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今季開幕前にクラブの経営危機が取りざたされた大分と東京Ｖ。その後も計画通りに再建策が進んでいないことが明らかになり、ピッチ外での話題で注目を集めている。ともに輝かしい実績のあるチームなだけに、今節はピッチで話題を提供したいところだ。両チームの対戦は08年のＪ１第25節以来、２年ぶり。成績は大分の３勝５敗で、Ｊ２では初対戦となる。
前節・熊本戦をスコアレスドローで終えた大分の皇甫官監督は「いい準備ができれば、いい試合ができる」と手応えを示した。６試合ぶりに無失点で抑えた守備が安定し、復調のきっかけを掴んだようだ。今週の練習では、相手が保持するボールをどこで追い込み、奪いにいくか。チームとして基本的な守備の動き、連動性を確認し、意識を高めた。今節も「まずは失点をしない」という試合の入り方で臨むはず。ただ、これまで左ＳＢでプレーしていた小林宏之が累積警告で出場停止となるため、連係面に不安は残る。しかし、指揮官は「出られない選手のことを考えても仕方ない。これまで出場機会に恵まれなかった選手はチャンス」と前向きに考えている。攻撃にアクセントをつけるのであればＭＦ内田昂輔、手堅く守備を固めるのであればＤＦ池田達哉あたりが起用されそうだ。どの選手を配置するのか注目したいところだ。
もう一人のキーマンとなるのがＭＦ東慶悟である。今節は出場停止明けの試合となるだけに気合十分。２試合連続無得点に終わった攻撃陣のタクトを振るう。「速攻と遅攻を使い分けたい」と本人もゲームメーカーとしての役割を自覚しており、彼が守備から攻撃のスイッチとなる。前線には高さとパワーのある森島康仁、決定力の高いチェ・ジョンハン。そして、起点となれる高松大樹、テクニックのある前田俊介と個性派揃いのＦＷをどう使いこなすか。東にかかる期待は大きい。
対する東京Ｖは、リーグ序盤こそ苦しんだが、ここにきて地力を発揮している。元々タレントの揃っているチームであり、現在の14位という位置にいるチームではない。前節の横浜FC戦では、ＧＫ土肥洋一の安定感、ＣＢのベテラン土屋征夫、富澤清太郎は強さ、巧さが際立っていた。皇甫官監督は「簡単に突破できる守備網ではない」と頭を悩ませており、「相手の陣形が整う前に攻撃に移り、２列目からの飛び出しやポジションチェンジをして攻略するしかない」とシンプルに速くボールを動かすことで突破口を見出すようだ。
攻撃陣に関しては飯尾一慶や河野広貴らが、テンポ良くパスをつなぎ、個の力で局面を打開するなど、新旧のユース出身者らが融合し名門復活の兆しが見えつつある。このチームに関しては、守備よりも攻撃。脈々と受け継がれている観る者を魅了するサッカーをと、ついつい期待してしまう。
ピッチ外の雑音で選手はプレーに集中できない状況ではあるが、「選手ができることはピッチで真剣に勝利を求め、愉しんでもらえるサッカーをすること」（高松）。暗い雰囲気を弾き飛ばし、サポーターが会場に足を運びたくなるような痛快なサッカーでクラブの存在意義をアピールしてもらいたい。
以上
2010.06.04 Reported by 柚野真也
