5月15日(土) 2010 J1リーグ戦 第12節
仙台 1 - 1 浦和 (17:04/宮城ス/24,162人)
得点者:28' エジミウソン(浦和)、35' 梁勇基(仙台)
スカパー!再放送 Ch182 5/17(月)08:30〜(解説鈴木武一実況松尾武史リポーター村林いづみ)
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本来は祝福一色となるべき状況にも関わらず、梁勇基のW杯北朝鮮代表選出に関しては、喜びの会見を行なった後になって彼が予備登録メンバーに入っていなかったことが明らかになる(手続の遅れの問題であって、登録には問題無いとされているが)など、幾ばくかのドタバタがあった。
ただ、この騒動で一番困っていたのは、おそらく梁本人であろう。自らが代表合宿に向けて旅立つ前、最後のリーグ戦を直前に控え、心中は決して穏やかではなかったはずだ。
そう考えるとむしろ、制止されたボールを前に、ぐっと集中を高めている時が、ここ最近で最も「落ち着けた時間」だったのではないか。
FKは、文字どおり自由なキック。誰も彼を乱すことはできない。そうなれば、彼を止めるものは何もない。
そしてそれは、W杯でも同じこと…だと思うのだが。
仙台対浦和、7年ぶりの対戦は、戦前の予想通り、浦和が攻勢に出て、仙台が逆襲を狙うという流れを基本に動き出した。
ただ、この日はボール奪取から反転攻勢に出ようとした仙台が、パスや奪ってからの持ち上がりなど、最初の一手の場面でミスを連発したこともあり、浦和の波状攻撃が幾度にも続く形に。
連続で与えていたCKを仙台は何とか凌いでいたが、前半最後のCKとなった28分の6本目、ポンテから放たれた左からのボールにまずエジミウソンが競ると、ゴール正面に落とされたボールを詰めていたスピラノビッチがシュート。これが守備陣に当たって舞い上がるのだが、両チームの選手が入り乱れた落下点の混戦にまたも競り勝ったのはエジミウソンだった。公式記録では右足となっているが(その後、公式記録はヘディングに修正)、その瞬間にはどこで押し込んだのかも分からないくらいのエジミウソンの得点で、浦和がゲームの先手をとる。
しかし仙台は、ここから反攻の切れ味をさらに高めて、浦和に襲いかかった。うまくつながらなかった攻めの第一歩が、失点を境に精度の高いものとなったこともあり、徐々に浦和ゴール前へボールを運ぶスピード、勢いが高まっていく。
そして35分だ。梁が中盤でカットすると、一旦関口訓充に預けた後、ボールは再び梁へ。ゴール正面で阿部勇樹からのチャージにしばらく粘って耐えた後、最終的には倒れてFKを得る。正面やや右寄り、距離25メートル強。この位置でチャンスをつかんだ梁は「壁の裏(にボールを出すこと)を警戒していそうだったので」と、GK山岸範宏の意図を冷静に読み、あえて山岸が立っていた(梁から見て)ゴール左側の「キーパーサイド」へ、カーブをかけながらも強烈なキックを放つ。逆モーションを突かれた山岸はボールを見送りながら、その場で膝から崩れ落ちるしかなかった。梁にとって今季初となる、自慢の直接FKでのゴール。スタジアムが最も沸くシチュエーションで、仙台は前半のうちに同点に追いついて見せた。
試合は勝負の後半へ。ただこの後半、結論から言えば、スコアが動くことはなかった。
浦和がゴールを上げられなかった理由は、仙台守備陣の奮闘にあるだろう。前半の13本をさらに上回る、後半だけで15本ものシュートを放った浦和だったが、ゴール前の決定的なチャンスも、ゴールライン上で鎌田次郎がヘディングクリアを見せるなど、仙台守備陣がまさに身を挺して防ぐ。また、前半と同じくCKから何本もチャンスがあり、ニアのスピラノビッチがヘッドでファーに流した先で、エジミウソンが完全にフリーという場面も2度3度あったのだが、エジミウソンがこれを合わせきれないという、浦和としては勿体ない場面も連続した(スピラノビッチが急遽スタメンに入ったということもあってか、仙台のCKにおける守備では、「ニアのスピラノビッチ」という策になかなか対応できない状況があった)。
一方で、前半から勢いが出てきた仙台が、もう一つゴールを奪いに行くべく本格的な攻勢に出られなかった要因は何か。それは浦和が後半開始から、田中達也に代えて投入したエスクデロ セルヒオの存在にあった。
仙台は浦和戦に向け、4−1−4−1の布陣をオプションとして用意していた。「浦和の1トップと3枚の攻撃的MF。この4人に対して、自分たちはDF4枚とボランチ1人を残しておけば、数的優位には立てる。そこでボールを奪った後、スピードを持つ4枚の攻撃的MFに預ければ、カウンターで攻めきれるはず」というのが、手倉森誠監督が語っていた想定だったのだが、後半から入ったエスクデロの好調ぶりは、手倉森監督の考える「リスク」の許容範囲を超えるものだった。左MFに投入されたエスクデロはDFラインの前、あるいは左右の裏など、さまざまな個所に現れ、決定的なチャンスを生み出していく。
「この状況で、守備ユニットに手を加えるのは危険」。前節の名古屋戦で、一旦は同点に追いつきながら、田中マルクス闘莉王の攻撃参加など、しゃにむに勝点3を奪いに来た名古屋の攻撃に対処できず、最後の最後で勝点1すら手放した反省もあったかもしれないが、手倉森監督の判断は現実的、かつ致し方ないところだろう。
こうして、両チームが勝点1を分け合う形になったこの試合。浦和のサポーターがどう考えているかはいざ知らず、仙台にとっては、勝点3への心残りはありつつも、貴重な勝点1となった。
ましてその「1」をもたらしたのは、自分たちが誇るキャプテンの、世界に誇るべき一発なのだ。ここは一つ、勝点1のありがたみを噛み締めながら、偉大なキャプテンを、世界への挑戦に笑顔で送り出したい。
以上
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