる守備力を持つ田村直也を、太田と同じく右のサイドハーフに投入。前半の好機が、中盤での積極的な守備からもたらされたことを考えれば、その要因を取り戻そうという意味で、しっかりとした意図が感じられる交代であり、田村自身もその意図に沿ったであろうプレーを見せようと奮闘したが、劇的な効果を発揮するには至らず、流れは以前名古屋のまま、試合は終盤へ。
名古屋が変わらず猛攻を仕掛け、小川佳純が、吉田が、さらには増川隆洋が決定機を次々作る中、仙台も勝点3を伺う姿勢はあった。だがこの日後半の趨勢を考えれば、無理攻めにも出られないことも明らか。3人目の交代で中島裕希を投入したものの、時間は86分とぎりぎりまで待ったものに。最低限の勝点1を手にするために耐えながら、最後に1チャンスをとうかがったが、それは巡ってこなかった。
さて、名古屋はこの試合で決勝トーナメント進出が完全に断たれたが、一方の仙台はどうか。
今節での2位以内確定は無くなったが、実は翌6日のF東京vs京都の結果にかかわらず、仙台は次節アウェイでの大宮戦、勝利することで自力での2位以内確定に持ち込めることになった。
仙台の勝点は現在で9。明日の試合でF東京が引き分け以下ならば、6節終了時点で仙台の勝点9に対し、3位以下のチーム(大宮かF東京)は自ずと勝点8か7となる。つまり最終節、仙台が勝利すれば、勝点で下位は仙台に届かない。
だがF東京が京都に勝利し、勝点を10に伸ばしたとしても、実は勝点11で首位に立つ京都は最終節に試合がないため、仙台は最終節に勝利すれば、京都の上に立つことになるのだ(その意味で今節奪った勝点1は大きな意味を持つ)。
とはいえ、最終節は、今節終了間際の決勝弾で可能性を残した大宮。やっかいな一戦となったが、超えたときの喜び、そして得る物はとてつもなく大きな、最終節となった。
以上
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