スカパー！生中継 Ch183 後00:50〜
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「千葉戦で吹っ切れたいんです」。村田翔はそう言い放った。それは、おそらくチーム全体が持っている思いだろう。13試合を終え、4勝4分5敗の12位という結果を残す水戸だが、いまだに今季の水戸の「色」というものを見せられてはいないのではないだろうか。さらに言えば、水戸のチームのポテンシャルも見せ切れてはおらず、どこかモヤモヤ感の残る序盤戦だったと言えるだろう。開幕の栃木戦や第11節横浜FC戦で希望に満ちたゲームを見せたかと思うと、前々節熊本戦のように「何も見せられなかった」（木山隆之監督）試合をしてしまう。試合ごとにパフォーマンスにバラつきがあり、安定感がない戦いが続いている。今季の水戸のチームが持つ本当の力を判断できないでいるのは筆者だけではないだろう。
村田はやや虚ろな表情で「今季は中盤を生かしたサッカーをするはずだったのにできていない。僕がもっとしっかりやらないといけないんだけど、全然ダメなんです」とこれまでの戦いを振り返り、「いい時はポジティブなミスなんですけど、今は消極的なミスが多い」と続けた。なかなかチームが目指すアグレッシブなサッカーができず、選手たちはやや自信を落としがち。木山監督も「いい守備ができても攻撃につながらない。最後の部分で力のなさが出てしまう」と頭を悩ませている様子で、なかなかチームは前に進めずにいる。
そんな状態の水戸にとって、千葉というのは絶好の相手と言えるだろう。「楽しみしかない。ウチは失うものはない」と藤川祐司が言うように、チャレンジャー精神を胸に自分たちの持っているものをすべてぶつけられる試合なのである。「吹っ切れる」チャンスであるのだ。「ボールを持たれる時間が長くなる」（木山監督）展開が予想される中で、いかに辛抱強く守りながらも前に出る意識を持ち続けることができるか。力量関係で後ろに下がらざるを得なくなるからこそ、ボールを奪った後に前を向くことができる。そして、今の水戸に欠けている「前に出る動き」が出しやすくなる。あとは相手の攻撃力に恐れずに前に出る勇気。それが必要になってくる。
そのために今節、「守備から攻撃に切り替わった時にもっと早く前に出て行くためにどこかを変えて行かないといけない」（木山監督）ということで、保崎淳が左サイドバックに入ることとなりそう。「とにかくボールを奪ってから早く前に出て行ってほしい」と木山監督は保崎の攻撃性に期待を寄せており、保崎自身も「上がる時にビビっていたら前に出られない。どのポジションでも前に出た者勝ち」と強気な発言をしているように、彼こそが守備の時間が長くても攻撃的姿勢を忘れないというチームとしての戦い方の象徴。保崎だけでなく、チーム全体がボールを奪ってからいかに早く飛び出して攻撃をやり切れるか。そこに水戸の今節の勝敗だけでなく、今後の飛躍がかかっている。3位の千葉相手にアグレッシブな姿勢を前面に出して勝利をつかむことができれば、チーム状態も一気に前方向へ転がり出すに違いない。
ただ、千葉は簡単に勝たせてはくれないだろう。J2屈指の戦力を保持し、4−3−3を基調に攻撃的なサッカーで序盤から上位に君臨。1年でのJ1復帰へ着々と歩を進めている。1人1人の技術が高く、流麗なパスワークが武器であるが、最も相手に脅威を与えているのが、セカンドボールを拾う意識だ。前節もロングボールのこぼれ球に素早く反応した山口慶が豪快なミドルシュートを叩きこんだように、うまさだけでなく、ハードワークが今季の千葉の信条である。オーストラリア代表に選出されたDFマーク・ミリガンやけがのDF渡邊圭二など主力が欠場することとなるが、ハードワークというベースがある限り、チーム力は変わらないだろう。ただ、水戸もハードワークが売りのチーム。「相手より走ることが大事。それに尽きる」と作田裕次が言うように、走り負けることは絶対に許されない。激しい火花が散るであろうセカンドボールの奪い合い。3位と12位という順位が離れたチーム同士の対戦だが、そんな泥臭いところに勝負の分かれ目はありそうだ。
以上
2010.05.28 Reported by 佐藤拓也
