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スカパー!生中継 Ch183 後06:50〜
--試合速報--
勝敗予想ゲーム | 皆の投稿で作るスタジアム情報
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理想的な試合運びでアウェイ、大分戦を制した前節の愛媛。開始わずか5分、セットプレーからアライールのゴールで先制すると、前に出てくる相手の裏を突いて牽制。65分という時間の追加点も申し分なく、スッキリと5試合ぶりの勝利をつかんだ。ただ、試合開始前にこうした試合展開を予想するのは困難だった。この試合を前に最終ラインでは小原章吾が、そして中盤では越智亮介と赤井秀一が戦線離脱。今シーズン前半戦、大崩れすることなく勝点を積み重ねてきたチームを支えていた3人を一度に欠く、本来ならば非常事態のはずだった。
その緊急事態を乗り切った要因は2つある。まず1つは、「変形した4-4-2」とバルバリッチ監督が語ったフォーメーション。大分が相手だからというよりも、手駒の状況と同時に「福田(健二)の近くにひとり置くことができる」と、抱える得点力不足に対する解決策として指揮官は中盤をダイヤモンドに「変形」させた。今シーズン採用してきた4-3-3でもなく、中盤をボックスにした4-4-2でもない布陣。さらに言えば、バルバリッチ監督はダイヤモンドと言うものの、細かく言えばボランチが3枚並ぶような4-3-1-2が基本になっているようにも見える。しかし、「ボックスでも状況によれば(サイドハーフの)1人が前に出て、もう1人が絞ってそういう形になる。今回は最初からそういう状況にしただけ」とバルバリッチ監督は説明する。さらに、取材陣に対して「いつも同じ話を繰り返しているようだ」と笑って付け加えた。
つまり、バルバリッチ監督が就任当初から語っている「トランスフォーメーション」=ポジションの「変形」、というサッカーを状況に応じて使い分け、それを我々に繰り返し説明しているだけ、ということ。ポジションが流動的に変わっても選手が同じようなパフォーマンスを発揮できるということは、逆にそれはコンセプトを具現化できるようになったということだ。ただ、その監督の意図を愛媛の選手たちがピッチで表現できるようになったことが、非常事態を乗り切れた2つ目の要因。トップ下に入り、今季初のスタメンで自身プロ初のフル出場を果たした持留新作は「守備でも攻撃でも重要なポジションだったけど、守備では頭を使ってプレーしようと試合に臨んだ」と振り返った。シーズンを通じ、選手個々が攻守の切り替えやスペースを埋める動きなど、ポジションに応じて自らが果たすべき役割に対する理解を深めている。さらに「誰が入ってもコミュニケーションが取れているし、大分戦でも曖昧な部分がなかった」と、渡邊一仁は言う。そして、「やっていることに結果が出て、自信になっている」と続けた。
戦術理解やコミュニケーションを深め、チームの成熟度を高めている愛媛。その到達度を測るには最高の相手となりそうなのが今節ホームに迎える甲府だ。「今まで見た中で一番パワフルなチーム。攻撃では人数をかけてくる」とバルバリッチ監督が指摘したあと、「注意しなければならないのは、前線では15番(パウリーニョ)と14番(ハーフナーマイク)。中盤もいい選手ばかりで8番(養父雄仁)と10番(藤田健)、20番(片桐淳至)…チーム全体が危険だ」と警戒した。こうしてバルバリッチ監督が相手の選手を列挙するように、様々な個性が組み合わさり、多彩な攻撃で甲府はリーグ最多得点の爆発力を誇っている。その相手に、愛媛はしっかりとポジションを「変形」させて対処できるか。
「ハーフナーマイクには気をつけないといけないし、難しい試合になる。でも、ホームだし努力すれば勝てると思う」と意気込みを語ったのはアライール。言うまでもなく愛媛の守備は組織で守るものだが、それでも今節は古巣を相手にするアライールのパフォーマンスにも注目したい。「怪我も少なく、愛媛にきてから一番いいパフォーマンスができていると思う」とアライールは胸を張る。「(甲府にいた)2003年は若かったし熱くなり過ぎていた。タイジョウ、4回(実際には退場は2度。累積警告によるものも含め、出場停止の試合が4試合)」と笑っていたが、「今は経験も違うし、落ち着いてプレーできている」とディフェンスリーダーの風格すら漂わせている。さらに前節は第4節以来、田森大己がスタメン復帰。ジョジマールもベンチに入り、彼らが古巣を相手に恩返しができるか。愛媛が目指す「最多観客数更新宣言」ではピッチの外にも注目すべき話題が目白押しだが、ピッチで繰り広げられる熱戦も、前半戦のホーム最終戦にふさわしいものになるはず。バルバリッチ愛媛が甲府の快進撃を止められるか――。愛媛にとっては今シーズンの大一番となりそうだ。
以上
2010.05.28 Reported by 近藤義博