5月15日（土） 2010 J2リーグ戦 第13節
草津 1 - 4 甲府　（19:04／正田スタ／4,699人）
得点者：11' 内山俊彦（甲府）、35' ハーフナーマイク（甲府）、64' 菊池大介（草津）、67' パウリーニョ（甲府）、81' 秋本倫孝（甲府）
スカパー！再放送 Ch182 5/18（火）09:30〜（解説遠藤雅大実況山田浩史リポーター木村雅子）
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監督会見を録音したＩＣレコーダーを再生すると、席に着いた草津・副島博志監督の静かなため息が聞こえてきた。4月以降、破竹の勢いを見せる昇り竜・甲府をホームに迎えた草津だったが、４失点を喫して為す術なく敗れた。２位に浮上した甲府に対して、草津は最下位から抜け出せないまま次戦を待つことになる。チームを覆う霧は晴れるどころか一層濃さを増す。指揮官の苦悩は、シーズンが進むごとに深まっていく。

４試合ぶりの勝利を目指す草津は、ケガで長期離脱していた前田雅文を先発に起用。昨季まで甲府に在籍、今季草津に移籍した浪花のストライカーが１年半ぶりにピッチに戻った。そしてＤＦはケガ人が重なったことで尾本敬、崔成勇が今季初先発。フレッシュなメンバーで甲府に挑む。一方の甲府は、ケガの山本英臣に代わって秋本倫孝がＣＢへ。ボランチには保坂一成、マラニョンに代わってパウリーニョが３トップの一角に入った。

ゲームは、立ち上がりから甲府が主導権を握った。ハーフナー・マイクが制空権を支配。草津のＤＦラインは起点を作られて安定を欠く。甲府の波状攻撃を受けた草津は中盤以降が後退しラインへと吸収されていく。そして11分、後方から走り込んだ内山俊彦への対応が遅れて先制点を叩き込まれる。「中盤から精度の高いボールが入ってきた」（崔成勇）。さらに35分にはハーフナーに豪快なヘッドを決められて前半で０−２。スタジアムには不穏な空気が漂いはじめる。

前半、顕著だったのはボールを中心とした半径５メートルエリアの人数だ。ボールへ圧力がかからない草津に対して、甲府は３〜４人が一瞬にしてボールを囲む。草津で初出場となった前田は「ボールを持ったときに周囲が視界に入ってこない。自分も含めてもっとサポートしなければいけなかった」と話した。「中盤の距離感が良かった」（内田監督）。という甲府と比較して、草津のサポート、切り替え、動き出しが劣っていたのは確かだ。

草津は後半、ラフィーニャと山田晃平を投入し攻撃に出る。「前半は引いてしまったので後半は全体的に前から行くようにした」（高田保則）。リズムを取り戻したチームは64分、カウンターから山田がドリブルで持ち込み、クロスした菊池大介へラストパス。それを菊池が確実に決めて１点を返すことに成功する。しかし、ボランチを１枚削って攻撃に出たことが裏目となり、直後の67分にパウリーニョに裏を取られて痛恨の失点。81分にはＣＫから秋本倫孝にヘッドで押し込まれてゲームが決した。草津が戦えたのは菊池がゴールを挙げた64分前後の数分間だけだった。

甲府はアウェイ側バックスタンドを埋め尽くしたサポーターの前で、迫力、魅力、さらに気力溢れるサッカーを展開した。今節は主将・山本を欠いたが、それをチーム全体でカバー。代役出場した保坂一成、パウリーニョのプレーも光っていた。「今日はみんながチームを盛り上げてくれた」（内田監督）。甲府にとっては今後への弾みをつける有意義な一戦となった。

草津は甲府に屈して２連敗、最下位から抜け出すことができなかった。試合後、コアサポーターが陣取るバックスタンドから前節に続いて激が飛んだ。それは結果に対してではなく、チームへの愛のブーイングだ。過去の映像を見せられたかのように同じ過ちが繰り返される失点シーン、つながらないパス・・・チームの悩みは依然として続いている。選手たちのギラギラとした目はどこに行ってしまったのか。試合後、選手たちががっくりと肩を落とすシーンはもう見たくない。

以上

2010.05.16 Reported by 伊藤寿学