5月29日(土)J2 第15節 熊本 vs 大分(15:30KICK OFF/水前寺)
スカパー!生中継 Ch184 後03:20〜
--試合速報--
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2005年にチームが発足した熊本にとって、福岡も鳥栖も身近な目標であったことは確かだ。だが、まさしくこれから歩もうとするのと同じ道のり(九州リーグからJFL、J2、J1と、階段を1つずつ登っていったプロセス)を経て、2008年、九州のクラブとして初めて国内タイトルまで手にした輝かしい軌跡は、身近な先輩クラブの中でもやはり特別だった。年に数回、ホームゲームとして熊本で行なわれる試合では、サポーターで埋められたゴール裏の迫力も含めてJ1の雰囲気を体感し、「いつか必ずこのステージまで行くんだ」と羨望を込めて感じ入ったものだ。だからこそ、上で待っていて欲しかった。しかし遂に、リーグ戦で初めて相対する時がやってきた。今季初のホーム開催となる『バトル オブ 九州』。水前寺競技場に迎えるは、1年でのJ1復帰を目指す大分トリニータである。
初めての対戦ではあるが、前述したような目標とする存在であったこと以外にも、大分との間には少なからぬ縁がある。特に、熊本のJリーグ入りにあたっては、そしてJリーグに上がってからも、“元大分”という肩書きを持つ何人かの選手が多大な貢献をしてくれたことを忘れるわけにはいかない。今年のチームにもキャプテンの原田拓、FW松橋章太と大分でプレーした経験のある選手がいるが、「九州のチームにはどこにも負けたくないけど、それが大分なら自然と力も入る」(原田)、「育ててもらったという思いもあるから、活躍して成長した姿を見せることで恩返ししたい」(松橋)と、2人とも古巣への強い思いを口にする。『バトル オブ 九州』で今季まだ勝ちを収めていないこともあるが、そうした様々な思惑と、さらには前節ふがいない内容で栃木に敗れたことからも、熊本にとっては負けられない一戦なのだ。
その大分、13試合を戦って5勝2分6敗の勝点17で11位という位置にはいるものの、個の能力の高さはJ2でも屈指。北九州戦のドローから2分4敗と、ここ6試合で勝ちがない状況ではあるが、高木琢也監督も「結果を見ればそうだが中身は悪くないし、ボールへの執着心もある。去年までJ1にいたわけだし、選手個々のキャラクターは脅威に感じている」と話す。
攻撃の軸となっていたキム・ボギョンが韓国代表で不在、さらには負傷で離脱している選手が複数いるという状況もあって、愛媛戦では菊地直哉を右サイドバックに起用するなどメンバー構成も安定しておらず、今節は東慶悟が出場停止という事態。だが、熊本の選手たちも認識している通り、森島康仁ら「1人でも打開できる力を持っている選手が揃っている」(南雄太)からこそ、それが「フィットすればグループでの攻撃、守備ができる」(高木監督)ことは明らか。このゲームがそのターニングポイントにならない理由はどこにもなく、つまり現在の順位も、直近の試合の結果も何の参考にもならず、逆にしばらく勝っていないから、余計に怖さがある。
だが熊本とて、「成長した姿を見せたい」舞台。前節の敗戦からやるべきことは再確認してこのゲームに臨むが、まずは球際の激しさや相手よりも少しでも長く走ること、そうした最後まで諦めない戦う姿勢をピッチの上で表現しなければならない。攻守における具体的な狙いも、選手1人ひとりが責任を持って、対峙する相手に勝っていくことの積み重ねでしか実現しない。個の力で差があるのであれば、それに対して組織として対抗し、相手を凌駕する思考と運動量、強い気持ちが必要だ。たとえどんな形であろうと、最後の笛が吹かれる瞬間に勝点3を手にすることが、この試合では求められる。
今回、既にアウェイ側B席のチケットは完売し、大挙してやってくるであろう大分サポーターは、おそらくゴール裏には収まりきれない勢い。それほどまでに大きなアウェイサポーターの圧力の中で戦うゲームは、熊本の選手はもちろん、クラブ、サポーター、そしてホームタウンにとってもかつてない経験だ。しかしそれも、上のカテゴリーを目指して行く上では避けて通れない、言わば通過儀礼。目標の1つとしてきた大分との、同じ舞台での戦いの歴史が、いよいよ幕を開ける。
以上
2010.05.28 Reported by 井芹貴志
J’s GOALニュース
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