スカパー！生中継 Ch183 12:50〜（解説：田中真二、実況：篠田和之、リポーター：萬代裕子）
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Ｊ２第７節ギラヴァンツ北九州戦に勝利し、気持ち良く２日間のオフを迎えたかった栃木ＳＣだったが、開始わずか３２秒でゴールを奪ったものの、肝心の追加点が取れずに１-１のドローに終わった。
「いつでもゴールができると思っていた。サッカーでは気を緩めてはいけない。いい経験になったし、勉強にもなった」
そう振り返るのはリカルド・ロボ。圧倒的に攻め、数多の決定機を作り出したが、しかしゴールは遠く。「いつかはゴールが取れる」と高を括ったことが心に隙を生み、徐々に北九州にペースを握られ、失点に繋がった。第６節のザスパ草津戦でも主導権を握りながら相手を仕留め切れなかったことで、勝点１に止まり勝点２を取り逃している。状況こそ異なるが、同じ失敗を繰り返してしまった。
「どんな相手でも点を取ることは難しい。全力を尽くさないといけない」とは、大分トリニータ戦から先発の座を射止めたルーキーの杉本真。杉本は続ける。「緩みを出したつもりはない。ただし、必死さがいつもより欠けていた」。クラブ史上最速ゴールを決めた高木和正も、「ひとり１人が１本のシュートを大切にしないといけない」と言う。シュートに至るまでの過程は、ほぼ問題ないだけに、ゴールへの執着心と「コミットメント（懸ける気持ち）」がさらに求められる。２連勝後に２つのドローで勝点４を喪失した後悔を、今節のジェフユナイテッド千葉戦にぶつけなければ、上位進出、そしてチームとしての「前新」は望めない。
ゴールに関して「守備に集中することで得点力が増す」と、松田浩監督は持論を展開する。攻守は表裏一体。要は、松田監督曰く「いい守備からいい攻撃が始まる」ということだ。その象徴がプランにはめ込み、４得点で圧勝した大分戦。２度目のジャイアントキリングを狙う栃木は、前節から１０日間のブレイク期間で、まず守備組織の緩みの改善に主眼を置き、入念にオーガナイズディフェンスのおさらいをした。また、「奪われたボールを速いプレスで奪い返すのが生命線」（松田監督）である千葉対策として、狭い局面からスペースへとボールを展開するトレーニングも重点的に行われた。そして、「最も効率が良い」（松田監督）ショートカウンターにも磨きをかけた。準備に手抜かりはない。ハイプレスをかけてくる千葉に対し、上手くプレスを掻い潜り、ウイングとサイドバックの間のスペースを突き、鮮やかなカウンターからゴールを取り切る。勝点３へ向けた青写真は、くっきりと描けている。
前節のＦＣ岐阜戦、立ち上がりに苦しんだ千葉だが、窮地を逃れると盛り返し、先制点で波に乗った。守備に軸足を置かれると崩すのが難しいのは、全世界のフットボールファンを魅了するバルセロナも同じだ。千葉としては相手を引き出すためにも、先手を取ることがひとつのポイント。栃木同様に千葉も複数得点でしか勝利を挙げていないことから、追加点が勝敗を分けることになるはずだ。岐阜戦で両ウイングの倉田秋とアレックスは、流動的にポジションを変えながらＤＦラインと中盤の間で上手くボールを受けていた。そこへクサビを入れることが千葉の攻撃のスイッチ。岐阜と栃木の「ボールを中心とした守備組織」は似通っているだけに、倉田とアレックスが担う役割は小さくない。また、栃木が狙い撃ちするアンカー・中後雅喜の脇のスペースを埋める作業を怠ってはいけない。栃木は昨季４-３-３の湘南ベルマーレとヴァンフォレー甲府を相手に好ゲームを演じ、攻略法を知っている。侮ると痛い目を見る。
北九州戦で新井賢太郎代表取締役のアウェイ帯同は最後となった。ドロー決着となった試合後に見せた無念の表情が忘れられない。だからこそ、４月２７日の株主総会で勇退が正式決定した新井代表取締役の花道を、最終戦を、なんとしてでも勝利で飾りたい。ゼロから、いやマイナスから栃木をＪ２へ押し上げた功労者にはどんな綺麗な花束を贈るよりも、「ありがとう」の感謝の気持ちを今季ホーム初勝利で表す方が喜ばれるはずだ。最後の最後に男泣きしてもらうには、繰り返すが勝利しかない。
以上
2010.04.28 Reported by 大塚秀毅
