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Ｊ２第１６節、屈指の好カード。５月を無傷で終えた絶好調の４位・栃木ＳＣ（５勝１分）と、６位・アビスパ福岡（４勝１分）が初めて「グリスタ」で相まみえる。
栃木は今節の上位対決で初めて「追われる立場」を経験する。これまでも順位が下の相手との対戦はあったが、勝点差３で背後にピタリと迫る相手と戦うのは福岡戦が初めて。追う立場から追われる立場になったことで、今までとは異なるプレッシャーが圧し掛かるが、大久保裕樹は「自分達が上にいるという意識はない。挑戦者の気持ちで戦いたい」と話し、「相手の順位が下とか関係ない。福岡に勝つしかない」と入江利和も同調する。どんな状況に晒されても変わらないのは、栃木に貫かれているのは、「一戦必勝」の思いだけだ。眼前の試合に勝利することで強さを蓄えてきたチームは今節も、「目の前の試合を大事に、栃木らしく戦う」（松田浩監督）。
前節のＦＣ岐阜戦では前半、思うように事が運ばずに必死に修正を試みたことが逆効果となり、ワンタッチでさばくべきところをツータッチにしたり、ドリブルを挟んだりと空回りした。「なんとかしよう」。その思いが強すぎた。しかし、「上手くいかない時に主体性を持ち、周りに頼るのではなく『俺がなんとかする』という思いは大切」と松田監督は言う。人任せにすることなく、自分がイニシアチブを取ることで流れを積極的に変える姿勢は、これまで見られなかった。ひとりひとりの責任感が高まったことは悪くはない。岐阜戦ではネガティブに働いたが、自分で考え、判断し、結論を出そうとしたことはポジティブな要素。勝点３と共に強いチームに必要な条件を、またひとつ手に入れた。
リーグ戦も折り返し地点に差し掛かれば怪我や累積警告での出場停止は付き物だ。栃木は１１戦無敗、６試合連続無失点の立役者である米山篤志が出場停止、そして今週は別メニュー調整を続けたリカルド・ロボの出場が不確定。ただ、「競争が上手く働き、いい緊張感を持てている」と本橋卓巳が言うように、紅白戦では主力組を控え組が凌駕しており、誰が出ても変わらない、選手層の厚みが今の栃木にはある。実際に岐阜戦では廣瀬浩二がゴールを挙げて崔根植の穴を埋め、負傷した杉本真に代わって登場した岡田佑樹がアシストを決めている。コアメンバーが欠けても大きな問題は生じないはずだ。
松田監督、選手が口にした福岡の印象は「爆発力」。攻撃陣は畳みかけて大量得点を取れる力を備えている。大久保哲哉は多少質の悪いクロスでも強引にヘディングで合わせ、７ゴールを挙げている永里源気はシュート意識が高くミドルレンジからも果敢にゴールを狙い、ベテランの久藤清一は良質なパスからチャンスを作り出す。攻撃のスイッチを入れる役割、素早い切り替えを促進しているのが末吉隼也と中町公祐のダブルボランチ。２人が攻守にハードワークすることで福岡は昨季よりも安定感を増した。丹羽大輝と田中誠が中央を締め、ＧＫ神山竜一は前節ＰＫをストップするなど、クロスゲームを制しての３連勝に守備陣も大きく貢献していることは明白だ。充実の布陣で昨季３連勝と相性抜群の栃木から勝利を奪い、連勝を４に伸ばしたい。
福岡には３連敗、次節のサガン鳥栖には１分２敗と、昨季の対戦成績では揮わなかった栃木。なんとか相性の悪さを福岡戦で払拭し鳥栖戦にも繋げたい。直近の２試合を栃木は２-０で勝利しているものの、前半は苦戦を強いられている。耐えて、相手が焦れて、後半に先制して追加点と、“０-０のアリ地獄”に相手を上手くはめこんでいるが、「福岡と鳥栖は明らかに今までの相手と戦力が違う」（松田監督）。堅守を軸にした戦い方は不変だが、前半に先制して優位に試合を運ぶのが理想的だ。常に先手を取る展開こそが難敵・福岡を撃破するカギとなる。
以上
2010.06.05 Reported by 大塚秀毅
