5月8日(土) 2010 J2リーグ戦 第12節
熊本 1 - 0 愛媛 (13:03/水前寺/3,036人)
得点者:62' ファビオ(熊本)
スカパー!再放送 Ch185 5/12(水)15:00〜(解説:池ノ上俊一、実況:山崎雄樹、リポーター:風戸直子)
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「前節の反省を踏まえて、どうこの試合に臨むかというのが課題だった。気持ちの切り替えも大事だけど、悪かったところをしっかり受け止めて、同じ過ちを繰り返さないことが大事。前節の映像を皆でまるまる見て、1人1人ができることをしっかりやろうと思えたことが大きかったと思う」
素晴らしいクロスで決勝ゴールをお膳立てした宇留野純は、試合後にそう語った。
ゴール裏に掲げられた即席の横断幕にあった、「高木サッカーの初心を忘れるな!」「とにかく走り勝て! そして勝利を掴み取れ!!」というサポーターのメッセージにも応えることができたのは、新たに出場機会を得た若い選手とベテランの力が融合し、チーム全体で最後まで戦えたからこそ。まさに原点回帰の戦いぶりだったと言えよう。
この試合、福王忠世と松橋章太の出場停止を受け、さらに連戦の疲労も考慮して、高木琢也監督は前節から大きくスタメンを入れ替えた。ここまで5失点という愛媛の堅守を崩すためのポイントとして、攻撃においてはサイドチェンジを意識。熊本は前半からそうしたボールの動かし方を徹底し、愛媛の守備網にギャップを生じさせ、その綻びを衝こうと試みる。特に初先発となったファビオは、190cmという高さを生かしてハイボールの競り合いでも強さを見せた。すっきりボールを収める働きぶり、とまではいかなかったが、前線での健闘が、アライールと小原章吾の愛媛のCBコンビを動かしていた。
しかしながら愛媛の守備はやはり堅い。熊本も右から左へと展開する形を多く作るが、「サイドまでボールを持って行くけど、そこからなかなか一歩が出ない」(高木監督)ことでうまく崩せず、逆にボールを奪われる形から愛媛にチャンスを作られてしまう場面も。愛媛は赤井秀一と大山俊輔の両サイドハーフが中のスペースへ入ってはフリーでボランチの越智亮介らからボールを引き出し、さらに外側をオーバーラップして来た関根永悟らサイドバックへとつなぐなど、流動性とテンポの良いパス回しで応酬する。
試合前日に高木監督が「我慢比べになる」と話していた通り、後半に入ってもお互いにチャンスを作り合う展開。しかし62分、愛媛の守備ブロックが整う前の一瞬の隙をついた熊本の攻撃が、ゴールに結びつく。ハーフウェイライン付近でボールを受け、DFをかわして前に運んだ宇留野が「ルックアップしたらファビオが見えた」と、山なりのクロスをファーサイドへ。これをファビオが奇麗に合わせて頭で突き刺した。片方で作って逆へ展開するという、狙っていた形から崩した得点ではなかったが、「そこから突破口を開けなかったとしても、そういう事をやることで、すごくオーガナイズされているディフェンスラインが、クロスの時にはオーガナイズされていないということにつながっていく」と高木監督が振り返っているように、前半から執拗に揺さぶりをかけていたことも、この得点につながった。
さて、リードされた愛媛だが、先制されて以降、ほとんどの時間を熊本陣内で進めながら、バルバリッチ監督の言葉を借りれば「前線での“血の気”の無さ、攻撃性の無さから」ゴールが遠かった。失点もカウンターぎみで、それ以外の場面はほぼ安定していた事や、3人め、4人めが絡んでボールを動かすゴール前までのつなぎは魅力的だっただけに、得点の少なさに表れているフィニッシュ精度が高まれば、まだまだ順位を上げることは可能だろう。
一方の熊本は、「しっかり守って追加点を取れればという気持ちで皆がやれてた」(西弘則)と、統一した意識の元で全員が最後まで走り抜いた。中でも目を引いたのは、終盤の藤田俊哉のプレーぶりだ。押し込まれる時間帯にあって高い位置でボールを収め、ロスタイムの45+3分には井畑翔太郎、そして今季初出場の大迫希とつないで迎えた追加点のチャンスを演出したほか、積極的にチェイスをかけるなど奮闘。札幌戦の後、「中山(雅史)さんが40代であれだけ走るんだから、30代の僕はもっと走らないといけない」と話していたが、その思いを十分に感じさせた。
これでゴールデンウィークの4連戦は1勝2分1敗。ベストの12ポイント上積みはならなかったが、中2日というハードな日程の中での5ポイント加算はベターな結果。まずはしっかりと身体を休め、若い力が結果を出した事で生まれたチームの勢いを、水戸戦につなぎたい。
以上
2010.05.09 Reported by 井芹貴志
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