5月15日(土) 2010 J2リーグ戦 第13節
鳥栖 3 - 0 岐阜 (16:03/ベアスタ/4,620人)
得点者:9' 早坂良太(鳥栖)、30' 金民友(鳥栖)、66' 豊田陽平(鳥栖)
スカパー!再放送 Ch186 5/18(火)05:30〜(解説サカクラゲン実況南鉄平リポーターヨンヘ)
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もし、ミスを起こさずに試合を行えたら、失点をするはずがない。よほどの実力差がない限りは、そんなことは起きないし、競技として成立しない。ボールは1個しかなく、互いに奪い合うからミスがないサッカーなんてあり得ない。
そんなことは十分にわかっていて気をつけていても、試合中に何が起きるかわからないし、90分間 集中力を切らさないことは不可能に近い。そこにサッカーの面白さと、競技性が存在するわけで、今節の鳥栖対岐阜はまさにそこを堪能することができた試合だった。
9分にセンターライン近くで、左サイドDF日高拓磨が岐阜のボールをインターセプトしたところから先制点は生まれた。そのボールをMF長谷川博一に送り、ゴールライン深くからグラインダーのクロスを送った。そのクロスをFW山瀬幸宏が走りこんでそのままスルーし、センターに走りこんだFW早坂良太が右足で押し込んだ。この先制点の流れを文字で表現すると、鳥栖の連携した攻撃だけが目立つが、この間、岐阜のMFとDFにいくつかのミスが生まれていた。中盤でボールを奪われたところ。長谷川博一のクロスへの対応。走り込んだ山瀬幸宏と早坂良太へのマーク・・・。このいずれかの場面で適正な対応ができていれば、鳥栖の先制点は生まれていなかった。
30分の追加点も同様である。
右サイドから長谷川博一が中央で待ち受けるMF金民友にクロスを上げた。このボールを金民友はワントラップでゴールに向いて、落ち着いて左足で決めて生まれた。クロスの質もトラップの技術も素晴らしかったが、このクロスをクリアしようとした岐阜DFの対応の判断が、あと1歩早ければ生まれるものではなかった。
試合を決定付けた67分の3点目は、ハーフライン近くで長谷川博一が岐阜のパスをインターセプトし、金民友がDF裏に出したパスに走りこんだFW豊田陽平がGKをかわして決めたものだった。中央で奪われたボール。DF裏へ出されたMFの対応。豊田陽平が持ち込んだボールへのGKのアプローチ・・・。
やはり、ここにも岐阜のミスが重なっていた。
全力でプレーするからこそ、見ている人をひきつけるプレーも出るが、その裏には必ずミスも存在するのがサッカー。相手のミスをうまく得点につなげることが3回できたのが鳥栖であり、起きたミスをカバーすることができずに3回失点したのが岐阜であった。
先制点を決めた早坂良太は、「前線での動きを繰り返していればいつかは点が取れると思っていたが、それが9分という早い時間に出てきた」と試合開始直後から、この流れが起きることを感じていた。3点目を決めた豊田陽平も、試合後の第一声が「ラッキー!」だった。続けて「DFの裏も空いていたし、GKも思い通りに出てきてくれた」と思惑以上の展開だったと語ってくれた。
とはいえ、岐阜は一方的に敗れたわけではなかった。2点は失ったが、前半のシュート数は鳥栖と同じ5本と健闘した。17分のファーストシュートからは、前線からのプレスが利いて鳥栖陣内でボールをまわすこともできていた。
FW押谷祐樹は幾度となくDF裏に飛び出しては、味方のボールを引き出した。FW嶋田正吾も中盤からのボールを受けては、前線での起点となってゴールへ向かった。9試合ぶりの出場となったMF橋本卓は、自在に動いて前線での出しどころを探していた。
しかし、フィニッシュに至るまでの精度を欠いて得点を生むことはできなかった。
「チープなミスで失点した。これがチーム全体の力」と倉田安治監督(岐阜)も素直に認めざるを得なかった。
この試合で、筆者が興味を引いたのは、それぞれの監督の立場から見たサッカー感である。
3得点で快勝した松本監督は、「もっと守備の連動性とパスの精度を上げないと昇格レースには残れない」と手厳しいコメントを残した。敗れた岐阜の倉田安治監督は、「失点のミス以外は良いリズムで試合を運べたし、ボール保持も岐阜のほうができていた」と前半を振り返った。同じゲームでも見る角度を変えると表現は変わるものだが、お互いの置かれている立場の違いを表現したものかもしれない。
この試合で鳥栖は試合開始から岐阜にプレスをかけたが、先制点から試合の主導権を握ったとみるや相手にプレッシャーはかけるものの激しくボールを追うわけではなく、ハーフラインあたりを“ボールの取りどころ”と設定した守備を見せた。それを岐阜は、“ボールを保持する時間が増えた”と感じたのかもしれない。
この試合に関しては、岐阜のミスを誘発するような守備を行い奪ったボールを得点に結びつけた鳥栖のほうが、試合運びにおいて少しだけうまかったかもしれない。
ミスをしたくてプレーする選手はいない。シュートを外そうと思って打つ選手もいない。
誰もが得点を狙い、失点を防ごうと死力を尽くすから競技性が生まれ、勝敗が決する。
プレーする選手も見ているサポーターも、1個のボールから生まれる“スーパープレー”と“ミス”という現象に一喜一憂することができるサッカーは本当に面白い。
サッカーは感動の要素を多く含んだスポーツでもある。
以上
2010.05.16 Reported by サカクラゲン
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