5月30日(日) 2010 J2リーグ戦 第15節
東京V 1 - 1 横浜FC (16:03/国立/6,761人)
得点者:37' 寺田紳一(横浜FC)、45' 土屋征夫(東京V)
スカパー!再放送 Ch182 5/31(月)後00:00〜
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見応え十分な試合だったと言えるだろう。
攻守にわたり、90分間互いの意図と特長がしっかり見られた。
東京Vは、前節の千葉戦の反省から、「ボール保持者に対してもっとアグレッシブにプレスをかける」(土屋征夫)ことを、1つのテーマとしていた。特に、横浜FCは、大黒将志という桁違いの点取り屋が存在する。「大黒(将志)君にボールを入れさせる前のところで奪うこと」だと飯尾一慶が挙げていたが、そこでキーマンとして最も警戒していたのが前節から加入したホベルトだった。厳しくいき、彼を自由にさせないようにと、試合前入念に確認し合ったという。横浜FCの攻撃のほとんどがホベルトを経由する。対峙する佐伯直哉、柴崎晃誠らが、DFライン深くに侵入されてもセンターバックの富澤清太郎、土屋が体を張って食い止め、中央での大黒への決定的パスを遮断した。
だが、「サイドから良いボールを何回か入れられてしまいました」と土屋が振り返ったように、武岡優斗、寺田紳一の左右MF、さらには柳沢将之、この試合がJデビューとなった中里崇宏の両サイドバックからの精度高いクロスボールからピンチを招くシーンもあった。
それでも、最終ラインがしっかりと落ち着いた対応をみせ、大黒、西田剛をブロック。
この試合でも、土屋、富澤の強さ、巧さは際立っていた。
攻撃面では、「僕が相手のラインを下げて、中盤で空いたスペースを使おうという狙いだった」が、なかなか思うような形にはならなかったと、平本一樹は悔しさを滲ませた。
平本へ効果的なボールが入らずとも、飯尾、河野広貴、高木善朗らもつないでゴールを目指す。中でも3試合ぶりに復帰した河野にボールが渡ると、テンポアップしてゴール前に侵入する場面も見られたが、最後一手の手前で止められ、シュートが打てなかった。
攻守の切り替えの部分でも、ボールを奪って素早くカウンターに持ち込みたいところを、「必ずホベルトに引っ掛かって、つながらなかった」と平本は話す。持ち味を出し切れなかった東京Vのエースは、「ホベルトは格が違う。本当に素晴らし選手」と、横浜FCの新ボランチを何度も繰り返し誉めたたえていた。
後半、何本もの巧みなパス交換で、両サイドそれぞれで良い形を作るなど、自分たちの意図する攻撃ができる時間帯は増えたが、結局、前半終了間際に挙げた、高木善朗のFKからの土屋のヘディングゴールの1点に止まった。
前半37分に、セットプレーから寺田のゴールで先制されながらも、前半のうちに同点に追いつけたことは、チームの成長と捉えていいだろう。ただ、やはり、流れからのアイデア溢れる得点は、これまで同様、今後の大きな課題となりそうだ。
一方、横浜FCは、チームとして本来目指している形が十分発揮されていたのではないだろうか。ボールの取りどころ、球際、切り替え、運動量などが求められる「自分たちからアクションを起こすサッカーが、だいぶ出た」と、岸野靖之監督は及第点を与えた。
連敗を繰り返していた以前のチームとは、明らかに変わったようだ。
その要因は、やはりホベルトの加入だろう。すでに攻守にわたってチームの心臓となっているが、その中でも、攻撃面での変化を大黒は口にする。以前は、闇雲に前に蹴ってばかりだった攻め方に苦言を呈し続けていたが、「しっかりと意図のある攻撃ができていた」と、リーグ屈指のストライカーも満足げに笑った。
特に、後半ロスタイムで魅せた、大黒のトラップからの反転シュートは、会場中から驚きの声があがるほど圧巻だった。昨年までのチームメイトGK土肥洋一も「89分間何もしていなくても、たった1チャンスで点を取れちゃう選手」という言葉を、改めて証明してみせた。こうした、絶対的なエースのいる強みが見せられたこともまた、横浜FCの成長と言えるのではないだろうか。
「僕自身コンディションも良い。このまま点を取り続けたいです」と語るだけにゴール量産は、さらに期待できそうだ。
「たとえチーム状況が悪くなった時でも、このサッカーが拠り所となればいい」と寺田が話したように、‘拠り所’となる形が見えたことは、非常に大きな収穫と言えよう。
ただ、「僕の中では、常に0で終わることが大事」と指揮官は語る。その意味では、リードを守り切れなかったこと、追加点を奪えなかったこと、どちらの観点からも課題が残ったようだ。
1−1ドロー。結果として、どちらの得点もセットプレーによるものだったが、両チームのサポーターは、未来へのチームの方向性に大いなる期待を感じたに違いない。
戦い終えた選手たちへ送られた両ゴール裏からの大声援が、何よりの証拠だろう。
以上
2010.05.31 Reported by 上岡真里江
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