5月5日(水) 2010 J1リーグ戦 第10節
湘南 2 - 2 神戸 (13:03/平塚/11,650人)
得点者:3' 都倉賢(神戸)、36' 山口貴弘(湘南)、41' 都倉賢(神戸)、78' 三平和司(湘南)
スカパー!再放送 Ch185 5/7(金)05:00〜(解説水沼貴史実況下田恒幸リポーター児玉美保)
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両指揮官の繊細なタクトが印象深い。ベンチワークを含めて、見応えのある試合だった。
湘南はいつもの4−3−3ではなく、3−4−3のシステムで臨んだ。怪我や出場停止が重なり、とりわけ最終ラインが火急の現状にあっては、もっとも現実的な作戦といえるだろう。思い起こせば昨季、夏場の連敗を食い止めた水戸戦で採用されたのがこのシステムだった。そんな記憶を頭の片隅に留めてあらためてひも解くと、神戸の背番号27が天敵に思えてくる。というのも、昨季ふたたびシステムを戻した直前の試合の相手が都倉賢を擁する草津であり、その草津戦然り、今節然り、いずれも彼のゴールによってスコアが動きだしたのだから。
3分、左サイドへ流れたボッティからふわりとクロスが送られる。なかで収めたくだんのストライカーは、DFを背負いながらキープするや、すかさず振り向きざまに左足を振り抜いた。「もっと寄せることができた。自分のミスだと思う」そう悔しさを滲ませたのは、マッチアップした村松大輔である。しかし、彼にすべてを背負わせるわけにはいくまい。パスが通った時点で、都倉の間合いに見えた。
神戸の2点目も都倉によるものだ。41分、湘南陣内のルーズボールに単身食らいつき、GKの動きを見てふたたび利き足でループシュートを沈めた。
この日の神戸は大久保嘉人と都倉の2トップではなく、1トップに都倉、トップ下にボッティが入り、右にポポ、左に大久保という攻撃陣だった。対して湘南は前半、ディフェンスでリズムをつくれなかった感は否めない。それでも36分、「強い気持ちで闘う」と一戦に臨んだ復帰間もない山口貴弘が、寺川能人のコーナーキックに力強いヘッドで合わせ、一度は同点に追いついている。
こうして神戸が2点、湘南が1点と、両チーム合わせて3ゴールが前半のうちに刻まれたが、ゲームが活発になるのはむしろ後半のほうだった。ひとつには、湘南が慣れ親しむシステムに戻し守備のリズムを取り戻したこと、また守備のリズムの延長で攻撃にもうねりが生まれ、あわせて交代選手がチームにパワーをもたらしたこと、そして一方の神戸も3点目を期して攻めに出たことに、活性化の理由は見出せるだろう。
後半開始早々には、神戸が決定機を迎えている。湘南ゴール正面でボッティがシュートを放ち、島村毅がいったんは身を挺して阻むも、こぼれ球からふたたび都倉が思い切り撃つ。だがこれはポストに嫌われ、追加点はならない。また茂木弘人の攻め上がりも増え、自らの仕掛けからシュートを狙った。かたや湘南も、後半から入ったハン・グギョンが積極的に上がり、田原豊との連係からフィニッシュまで持ち込み、あるいはチーム全体で押し上げた先で阿部吉朗が得意のニアゾーンを突いてもいる。
じっとしていても汗ばむほどの陽気にも、走力で勝負してきた湘南の足は止まらない。待望の同点ゴールは、相手コーナーキックに対する守備を発端に生まれる。
78分だった。途中出場の三平和司と中村祐也に加え、阿部が高い位置に残る。3人を残したのはほとんど記憶にない。そしてGK野澤洋輔がコーナーキックを弾き、ハンが競り、村松が奪うと湘南は一気にゴールへと加速した。左に位置した阿部は村松からパスを受けると、ゴール前を一瞬視認しクロスを送る。中央に躍り出たのは、新居辰基からキャプテンマークを引き継いだ三平だ。けっして満足な体勢で収められはしなかったが、信条とする「泥臭いゴール」を反転ねじ込み、サポーターから寄贈された青と黄緑のゴールネットにようやく2度目の歓喜が届いた。このとき、ニアに走りこんでDFを引きつけた中村の動きも見逃せない。
残された時間、湘南は勝点3を奪うべくさらに攻勢を強め、かたや神戸は体を張って守った。ふたたびネットが揺らされることはなく、長い笛を聴くのだった。
「暑くタイトなスケジュールのなかで最後までよく頑張った。つねに劣勢の状態だったが、最後に我々が点を取ってからは逆にエネルギッシュなプレーができた」と反町康治監督は選手をねぎらい、一方の三浦俊也監督も「いままでなら頭を下げるところですぐに2点目を取り、3点目を取れる場面もたくさんつくりだしてくれた」と振り返った。勝ち切れなかった悔しさはそれぞれに残る。だが、この日ともに掴んだ勝点1が次への足がかりとなることは、ロッカールームに引き揚げるまで選手に送られ続けた両チームのサポーターの声援が教えてくれた。
以上
2010.05.06 Reported by 隈元大吾
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